第5話

俺は下駄箱近くで紗希待った。

2〜3分待つと紗希が来た


「おにーちゃん、お待たせ」


「おう」


「クラスメイトに話しかけられてておくれちゃった」


「構わんぞ、こうなることは最初からわかってたしな」


みんなお近づきになろうと頑張ったんだろうな。

紗希はガードが硬いからな。


「それじゃあ、行くか」


「うんっ」


紗希回りたいところを聞いたところ、運動部以外を回りたいと言っていた。

紗希のスペック的には運動部でも難なく活躍できるはずなんだけど?


「なんで運動部以外がいいの?」


「この学校部活に力を入れてるから、私じゃ全然及ばないと思うから」


「い、いやそんなことないと思うぞ」


「え?そう」


紗希は俺に無自覚と良く言うけど紗希も同じようなものだよな。


「確か前の学校で陸上部だったよな」


「う、うん」


「俺もサッカー部に行くつもりだったし、一緒に行くか?」


紗希はコクっと頷いた。

陸上部とサッカー部の活動場所はどちらも近かったので俺たちはそこで分かれて後で合流することになった。

俺はサッカー部が練習している競技場の真ん中に行った。

そこでサッカー部のマネージャーらしき人に声をかけた。


「すいません、サッカー部ってここでいいですか?」


「もしかして転校生ですか?」


「はい、見学です」


「そうなんですか、先生を呼んで来ますね」


マネージャーさんはそう言って顧問の先生がいるところに行って先生を連れて帰ってきた。


「もしかして君が見学の子かな?」


「はい、一ノ瀬優馬と言います?」


自己紹介をすると先生は口を開けたまま固まっていた。


「先生はU-15の監督もしてたすごい人なんですよ」


「先生、どうしたんですか?」


「君、もう1回名前を聞いていいかい」


「えっと、一ノ瀬優馬です」


もう一度名乗ると先生はとてつもない勢いで肩を掴んできた


「一ノ瀬優馬って中学のインターハイで1人で敵陣に突っ込んで20得点もぎ取って優勝したあの?」


そんなことを早口で聞いてきた


「確かにそんなことはありましたけどそれ以来サッカーはやってませんし、結構ブランクがありますから」


「ひとつ質問していかな?」


「なんですか?」


「一ノ瀬君は確かU-15に選ばれていたはずだけどどうして辞退したのかな?」


確かに俺はU-15に選ばれたけど辞退した。

その理由はは紗希や家族にさえも言っていない


「それって話さないとダメですか?」


「なにか理由があるなら話してくれたら方がこれから活動するに当たってやりやすいかな」


「分かりました、理由は怖かったからです」


「怖かった?」


「はい、インターハイのあと俺はサッカー部から追放されました。俺がいるとつまらないそうです」


「そう、でもそれなら大丈夫、そんなことするやつは僕がいる限り徹底的に排除してるから」


いやそんな自信満々にサムズアップされても...

いやっ、勝手にそうなことしていいの?


「だから、安心して」


「は、はい」


そう言い残して先生は部員のところに戻って行って少し話をすると僕を呼び寄せた。

どうやら先生は俺を部員に紹介するそうだ。


「見学する一ノ瀬だ。入部は決めたようなものだから今日はこいつの腕を確認しようと思う」


「具体的に何をするんですか?」


「1人でサッカー部レギュラーチーム全員を抜いてもらう」


「「「「「はっ?」」」」」


俺もマネージャーさんもサッカー部員も全員が固まった。


「先生本気ですか!?」


「その代わり、ゴール出来たら、一ノ瀬君をすぐにレギュラーに入れますよ。なので皆さん補欠になりたくなければ頑張ってください」


サッカー部員達は呆れ半分で配置に着いた。

すごい俺を舐めてるな、絶対ゴールしてやろう。


「一ノ瀬君頑張ってください」


「行きますよー」


ホイッスルがなった。


まずフォアードの2人が突っ込んでくる。

フェイントをしてかわす、ミットフィールダーは1人づつ連続できた。

1人目をまず先程と同じフェイントでかわす、2人目はスライディングをしてきたのでボールを浮かして避ける、3人目と4人目はサイドに回り込んでかわした。

そこからディフェンダーのあいだをくぐり抜けてゴールキーパーと1体1にする。そしてシュートを決めた。


サッカー部員達は、


「まじでやりやがったよ」


「嘘だろ」


そこへ先生がやってきた。


「一ノ瀬君見事でしたよ、まだ神童の名は健在ですね」


懐かしい名前を出して来たもんだ。

俺は中学時代の試合で驚異の得点を出したことから神童と呼ばれていた。


「これでレギュラー決定です。一ノ瀬君には1ヶ月後の大会に出てもらいます。これから毎日放課後練習してもらいます」


今日俺はそれで帰ることになった。

紗希からは先に帰ってご飯を作っておくとの連絡があった。

急いで帰らないとご飯が冷めてしまう。

俺は急いで下駄箱からはかえろうとした。


門の近くに行くと何やら騒がしかった。


「おねーちゃん、可愛いね今から一緒にご飯行かない?」


「そうそう、俺たちと行こーぜ」


ナンパだった。まわりに生徒は誰もいない。


「や、やめてください」


女性は抵抗しているが男2人の力には敵わない。


「嫌がってますよ、おにーさんたち」


俺は助けに行くことにした。


「なんで、にーちゃん正義の味方気取りか?」


「ガキは帰って寝てろ」


はぁ、なんてテンプレなんだ。

チンピラAは俺に向かって殴ってきた。


「危ない‼︎」


女子生徒が叫ぶ。

その拳が俺に当たることはなかった。


「「「えっ」」」


チンピラ2人と女子生徒が素っ頓狂な声をあげて驚いている。


「おにーさんたち、まだする?」


怖い笑みを浮かべてそう言った。


「「すみませんでしたー」」


なんだ、あっけからん。


「大丈夫ですか」


振り向いてみると涙を流していた


「ごめんなさい、怖がらせてしまって、俺は帰ります」


俺は全力ダッシュで家を目指した。


「あっ、ちょ」


女子生徒の声は優馬に届かなかった。




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※サッカーのところは素人の勝手な妄想です。


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