第20話

同じ敷地内に全く別棟で生活しているおじぃとおばぁ。



高校受験前まではしょっちゅう泊まりに行っていたのに、高校入学してからは1度も言ってなかったことにふと気づきました。



『久々におじぃとおばぁの方で寝ようかな?』



お泊りする事をおかんに伝え、母屋(おじぃとおばぁの家)に向かいました。



あき「おじぃ!今日こっちに泊まってもええ?」



おじぃ「・・・おぉ!そうか、久しぶりやの!ほなおばぁと3人で布団並べて寝よか?」



おじぃは足を痛めてからはベッドで寝ていたので、いつもは別々の部屋で寝ているおじぃとおばぁ。



この日は久々に3人で川の字になって布団を並べて寝る事になりました。



おばぁ「こんな風に寝るの、1年以上ぶりかなぁ?」



おじぃ「せやなぁ、いつまでも孫と寝られるのは嬉しいこっちゃ!」



あき「えへ。受験も終わったし、これからはチョイチョイ来るよ!」



そんな会話をしながら眠りにつきました。



そして朝起きて、ふと隣を見ると既におじぃの布団は畳まれてました。



おばぁ「おはよぉ。」



あき「おはよ!おじぃは?」



おばぁ「おじぃ、なんか八幡さんまでお参りに行く言うて自転車で出かけたで?」



あき「ふぅん。」



おばぁ「それよりあんた、早よ支度せな学校おくれるで!」



そうおばぁに促され、急いで別棟の自宅に戻りました。



おかん「おはよぉさん!ご飯できてんんで!」



あき「おはよぉ!いただきまぁす!」



元気にご飯を食べ出し、最期にコーヒーを飲んでいた時です。

自宅の電話が鳴りました。



おかん「なんや?こんな早ぉから?」



そう言いつつ電話を取ったおかんの表情がどんどんおかしくなっていきました。



おかん「はい。はい。すぐ参ります。」



電話を切った瞬間に



おかん「おとん!ちょっと!!」



おとんを呼び、ボソボソと話し、おばぁの元へ行きました。



そして、おとんとおばぁが車でどこかに出かけ、おかんの顔はどんどん青ざめてきていました。



あき「どないしたん?」



あまりに顔色の悪いおかんが気になり、聞きましたが



おかん「なんでもあらへん、早よ学校の支度しぃ。」



それだけ言われ、



子ども心に『逆らったらあかん感じや』と思い、支度を始めました。



遠くから救急車の音が聞こえて、しばらくしたらおとんが帰ってきました。



あき「あれ?おばぁは?」



1人で帰ってきたおとんに疑問を持ち聞いたら



おとん「ちょっとな、おじぃが自転車でコケてな、いま救急車で病院行ってん。」



おとんの表情も硬く、『ただ事じゃないのかも・・・。』そう思いつつも



おとん「まぁ、大したこと無いから早よ学校行かんと遅刻するぞ!」



おとんに促されたので学校へ向かいました。



『学校に行けって言う位やから本当に大したこと無いんかもしれへんな』



自分の中で都合よく気持ちを変換して、普通に学校生活を送っていましたが3限目と4限目の間の休み時間になった瞬間くらいの時に



担任「あき!ちょっとこっち来い!」



担任に呼ばれ廊下に出ると



担任「お父さんから電話がかかってるから職員室に来なさい。」



そう言われて連れていかれました。



『おとんから電話?』

『え・・・?』

『なんで?』



頭は思考停止。

朝のおじぃの事はわかってたはずなのに、嫌な予感がしてたからか、自分の中でその事を考えないようになってました。



あき「もしもし~?」



おとん「あ、あきか?あんな、おじぃが入院する事になったんや、すぐM病院まで来れるか?タクシーで来たらええから。」



『入院する事になったから病院まで来い・・・。』

普通に考えて良くない状況なのは明白なのに、私はなぜか『大丈夫だ』と思ってました・・・。



おとんに言われた事を担任に伝えると



担任「もちろん早退してええから、タクシー呼んどくから落ち着いてカバン取りに行って来い。それか取ってきたろうか?」



担任はおそらく状況をすべて知っていたんだと思います。



あき「大丈夫!自分で取ってくるから!それにゆうちゃんに部活休むんも言わなあかんし。」



呑気に話す私を心配そうに見守る職員室の先生方・・・。



後で聞くと、朝から私は表情が死んだ魚の目のようになっていて、『どうしたんや?』って思ってるところに電話がかかって来て、現状の説明と、おじぃが危なくなったら電話するので私をすぐに帰らせられる手配をしておいて欲しいとおとんから連絡があったそうです。



そして、連絡が無ければいいと、先生方が祈ってくれていた祈りは届かず、2時間後におとんから再度連絡が来てしまったので、その時点で職員室の先生方はみんなおじぃの危篤を認識していました。



そんな先生方の心も知らずに、死んだ魚の目をした私はそのまま教室に戻り、休み時間中だったのでゆうちゃんの所に寄って



あき「なんかな、おじぃが入院する事になってんて、せやから病院来いっておとんに言われたから早退すんねん。」



ゆうちゃん「そうか、どやって行くんや?」



あき「タクシーで行くわ。」



ゆうちゃん「タクシーまで一緒に行ったろか?」



あき「もう授業始まってまうやん!大丈夫!」



自分では満面の笑みを返したつもりでしたが、後でゆうちゃんに聞いたら驚くほどに無表情だったそうです。



そんなこんなで、学校を出てタクシーで病院に向かう事になりました。



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