落成

雨上がりを歩くと君は笑う

泥にまみれ、靴を汚しながら


「人生が終わる場所って」

「きっとね」

「こんなところが理想だって」

「そんなことを思うんだ」


君はロマンチストで、リアリストで、

どうしようもな皮肉屋で、そして女の子だった。

そのことに気づくには遅すぎた。

いつも通りだと思っていたから。


「人生が変わる時って」

「きっとね」

「あんなこと、どうしてしちゃったんだろうって」

「後悔をすると思うんだ」


泥だらけ。泥だらけ。泥だらけの人生を、泥濘(ぬかるみ)の君が笑う。

微塵も悔いなどなかったかのように。


私の問いには答えずに。

そっと背中を向けて。

……それが合図だ。


「地面を歩くとね」

「まるで」

「指紋みたいな模様ができる」

「それがね」

「その人にしかできない傷痕だって思えたら」

「いいなぁって思うんだ」


私たちは幼すぎた。

何かを知るにも、何を知らないでいるのも。

どっちつかずの不安定な夕暮れに、雨上がりの空に。

君は笑みと、涙を。

一粒ずつ零した。

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