第17話


ゆうちゃん「ほんまに汐とのケンカ、大丈夫なんか?」




あき「うん!うちが汐ちゃんに隠し事しててな、それ打ち明けてん!だから、いつか解ってくれるて・・・信じたい・・・。」



ゆうちゃん「そっか・・・」



そこからまたしばらくボーッと2人で空を見上げてました。



ここで言わなきゃ女がすたる!

言わなきゃ、言わなきゃ・・・。


とは思いつつも、なかなか言い出せませんでした。



この距離感でもいいから、この場所を失いたくないと思ってしまうと、なかなか声が出ません。




ゆうちゃん「さ!そろそろ帰ろか?」



ゆうちゃんが立ち上がった瞬間、なんか言えそうな気がしたので



あき「ゆうちゃん!あのな!」



と、言った瞬間です。




ゆうちゃん「あき、ごめん!」



『あ、やっぱりあかんかった。告る前にフラれた~』

・・・と瞬時に悟りました。





ゆうちゃん「あわよくば言ってくれんかなぁ・・・とか期待してしもた!」



『え?なにが?』



ゆうちゃん「俺、あきの事好きや。多分汐が怒っとんって、あきが汐に俺への気持ち言うたからちゃうん?」



あき「え?あ、うん、え?」



ゆうちゃん「あきの気持ちも俺と一緒って思ってええのんかな?」



あき「一緒って・・・?」



ビックリしすぎて理解が追いつきませんでした。



ゆうちゃん「付き合えへんか?俺ら・・・。好きやで、あき。」




『は?ゆうちゃんがうちの事好き?それ何語?』そんなアホな事考えつつも信じられずに、口をついた言葉は



あききち「嘘やん」



でした。




ゆうちゃん「ん?何が嘘?」



あき「ゆうちゃんがうちの事好きな訳ないやん。」



ゆうちゃん「なんでやねん。好きやっちゅ~ねん!」



あききち「ほん・・・まに?」



ゆうちゃん「ほんま!てか、気づいてなかったんかい!あき鈍すぎやろ。」



あき「だって・・・。うち、汐ちゃんの友達で、部活の仲間やからかまってもらえてるて思てた・・・。」



ゆうちゃん「俺、好きでもない女、抱きしめたりせんから。」




確かに後で考えると、『もしかしてこの頃には好きになってくれてたんかな?』って行動はありました。



でも、汐ちゃんの友人、元カノの友達って立場は、決して恋愛対象にはしてもらえないと思っていました。




本当にゆうちゃんが言うとおり、かなり鈍すぎではありましたが、まだまだ恋愛経験も少なく、男心なんて一欠片もわかりませんでしたので、まさか自分を好きになってくれてるなんて思わなかったんです。



差し出された手を握り返して立ち上がると、ゆうちゃんがそっと抱きしめてくれて、耳元でしっかりと聞こえる声で



ゆうちゃん「あき、好きや、俺の彼女になってくれ。」



って言ってくれました。



それでもまだ信じられなくてあたふたしてる私の頭をポンポンして、



ゆうちゃん「さ、そろそろ帰ろ?おそなるから。」



そう促され、やっと歩き出せました。



そして、翌日の部活はもうフィーバー状態でしたw



御津くん・やすくん「ひゅ~!」



なお「ゆーちゃん、あき!おめでとぉ!!」



たーちゃん「なんや~、昨日のそう言うことやったんやな、もう今朝あきに聞いた時にはビックリしたわ。」



さんちゃん「あきえ~な~、うちも彼氏欲し~!」



御津くん・やすくんはゆうちゃんから告白するって聞いてたらしく、『ここ数日の私の様子見てて絶対に大丈夫、付き合うやろ』って思ってたらしいです。



ようするに、部活メンバーにはゆうちゃんの気持ちも、私の気持ちもバレバレだったって事で・・・。



照れ臭いけどすごく嬉しくて幸せでした。



センパイたちにもあっと言うまにバレましたが、3年生のセンパイに部活内カップルが2組居ましたので、特に何も言われることもなく、スルーしてもらえました。




その日から、ゆうちゃんは毎日帰りは家まで送ってくれて、こんなに幸せだと、将来バチが当たりそうって本気で思ってました。



週末も、皆で遊ぶこともあるけど、2人きりで遊ぶことが増えていきました。



汐ちゃんとは疎遠になったままでしたが、そこはもう仕方ないと諦めていました。



ゆうちゃんが言うには、『汐ちゃんと付き合うってなった時は告白されたことに舞い上がっててOKしたんだけど、性格も行動も全然あわなくて、別れようって言われた時にはちょっとホッとしたんや』って言っていました。



汐ちゃんが言ってたとおり、多分本当に何にも無かったんでしょう。



汐ちゃんは大人っぽかったので、ゆうちゃん気後れしてたのかもしれません。



その点、私はただの考えなしで突っ走るアホの子ですので、ゆうちゃんにしてみれば保護者みたいな庇護欲もあったんでしょう。



夏休みまでの週末は、意外と試合が多くて、試合の度に他校の子とも仲良くなりました。



特に仲良くなったのが、宮高校の『のりちゃん』と、寺高校の『せきくん』でした。



せきくんはゆうちゃんと同じ中学出身だったので、再会と同時に仲良くなり、この三校のメンバーで遊びに行くことも多々ありました。



そして、試合が一段落した夏休み入りたての部活が休みの日に、付き合い出して初めてのデートらしいデートをする事になりました。



当日は電車のなかで待ち合わせ、でも前日の電話では、ゆうちゃんにちゃんと釘をさされました。



ゆうちゃん「今日はちゃんと寝る!ええな!ちゃんと寝るんやぞ!じゃないと明日また熱出してたら、デート取り止めやからな!」



あき「わかってる~、寝る寝る!あんま自信ないけど寝るよう頑張るから(笑)」



ほんと、バカップルみたいなやりとりすらも楽しくて、もちろんなかなか寝れませんしたが、朝方少しだけ寝られたので体調は崩さずすみました。


ゆうちゃんの方が先に電車に乗ってるはずでしたが、外から見ててもゆうちゃんが見当たりません。



『あれ?この電車違ごてたんかな?』



と、思った瞬間、ドアの影に隠れたゆうちゃんを発見しました。



ゆうちゃん「ビックリした?」



あき「した!てか性格悪!」



悪態づく私の頭をポンポンして手をつないでくれて空いてる席に行きました。



ただ手をつなぐだけでときめいていたあの日を忘れずにいたなら、今も隣に居るのはゆうちゃんだったのかな・・・。



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