第四打席 素晴らしいふともも♡
「もうちょっと、その……スマートに出来ませんか? 監督……。余りにも滅茶苦茶です」
第二体育館の玄関口で追いついた青山は深刻なトーンで言うが、当の本人は全く気にせずあっけらかんとしている。
「今日は、後2人に声を掛けたい。急ごう」
その態度に青山は首を横に振り溜息を吐く。
「それで、次は何部に? 」それでも、付いていく彼は辛抱強い。主将としての責任感を強く持っているのかもしれない。
「あとは、サッカー部と」
サッカー部ならグラウンドが活動エリアだが、朝陽は第二体育館に近い校舎へと向かう。
「? 校舎に行くんですか? 」
階段を上りそのまま踊り場から渡り廊下へ出る。金属製の重めの扉を開いた時。
夏を近くに感じさせる風が強く横薙ぎに流れた。
「きゃあ‼ 」
渡り廊下は校舎間を繋げる為壁はなく、外観を眺めれる様になっている。
だが、朝陽と青山は向かい側から来ていたその声の主。主に下半身に視線を集中させた。
「お♡」
朝陽の感嘆の溜息に気付いたその女子生徒は、大慌てでスカートを両手で押さえて前方へキッと強い視線をぶつけた。
「あっ」
だがその顔を見て青山がバツが悪そうに眉を顰める。
その顔には見覚えがある。
それもその筈だ。つい先ほどまでユニフォームに身を包んでいた美男子の面影があまりにも強くそこにあるのだから。
しかし、先の通り。
身を包んでいる衣服が全く違う。間もなく衣替えを迎えるその少し濃い藍色のセーラー服は明らかなる両者の違いとして成立する。
その女子生徒も、男性の後ろに立っていた青山に気付いたのか。何かを言おうとしてグッと奥歯を噛みしめて開きかけた口を閉じる。
ただ、一言。
すれ違う瞬間に2人に。
「最っ低」とだけ残して。
「か、監督……」
いたたまれず、青山が朝陽に声を掛けた。
「知ってるよ。天笠
兄の一火よりも、ある意味天笠と言えば、彼女の事を指すのが広島の中学野球では当然だった程にな。
正直、今野球部に居る誰よりも野球の才能が有るだろうな。
女子である事が、本当に残念だ
いや、あの素晴らしい太ももは女子であったからこそか。じゃあとりあえずラッキーだったとしておこう」
青山は後半の言葉はハッキリと聞き流しながら少し驚いた。
「……彼女の事も……僕達の事も……ご存知なんですか? 」
朝陽はそのまま渡り廊下を進み始める。
「当たり前だろ? さっきも言った気がするが、全校生徒を調べ尽くしているよ。
で、なくても。
目標を達成する為なら、それは何でもない作業だ100必要な要素の1にも満たないよ。何故なら俺一人で出来る事だからな」
そう言い放った彼のその背中を見て今一度思い出す。
――甲子園。
野球に携わっている者なら、それは小学生が明日内閣総理大臣になる。というそれに近い戯れ言。世迷言。一文字にも信じられる箇所は無い。
だが――彼のその行動はハッキリと青山の中に小さい何かを植え付けた。
そして、その数分後。本日最大の驚愕を彼は経験することになる。
2人が辿り着いたのは、第二校舎の最上階の一番奥の部屋。
そこには「美術室」と札が書かれていた。
「よう――。
今、ちょっといいか? 」
何とも言えないカビの様な臭いが充満したその部屋は電灯も点けずに外からの午後の陽光だけで更に陰鬱とした雰囲気を来訪者に与える。
その広い教室で1人隅で油絵を描いていた青山と同格か、それ以上に背丈の有る男子へ。朝陽は声を掛けていた。
直ぐに、青山が2人の間に割って入った。
「監督⁉ この人は‼ 」
慌てふためき、顔面に夥しい汗を浮かべている。
「なぁ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます