第24話
流れる雲をボーっと眺めてたらゆうちゃんが話しかけてきました。
ゆうちゃん「ごめんな」
あき「え?なにが?」
気まずそうに頭を掻いてるゆうちゃん・・・。
何が『ごめんな』なのかわからず、聞き返したものの、バツが悪そうに答えました。
ゆうちゃん「あんな、あきの状態が気になってたから、あきの家、直接行こうかと思たんやけど、どんな状況か、行っても迷惑になれへんかわからんかったから結局行かれんかった・・・。」
『え・・・?来てくれようとしてたん?』
付き合い始めて1カ月もたってない状態で、家に来るのを尻込みするのは、そりゃ当たり前です。
付き合いたてで、まだ彼女の家族にも会ってない状態で、会ったこともないおじぃのお通夜や葬式に来いって方が無理です。
しかも高校1年生・・・。普通に考えて絶対無理です。
あき「なんでゆうちゃんが謝るん?普通に考えて来るんとか無理やろ?ゆうちゃん何も悪く無いやん?」
ゆうちゃん「ん~・・・。そ~かもしれんけど、あきの事気になっとるとか言いつつ、そのまま放っておいたんはあかんかったなぁって思てんねん。」
ゆうちゃん「せめて金曜日位には電話したら良かったのに、そしたら秋の状態に合わせて土日で『どっか行くかとか?』とか声かけて、少しでも気晴らししてやれてたやん?でも、何て声かけてええんかわからんかったんや・・・。」
あき「いや、うちが同じ立場でも電話すら無理やわ。」
そこまで気遣いさせてしまってたのを知って、物凄く私の事を考えてくれてたんだ・・・。と、心が温かくなりました。
ゆうちゃん「意を決して、家の前までは行ったんやけどなぁ・・・。敷地内に入る事すら出来んかった・・・。ピンポン見えてたのに押されんとか・・・。あかん、へたれやわぁ・・・。」
あき「え?家の前まで来てくれてたん?それだけでめっちゃ嬉しいよ!?」
そう答えながら涙が溢れて来ました。
おじぃが死んで、初めて泣いた瞬間でした。
ゆうちゃん「ごめん!泣かすつもりやなかってんけど!!」
無理して大丈夫なフリをして、心に蓋して笑顔で受け答え・・・。
どれだけ自分を殺して数日を過ごしたのでしょう・・・。
それが、ゆうちゃんの温かく優しい心に触れて、氷が溶けだしたように涙が溢れました。
あき「ありがと・・・。あきの事、大切に考えて、いっぱい考えて、思てくれて・・・、ありがと・・・。」
しゃくりあげながら、声にならない声を必死に伝えました。
ゆうちゃんは、ただただ優しく抱きしめてあききちの涙を受け止めてくれました。
背中をポンポンとなでながら言われた事が
ゆうちゃん「笑わんでええ、無理して笑わんでええから・・・。1人で泣くな・・・。一緒におるから・・・。」
そう伝えてくれたゆうちゃんの目も、少しだけ潤んでいました。
あき「ゆうちゃんと付き合えて良かった。ゆうちゃんがおってくれるから頑張れる。」
ゆうちゃん「俺もあきと付き合えて良かった。付き合ってるからこそ、こうやってあきが辛い時に傍にいてやれるもんな。」
頭をポンポンしながら抱きしめてくれて、部活上がりなので少し汗臭いゆうちゃんの香り・・・。
でも、その香りが全然嫌じゃなくて・・・。
やっと素直に泣けました。
『大丈夫って言わんくて良いんや』
『大丈夫って言わんくてもゆうちゃんは呆れへんねや・・・。』
『ゆうちゃんが味方でいてくれたら、他の誰に呆れられても良いや』
自然とそう思えました。
高校に入ってから出来た友達・・・。
この恋を守るために無くなってしまった友情・・・。
『それでもこの恋は離したくない・・・。』
そう思いました。
ゆうちゃん「ちょっとは落ち着いたか?」
優しいトーンで響くゆうちゃんの声。
優しさがくすぐったくて、泣きながら笑けて来て・・・。
ゆうちゃん「ん?笑ろてる?」
あき「ごめん・・・。なんか笑ろてもた・・・。」
ゆうちゃん「あはは!うん!この笑顔は好きやな!」
さっきまでの作り笑いではない笑顔だったので、ゆうちゃんも少し安心してくれたのかもしれません。
ゆうちゃん「泣いたり笑ろたり・・・。忙しそうやけど、ゆっくり落ち着いたらええからな。泣けるときに泣け・・・。どうせ家ではよう泣けへんねやろ・・・。」
『なんでまだ浅い付き合いしかしてへんゆうちゃんにバレてんねやろ・・・。』
ゆうちゃんの言葉にまたクスクス笑ってると、覗き込まれて、そのままキスして・・・。
抱きしめられたまま頭をポンポンしてくれて、涙がひくまで根気強く待ってくれました。
『本当にゆうちゃんで良かった・・・。』
『おじぃが亡くなった時に支えてくれてるのがゆうちゃんで本当に良かった・・・。』
キザで照れ屋で優しくて・・・。
最高の彼氏・・・。
『一生一緒にいたい』
この時初めてそんな願いが心にポウっと優しい暖かい気持ちが灯りました。
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