お困りごとは万屋部へ!

soul chiter

第1話バレー部からの依頼


『冬馬くん今日はバレー部から助っ人に来てほしいと依頼が来てるんだけど、行って来てくれるかな?』

いつもの部室。副部長からお願いされた。どうやら今日の依頼らしい。

『分かりました優斗先輩。ちなみに今日は僕だけですか?』

そそくさと準備をしながら聞いてみる。

『そうだね。今日は冬馬くんだけみたいだ』

そう言いながら優斗は[万屋箱]と書かれた箱の中を漁っている。やはり一枚しか依頼は来てないらしい。

『なーんだ、じゃあ今日のご褒美は冬馬だけかー』

『残念でしたね杏果さん。ちなみに今日はなんだったんですか?』

ちぇーっと机に突っ伏した杏果さんを尻目に優斗先輩に聞いてみる。

『今日はね、蜂蜜レモンのチーズケーキだよ。今回はチーズタルトにしてみたんだ』

そう言いながら冷蔵庫からケーキが登場する。ケーキの登場とともに杏果さんは目をキラめかせた。

『私の一番好きなチーズケーキじゃん!優斗〜私にも頂戴よ〜』

『だめだよ杏果ちゃん。ご褒美は依頼を受けた人が受ける、そういうルールでしょ』

そう言いながら優斗先輩は冷蔵庫にケーキを戻した。

まるでわがままを言う子供に言い聞かせるお母さんのようだ。

『優斗のケチー』

そう言い放ち杏果さんは扉に向かって走り去っていった。

そんなタイミングでガラガラガラと扉が開き美月ちゃんが部室に入って来た。

『わわわ、杏果先輩!?』

突然のことに慌てている美月ちゃん。

『うわーん美月ー。優斗がね、優斗がいじめてくるのー』

入ってくるなりいきなり抱きつかれた美月ちゃん。

『杏果さん、あの、、、』

『いい加減にしろ杏果!』

冬馬が言いかけた後ろから大きな声がした。

『全く…お菓子一つで嘆かわしい…それでも先輩かね!』

そう言いながら部長は杏果さんの元へと歩いて行った。

『依頼の無いものに褒美はない!さぁ諦めて美月ちゃんを離し…』

『うっさいクソデブ!!』

素早いターンから鋭いボディーブロウが部長のお腹に突き刺さった。

絶叫しながら転げ回る部長。半泣きで泣きつく杏果さん。訳もわからずアワアワする美月ちゃん。一人落ち着いてお茶を入れる優斗先輩。

ご褒美一つでここまでカオスになるとは…

『あの…杏果さん…』

見かねた冬馬が杏果さんに近寄った。

『実は今日の課題で分からないところがありまして、、依頼として教えていただけませんか?』

杏果さんは少しの間キョトンとした顔をした後、パッと明るくなり

『うん!教えてあげる!依頼なら仕方ないよね!優斗!依頼だよ!依頼だったらご褒美貰えるよね!』

『ルールだからね、頑張った子にはご褒美があるよ』

『やった!冬馬!しっかり教えてあげるからね!』

ついさっきとは真逆の元気の良さに苦笑いしながら依頼書に依頼内容と依頼者の名前を書いて優斗先輩に渡した。

『気を遣ってくれてありがとう。今日は杏果ちゃん宛の依頼があると踏んでたんだけどね』

苦笑いしながら優斗先輩は紙を受け取り依頼受付のハンコを押してくれた。

『じゃあバレー部の依頼行ってきますね』

『うん、気をつけてね』

『帰ってきたらケーキだぞ!』

『が、頑張ってきてくださいね』

みんなの声を背に冬馬は部室を後にした。

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