第113話 対【闇寤ノ御子】2
「こ、これは磯外村で戦ったグール!」
パッと見は同じに見えるがグールの体の周りには黒い靄の様な物が絡み付いており、あの時のグールより強力だと思われる。
「きっと【闇寤ノ御子】が村人を使って作り出したのでしょう。弱点は火炎で燃やすか頭部を破壊してください」
元から魔の者の生体に詳しい瑠璃が''闇グール''の弱点を優畄達に伝える。
「む、元村人なら元に戻せないのか?」
「無理です。完全にグールという個体に変異している為元に戻すのは不可能です」
(……このグール達が元村人ならば、ひょっとして俺達が磯外村で皆殺しにしたグールも……)
優畄はそれ以上を考える事を辞めた。たとえそうだとしても致し方のない事なのだから。
優畄達に出来る事は、せめて倒す事で【闇寤ノ御子】の呪縛から解き放ってやる事だけだろう。
''闇グール達''は元人間とは思えない程の膂力で優さん達に襲い狂う。個々の能力では大した事の無い''闇グール''だが全ての村人850人が一斉に襲いかかってく様は脅威である。
とはいえ今の優畄達の相手ではない、優畄は一対一に優れた【ゴレアス】から一対多に優れた【鵺】に変化し直すと、彼を取り巻く''闇グール''の群に【鵺】の能力の''放電''を放つ。
【鵺】の''放電''は半径10〜5mの範囲に持続して''放電''を放つ能力だ。優畄の''放電''を弱点の頭部に受けて頭から煙を放ちながら崩れ落ちていく''闇グール''。
ヒナも【火焔掌】の能力を使い''闇グール''を消炭に変えていく。
瑠璃は刀による斬撃で撃退していく。その刀捌きもヒナに引けを取らない程の腕前。
案の定、ムキになったヒナが刀を使い出す始末。火炎で燃やした方が早く効率がいいのに瑠璃に張り合っているのだ。
天真爛漫でどんな相手とも直ぐに打ち解け仲良くなるヒナだが、主人が同じな授皇人形では話が違う様だ。
1人の主人に対して授皇人形が2人居るのは本来はあり得ない事なのだ。ヒナが戸惑うのも無理はないだろう。
それでも今は戦闘中だ、他にうつつを抜かしていていい訳がない。
「ヒナ無理して刀で戦わないで【火焔掌】で焼き払って!」
「…… 分かった」
渋々優畄の指示に従うヒナ、その顔からは不満の色がありありと出ている。
だが850体いた''闇グール''も目に見えてその数が減って来ている。このまま行けばあと数分も有れば片付くだろう。
だが''闇グール''の背後から鎧を着込み槍や刀で武装した落武者の様な出立ちの集団が現れたのだ。
鎧は落武者が纏う様に所々が斬られ破損している。そして顔の部分には闇があり、赤黒く点滅する目と思わしきものが怪しく瞬いている。
その数6体。その武装集団は''闇グール''が倒されるまでその場から動かなかったが、全滅すると共に攻撃を開始して来たのだ。
「なんだコイツらは?!」
「このカッコイイ人達も敵なの!?」
鎧好きなヒナの嬉しそうだった顔が残念そうに曇る。
「この気配は闇、鎧に闇を纏わせて操っているのでしょう」
そう瑠璃の言う通りこの落武者は【闇寤ノ御子】が闇から作り出した戦闘兵器なのだ。その強さは一体一体が黒雨島で戦った三好リカルドと同等以上。
「チッ、奴にはこんな能力もあるのか!」
6体の落武者を1人2体受け持つ形で対応していく。
あの時は苦戦したレベルの相手だが今の優畄達なら充分戦える。
優畄は【ゴレアス】のスキル''獣王爆撃掌''を放ち落武者を粉砕していく。このスキルは手の掌にためた闘気をインパクトの瞬間に爆破させ、受けた相手は内部から破壊される脅威の技なのだ。
優畄の''獣王爆撃掌''を受けた落武者が身に纏っていた鎧を爆散させる。鎧を失った闇がオオオン……とばかりに宙に消えていく。
