第2話:引き籠り・アイリス視点
目が覚めた時には全く知らない世界にいました。
私が起きた事を喜ぶ中年の美女がいました。
最初は何が何だか分からない状態でした。
ですが直ぐに理解できました、これは転生なのだと。
遂に私の番になったのだと。
念願ではありましたが、期待と不安の異世界転生です。
問題は私に何の記憶もないことでした。
恐る恐る中年美女、マイラと言う名の私の乳母だそうです、マイラに色々と話を聞きましたが、全く手掛かりになる事がありません。
攻略してきた乙女ゲームを筆頭としたゲームには関係なかったです。
読みふけっていたラノベ類、特に悪役令嬢物にも関係ありませんでした。
アニメもマンガも記憶にあるモノとの関連は一切ありませんでした。
予備知識の無い状態での異世界転生は厳しいモノがあります。
しかもハッキリとしたことは言ってくれませんが、この身体の元に持ち主は相当悪逆非道な行いを繰り返していたようなのです。
マイラの言葉の端々にそんな意味が含まれている気がしました。
私の他人の顔色を見る力は前世で極限まで高められているのです。
その力がこの世界でも遺憾なく発揮されました。
記憶のない転生を呪殺されかけた件の後遺症、記憶喪失と考えてくれたようで、私に心を入れ替えさせる好機と乳姉妹が色々と教えてくれました。
ですがそんな知識など私には不用です。
引き籠って誰にも会わずに暮らしたい私には、過去の悪行など意味がありません。
呪術の後遺症で寝たきりになった事にして、部屋から出ずに一生を終えられれば最高なのですから。
それに呪殺未遂の後遺症でベッドから起きられなくなった怨敵ならば、犯人も殺すよりも放置して苦しめ続ける方が復讐になると思うはずです。
ずっとベッドで寝ていても誰も邪魔しません。
ワンルームかと思われるほど広い天蓋付きのベッドです。
食事さえ運んでくれるのならベッドから降りる気にもなりません。
部屋の中に置かれているオマルで用をたす時にベッドから降りるだけです。
正直な話を言えば、信じられないくらい広い部屋など不要です。
最初はマイラが甘やかしてくれるのに歓喜していました。
ひたすら食べては寝ての生活を過ごしました。
ですが、段々たまらなく暇になってしまったのです。
この世界にはネットどころかテレビもマンガもないです。
ネット中毒、読書中毒の私には耐えられる世界ではありません。
本はありましたが羊皮紙で作られたとても高価なモノでした。
そんな高価なモノを使ってラノベやマンガなど書かれるはずがないのです。
それに、この世界の記憶のない私は字が分からないのです。
字が分からなければ本を読む事などできません。
暇で暇で暇で、たまらなくなってしまいました。
時間を持て余してしまったのです。
だからと言って屋敷を出て運動する気にはなれません。
ラノベのように冒険などもってのほかです。
絶対に部屋から出るのは嫌です。
勉強などする気になれなず、一度はマイラや乳姉妹に本の読みきかせしてもらったのですが、どうにも性にあいませんでした。
乳母や乳姉妹と言われても私にそんな記憶はないのです。
一緒にいるのが苦痛でたまらなかったのです。
だから字を教わって自分で本で読めるようなろうと決意したのです。
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