第22話


おじぃのお通夜の段取り・お葬式の段取り、おとんとおかんは目まぐるしく動いていて、おばぁはあまりのショックで殻に閉じ籠ってしまいました。




おねぇが何してたかは記憶に無いんですが、おそらくおかんの補助をしてくれていたんじゃないかと・・・。



私はずっと聞こえてきている耳鳴りや男の人のささやき声の事は誰にも言えず、ただ、自分のせいでおじぃが死んだと、言いつけられた仕事はこなせいてましたが、自分自身の思考能力は止まってしまっていました。



一番ショックを受けているだろうおばぁに気を回す事さえできず、おばぁがその場にいない事に気付いたのはおばぁの兄弟が集まってきた後でした。



おじぃには姉が1人、おばぁには姉弟が7人いました。



おじぃの姉は、おじぃの変わり果てた姿を見て、泣き崩れ



おじぃの姉「しょうちゃん(おじぃの呼び名)なんで?何があったん?」



しきりに語り掛けていました・・・。




おばぁの兄妹たちは、どちらかというと生きている私たちに気を配ってくれ、各々私たち遺族に「大変やったなぁ、大丈夫か?」って声をかけてくれました。



この時はなぜか不思議なことに笑顔で「大丈夫!」と、答えてました。



まだおじぃの死が実感できていなかったのです。



だってまだおじぃはそこに居るから・・・。



おじぃは手を伸ばせば届くところにまだいてくれました・・・。



でも、もちろん全然大丈夫じゃないです。

話しかけても笑ってくれない・・・。

いつもみたいに『おじぃ大好きやで!』って伝えても、優しい笑顔で『おぉ。』って照れた顔をしていたおじぃは、もうどこにも居ませんでした・・・。



そして、相変わらずずっと頭のなかには『人殺し』と声がコダマしてます・・・。



お葬式まで、どのように過ごしたか記憶がありません。



ただ、おかんに言われて来客者にお茶出ししてたのは覚えてるんですが、お通夜からお葬式の事はまったく覚えてないのです。



お坊さんのお経をあげている姿も、おじぃの葬儀の祭壇がどんなだったか、誰が来てくれていたのか、何も覚えてません。




そして、おじぃが火葬場へと運ばれる時が来ました・・・。



おじぃの最期の「行ってきます」は、言葉も無く、自分で歩くことも無く、たくさんの親族によって車まで運ばれて行きました。



そして、火葬場で最後のお別れをしたはずなんですが、ここも記憶がありません。



覚えているのは、お骨あげの時に、おばぁとおかんが言い合いになった事位で、この言い合いも、どっちの気持ちもわかるんです・・・。



お骨あげの時間が迫り、火葬場に親族みんな揃って行くことになってました。



そこでいきなりおばぁが



「私は行けへん」

といいだして・・・。



おかん「なに言うてるん?あんたが行かなどないするん!」

実の娘であるおかんが説得するも



おばぁ「行けへん!怖い!行けへん!」



おかんにとっては『大切な父親の最後の姿、母親が居らんとどうするん?』って気持ちでした。



でも、おばぁにとっては、余りにも突然の死だったので認めたくない気持ちもあったのでしょう・・・。



しかもおじぃが亡くなった日は、おばぁの誕生日でした。




おばぁ「おじぃは私の事を嫌いやったんや、私が好き勝手に生きてたからあきれ果ててたんや・・・。だから・・・。」



きっとこの言葉の後ろには『だから今日を選んで死んだんや』そう続けたかったのでしょう・・・。



『あくまで事故や、自死や無いねん。』

『おばぁのせいだなんてそんな訳無い。』

『おじぃはそんな狭量な人や無い!』



そう親族みんなで説得しても、おばぁは納得せず、どんどん指定された骨あげの時間が近づいて来て、とうとう出発しないと間に合わない時間になりました。



結局・・・、おばぁは火葬場へは行きませんでした。

いや、行けませんでした・・・。



悲しすぎたんです。

おばぁなりにおじぃを愛しているからこそ、骨になったおじぃを見たくなかったんだと思います。



おかんは未だにそれが許せないみたいなんですが、本当にどちらが悪いんでもないです。



みんながみんな、おじぃの突然の死に捕らわれていました。



おじぃの死は、家族みんなの心に穴を開けました。



私自身もおじぃの死を受け入れられず、葬儀が終わり、本来なら翌日から学校に行く事になっていました・・・。



でも、どうしても足が進まず、様子のおかしい私を見て、親も無理に学校に行かす事を選ばず居てくれて、最終的に葬儀の翌日から3日間、学校を休みました。



月曜日に早退してから、3日休んだ日を入れると、1週間丸々学校を休みました。



おかん「あんた、明日は学校どうするん?」



あき「・・・・・・。」



おかん「無理はせんでええけど・・・。」



『ええ加減に行かなあかんで』多分そう続けたかったんでしょうが、おかんも口に出来ずにいました・・・。



おかんの気遣いにいつまでも甘えるわけにもいかないので



あき「・・・明日から行く。」



そう伝えました。



おかんのホッとした顔、おかんは実の娘で、父親が亡くなって、私よりもつらいはずなのに・・・、自分が情けなくなりました。



そして、月曜日の朝、重い足取りで通学準備を始めましたが、朝ごはんは食べることができませんでした。



それを見たおばぁが



おばぁ「あき、学校まで乗せてったるから準備しな。」



そう言ってくれて、車で送ってくれました。



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