「鎧の繋ぎ目だ! そこが奴等の弱点だ」
優畄の指示に2人が頷く。そしてなんとか6体の落武者を倒すと彼等は先に進み出す。
優畄達が居るのは山の中腹あたり、軽快に進んでいた優畄達だったが、そんな彼等の前に今度は体長10mの泥の巨人が3体現れたのだ。
「あの野郎、俺達で遊んでやがるのか……」
避けて行きたいところだが、泥巨人は予想以上にスピードが早く3体が連携して優畄達の前に周り込んでくるのだ。
そんな泥巨人にヒナが斬り掛かるが、斬っても斬っても相手は泥だあっという間に再生してしまう。
「これじゃあキリがない……」
「俺に任せろ!」
優畄が先程落武者に放った''獣王爆撃掌''を放つが爆散した泥巨人はそれでも再生してしまうのだ。
「チッ、これでもダメか……」
そんな中、瑠璃がこの窮地を脱する妙案を思いつく。
「核です。かくを破壊しない限り何度でも復活する様です」
先程、泥巨人が優畄の''獣王爆撃掌''を受けた際に核と思われる部分が赤黒く光るのを見逃さなかった瑠璃。
「ヒナさん、たしか貴方は【水蓮掌】を使えますね。それで優畄様が''獣王爆撃掌''で爆散させた泥を洗い流して下さい。特に胸の当たりを重点的にお願いします。核が分かればあとは私が砕きます」
確かな観察力に的確な判断と指示、彼女瑠璃はかなりの優等生のようだ。
瑠璃からの指示にムスッとした表情をするが、それが一番最善な方法だと分かるため渋々従うヒナ。
優畄が掌に闘気を込めて泥巨人に迫る。そして''獣王爆撃掌''で爆散させた泥巨人をヒナが水鉄砲の要領で高圧水射し核を洗い出す。すかさず瑠璃が斬撃でその核を斬り裂くと、泥巨人は再生する事なくそのまま崩れ落ちたのだ。
「ふ〜なんとか片付いたな」
「時間がない、先を急ぎましょう」
瑠璃の言う通り辺りに雲が立ち込め今にも一雨きそうな空模様なのだ。太陽光には浄化能力があり、【闇寤ノ御子】の力も抑えていたのだ。
それがなくなり更に夜が来てしまうともう手の施し様が無くなってしまう……
まるでそれを狙っているかの様な敵の配置、そしてまたしても道を塞ぐ様に敵が現れたのだ。
今度の相手は軍神を思わせる鎧を着た敵だが、その大きさが5m、そして驚愕するべきはそのスピードだ。スピード特化の優畄の【ゴレアス】にも引けを取らない速さで肉弾戦を仕掛けてくる。
その強さは海斗アレハンドロに匹敵する程だ。
かつての強敵と同等の強さを持つ相手、スピードだけならそれを上まっている程の相手に苦戦は必死。
「チッ、デカブツがよく動きやがる!」
優畄も''獣王爆撃掌''を放つ隙を伺うがまるでその隙がない。隙がないなら作ればいいと瑠璃が【黒艶掌】で優等生畄達の幻影を作り出す。
闇から作られた軍神もこれまた闇から作られた優畄達の区別が付かないらしく、幻影の方を攻撃しだしたのだ。
狙い通り隙は出来た後は倒すのみ。
「ヒナ、また核のあるタイプかも知れないから俺が''獣王爆撃掌''を放ったら放水の準備」
「了解!」
「瑠璃はトドメを頼む」
「了解しました」
3方向から囲む様に攻めていく優畄達、軍神の方は本物と幻影の区別が付かないならどちらも仕留める。の勢いで攻撃してくるが、隙だらけなのには変わらない。
優畄が''獣王爆撃掌''で爆散させて、ヒナが高圧放水で核を洗い出し、瑠璃が斬撃でトドメを刺す。
3人の連携により軍神を倒し神社前まで進んだ優畄達だったが、【闇寤ノ御子】の真の実力に言葉を失う。
優畄達が踏み込んだ境内には彼等がここまでに倒して来た【闇寤ノ御子】の眷属が所狭しと待ち構えていたのだ。
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