第27話


先輩たちの引退した頃、ちょうどおじぃの49日を終えました。



おかん「ゆうちゃん・・・やったっけ?」



あき「・・・え?」



おかん「最近、夜、あんたに電話くれてる子。」



あき「・・・うん。」



おかん「付き合ってんねやろ?」



あき「・・・うん。」



おかん「連れてきたら?」



あき「・・・え?」



おかん「夏休みも近いし、土曜日やったら夕方までおとんおれへんから連れてきたら?」



あき「・・・え~・・・。」



友達は男女問わず良く家に遊びに来ていましたが、過去カレを含め、彼氏を家に連れてきたことは無かったのでちょっと躊躇しました。



おかん「おじぃが亡くなった時、あんたの学校の制服着た子が何回か家の前まで来てたてお隣のおばちゃん言うてたで?」



『え?来てくれてたの1回やないん?』



ビックリしました。

電話では『1回行ったんやけど』位の話し方だったのに、実際は何回も来てくれてたようでした。



あき「・・・うん。家の前まで来てくれてたって言うのは聞いてたんやけど、まさか何回も来てくれてるとは思えへんかった。一回来ただけやと思てた。」



おかん「心配そうに何回か自転車で家の前行ったり来たりしてたらしいで?おばちゃんが見てるの気づいたら帰って行ったらしいけど、また次の日もおんなじやったって。」



おかん「でも、おばちゃんも不思議と不審者とか思えへんくて、『あきちゃんの彼氏が心配してんのかなぁ?』て家に言いに来てくれてんよ?」



『そんなに皆に心配させてたんか』と、今更ながらに反省しました。



あき「そうなんや・・・。」



おかん「今度の土曜日は部活休みや言うてたやろ?」



あき「うん。」



おかん「お礼もかねてお昼ご飯御馳走したら?」



あき「え?うちが作るん?」



おかん「そりゃそうやろ、おかんが作ってもええけど、あんたが作った方がゆうちゃんも喜ぶんやないん?」



あき「そりゃそうやろけど・・・。」



『いきなり手料理ってハードル高ない?』って思いはしたものの、『でも、ゆうちゃん、手料理喜びそうやな』と思って夜、電話がかかってきたときに聞いてみました。



あき「おかんが『土曜日、夕方までおとんおらんから気軽に遊びに来たら?』って言うてんねんけど・・・。どない?」



ゆうちゃん「え?」



あき「いや、嫌やったらええねん!」



ゆうちゃん「イヤや無い!イヤや無い!てか・・・、俺もあきん家行きたいて思てたから・・・。」



あき「そうなん?」



ゆうちゃん「だって、付き合わさせて貰ってんのにコソコソ外でばっか会ってたらご両親かて心配やろ?ちゃんと挨拶した方がええかなぁ?って思てたから・・・。」



あき「え?」



ゆうちゃん「いや、変な意味や無く!素性が知れてた方がご両親も安心やろ?」



あき「・・・うん。」



なんだか真剣にちゃんと考えてくれてるゆうちゃんの姿勢に感動しました。

『本当に大事にしようて思てくれてんねや』



それが言葉の端々から伝わって来ました。



あき「ほんでな、もしゆうちゃんが嫌じゃなかったら・・・。」



ゆうちゃん「・・・ん?」



あき「お昼前に来てくれたらご飯作ろうかなって・・・。」



ゆうちゃん「え?あきが作ってくれるん?」



あき「いや、うちの料理が心配やったらおかんが作るて言うてくれてんねんけどな!・・・でも、パスタくらいやったらうちでも作れるし・・・。」



実際はパスタ以外にも色々レパートリーはありましたが、最初は軽く食べられる物が良いかと思い、パスタを提案しました。




ゆうちゃん「パスタ!?食べたい食べたい!あきの作ったパスタ食べたい!」



ゆうちゃんのテンションが急に上がり



あき「いや、でも、パスタ言うてもめっちゃレパートリーは少ないねん!期待にはそえんかもしれんし!」



あんまりにもテンションが上がって期待値も上昇してたので慌てて言いました。



ゆうちゃん「ちなみに、どんな種類?」



あき「え・・・?オーソドックスなんやったらナポリタンとかミートソースとか・・・。ツナのクリームパスタとか、カルボナーラとか、明太子パスタとか・・・。」



ゆうちゃん「明太子パスタ!?明太子パスタ食べたい!いや、でもツナのクリームパスタも捨てがたい・・・、いや、でもやっぱ明太子・・・。」



あき「・・・プッ。」



思わず吹き出してしまいました。



ゆうちゃん「なに?なんかおかしい事言うた?」



あき「いや、そんなテンション上がると思えへんかったから。」



ゆうちゃん「そりゃテンション上がるやろ!だって彼女の手料理やで?初めてやし、彼女の手料理!」



あき「あ、そっか、考えてみたらうちも彼氏に手料理作るんはじめてや。」



ゆうちゃん「え?元カレは?」



あき「家にも呼んでへんし、もちろん手料理なんか振舞った事無い。」



ゆうちゃん「え!?マジか!あきの初めて!?やった!」



『そうか・・・。ゆうちゃんにとってはキスもファーストキスやったけど、うちはファーストキスちゃうかったし、デートも元カレとしてたし、よく考えたらお互いが初めての事ってこれが初めてかも・・・。』



そう気づいたらなんか緊張してきてしまって



あき「ちょ!なんかあかん!緊張してきたから手料理はまた今度!」



ゆうちゃん「え!?それは無理!もう明太子パスタのお口になってんねんから!」



あき「いやいや、まだ火曜日やで?今から明太子パスタのお口になられても!」



「ブハ!」



焦って答えた瞬間、2人で噴き出してしまいました。



ゆうちゃん「緊張はわかるけど、あきの手料理食べたいなぁ・・・。」



あき「ん~・・・。」



困って渋っていると



ゆうちゃん「あきの~、手~料理、た~べたいな~!」



珍しく粘って甘えて来るゆうちゃん。



あき「もう!分かった!でも不味くても許してや!?」



ゆうちゃん「やったぁ!!」



土曜日、11時頃にゆうちゃんが家に来ることが決定しました。







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