第19話


映画が始まっても手は繋いだまま。



定期的につまんでは私にポップコーンを『あーん』してくれるゆうちゃん。



たまにキュッってわざと力を入れてくれる手のイタズラが可愛くて。



キュッてされるたびにやり返して、目を見合わせて無言で笑って。



映画に集中したいのに出来なくて・・・。



そんなこんなありながらも面白い映画だったのでどんどん物語に引き込まれて行きました。



『天使にラブソングを』は笑いあり、ちょっと感動する場面もあり。



『ゆうちゃんは笑う直前に少し手に力が入る』って新しい発見にちょっと感動しちゃったり(笑)



そして、映画が中盤に差し掛かった頃です。

不意にゆうちゃんの手が離れ、『あれ?離されちゃった』って残念に思ってました。



『ま、ずっと繋いでたから疲れたんかな?』って思ってたら



ゆうちゃんに肩をツンツンされました。



『あ、また繋ぐんかな?』って思ってふとゆうちゃんを見た時です



ゆうちゃんの顔がスローモーションで近づいて来て・・・



キスしちゃいました。



ほんの軽くですが、『チュッ』って感じですが、ゆうちゃんの唇が初めて私とふれあいました。



ビックリしながらも、もちろん全然嫌ではなく、でも急だったこともあって目をつむる事も忘れる位ビックリして・・・。



あまりにビックリしたのでぽかんとしてたら、頭をポンポンってされて・・・



ポンポンしてくれた手を取って頬に持ってきたら、今度はもう少しだけ長めのちゃんとしたキスをしてくれました。



今度はゆうちゃんの顔が近づいてきた時にちゃんと目を閉じて、ドキドキしながらゆうちゃんの唇を待ちました。



映画館でキスなんて想像もしていなかったので、ドキドキしながらも、『嫌じゃなかったよ。嬉しいよ。』って伝えたくて、頬に当たった手の上に手を重ねながら、ゆうちゃんの方にコテンと頭を乗せたまま頬から降ろした手をまたつないで映画をみました。



『どうしよ・・・。こんな幸せでええんかな?』

そんな風に思って映画そっちのけになっちゃいそうなくらい幸せで、つないだ手からゆうちゃんのぬくもりを感じながらハートフルな映画を楽しみました。



でも、見てるうちに



『あれ?でも席を選ぶときにかなりパッと選んでたけど、もしかして元からここでキスするつもりだったんかな?』



そんな想像したらなんだかおかしくなってきちゃって。

笑いをこらえるのに必死でしたw



でも、そんなゆうちゃんも可愛いなって思って、嬉しいけど照れくさくて、顔が赤くなるのを感じ



『映画館が暗くて良かったw』

繋いでない方の手で顔をパタパタしてたら、ゆうちゃんがこっちを見たので急いでやめて、ゆうちゃんの方を見るとまた『チュッ』と短いキス・・・。



本当に幸せで、嬉しくて・・・。



『1秒ごとに好きが加速していく感覚』でした。



映画が終わっても手をつないだままスクリーンを後にし、歩きながら



あき「もう。ホンマにビックリした~・・・。」



そうゆうちゃんをチラ見しながら言うと



いたずらっ子みたいな顔をしながら



ゆうちゃん「ビックリさせたったw」



そう言って笑ってました。



ゆうちゃん「ごはんなにがええ?」



あき「う~ん・・・。アイス!」



ゆうちゃん「それはご飯ちゃうwww」



爆笑されたものの、この日も胸はいっぱいでご飯なんて入る余地はなさそうでした。



あき「だって、なんか食べられそうもないねんもん・・・。」



ゆうちゃん「あかん!この前もそんなん言うてシェイクすらまともに飲まんかったやんか!ちゃんとメシ食わなあかん!」



あき「なんかゆうちゃん『親父』っぽい。」



そう言うと頭をグリグリされましたw



あき「痛い痛い!!」



ゆうちゃん「誰が親父やねん!」



あき「ちゃう!お兄ちゃんでした!」



ゆうちゃん「・・・それもちゃうやろw」



あき「・・・せやな、お兄ちゃんとはキスせんか・・・。」



ゆうちゃん「アホ。」



ふと隣を見るとちょっとだけ顔を赤らめたゆうちゃんw



あき「あ、照れてる!カワイ!」



そんなん言ってたら



ゆうちゃん「俺は初めてやねんからな!」



そう言われ・・・。



『そっか、汐ちゃんと何もしてへんって事は、ゆうちゃんにとってはこれが初キッスやったんや』って思って、ニマニマしちゃいましたw




これまでの言動とかを考えても

『ゆうちゃんって結構キザな事すんねんなぁ』

『あかん、心臓もたんくなったらどうしよw』

『これからはきっと色んなドキドキがあんねやろなぁ』



そんな想像をして、これからのゆうちゃんとの未来が楽しみでもあり、このままいつもと変わらない日常がのんびり過ぎていくんだと思ってました。




でも、このすぐ後に、私にとってものすごく大きな出来事が訪れます・・・。



大切な大切なおじぃとの悲しい別れ・・・。



それは心に本当に大きなシコリを残す出来事となります・・・。



ゆうちゃんが居てくれたから乗り越えられた・・・。



ヘタしたらあのまま引きこもりになっててもおかしくない位の衝撃的な出来事でした・・・。



おじぃの好きだった水戸黄門。

『人生楽ありゃ苦もあるさ・・・。』

本当にその通りでした。



ゆうちゃんとのお付き合いのすぐ後、おじぃとのお別れの時が来てしまいます・・・。


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