第13話
木野くん「おつかれぇ」
いつも木野くんの第一声はこの『おつかれぇ』でした。
あき「おつかれさま・・・。」
木野くんを怒らせたら・・・。
本当に学校に言われたら・・・。
ゆうちゃんの人生を私が変えてしまう事になったらどうしたらいいん・・・。
ゆうちゃんは電話で『気にするな』って言うてくれたけど、ホンマにそれを鵜呑みにしてええのん?
本当はゆうちゃんかて退学にやなりたくないんやから、やっぱりうちなんてどうなってもええから木野くんと会うべきなんちゃうの・・・?
頭の中ではそんな考えがずっとグルグルと回っていました。
木野くん「なんや?あき元気ないやん?」
『そりゃ元気なんて出るはずない・・・。わかってるくせになんやねん・・・。』
そう喉元まで声が出かけましたがとめました。
木野くん「明日、会うん何時からにする?あきの家まで迎え行こか?」
あき「・・・・・・・・」
木野くん「・・・?あき?聞いとん?」
あき「・・・やっぱり明日、会われん・・・。」
木野くん「は?なんで?」
あき「色々考えたけど・・・。やっぱり木野くんとそう言う関係になるんはムリやと思う・・・。」
木野くん「は?ほなゆうちゃんはどうなってもええの?」
あき「イヤや、どうもなって欲しない・・・、けど、うちが木野くんの言うとおりに行動してもゆうちゃんは喜ばへんと思うねん。」
木野くん「でも、あきのせいでゆうが学校辞める事になったら、ゆうは絶対あきの事許さんやろな?」
まだ追い打ちをかけてきました。
あき「そうかもしれん。でも、・・・会われへん・・・。」
木野くん「なんやなんや?結局自分が大事って事?」
あき「そやね・・・」
木野くん「はあ?マジ萎えるわぁ、あきってそんな奴ちゃうやろ?」
あき「木野くんかて、そんな奴ちゃうやろ?なんでそんな脅しみたいな事すんの?」
木野くん「そりゃあきにこっち向いて欲しいからや!」
あき「そんなんで向けへんよ・・・。もし向いたとしたって、無理やり向かしてどうなるん?それで両想いなん?そんなんただの脅されて逆らわれへんだけの奴隷やん・・・。」
木野くん「そ、それは・・・」
あき「とにかく行かん、会わん。それでゆうちゃんが退学になんねやったら、うちも自主退学するからもうええ。それがうちなりの償いや・・・。」
あき「それと、もう、2度と一緒に遊んでたメンバーでは会わへん。嫌な思い出に囚われたくないからな・・・。」
木野くん「・・・それって俺とも2度と会わんって事?」
あき「そやな。会わん。」
木野くん「それはないやろ!明日はもうええ、でも普通に会うのはやめんといてや!」
あき「ムリ。もうこんな関係で会えるわけがない。」
木野くん「危ないことせぇへん!絶対せんから!」
あききち「そんなんもう信じられへんよ。脅した時点でフィフティな友達やない。もう会わん。」
木野くん、言葉が出なくなりました。
お互いの出方を探るような沈黙の時間が流れ続けました。
そして10分程たった頃でしょうか。
木野くんの電話にキャッチが入りました。
木野くん「キャッチや、ちょい待って・・・」
あき「うん。」
そこから5分程待ちました。
木野くん「お待たせ」
あき「うん。」
木野くん「キャッチ、ゆうやった。」
あき「え?ゆうちゃん?」
木野くん「原付の免許もバイトも学校に言いたければ言えって言われた。」
あき「・・・」
私の独断で、ゆうちゃんは何も知らない事にしていたかったので焦りました。
木野くん「あきの様子がおかしいから無理やり聞き出したって、ゆうは全部知ってたんやな・・・。」
あき「・・・」
『どないしよう・・・。逆上して学校に言われたらどないしたらええの?』
パニックでした。
なんとか木野くんを怒らせないように、木野くんを納得させるように・・・どうしたらいいか考えてる時です。
木野くん「・・・ごめん、俺、卑怯やったよな・・・」
あき「え?」
木野くん「焦っとったんや、あきとゆうがどんどん距離近なるし・・・。」
あき「・・・」
木野くん「ゆうに『好きな女脅して犯すんがお前の愛情なんか?』言われて頭冷えた。俺、こんなんではあかんな、ゴメン。」
あき「え・・・と・・・」
木野くん「ゴメン、ほんまゴメン・・・」
あき「う、うん。」
木野くん「やっぱゆう・・・ええ奴やな・・・。」
あき「・・・・・・」
木野くん「俺、あき諦めるわ!」
あき「え?」
木野くん「もちろんゆうの事、学校にチクらんし、お前の気持ちも汐に言わへん・・・、ほんまゴメン・・・。」
そう言って電話が切れました。
『え?終わったの?』
ビックリするほどあっさり木野くんは引き下がってくれました。
『ゆうちゃんから電話や』って待った時間は5分程度、だから話も5分程度しかしてません。
内容は『好きな女脅して犯すんがお前の愛情か?』って話以外は何もわかりませんでした。
でも、たった5分の電話でゆうちゃんは木野くんの心を動かしてくれたのです。
ゆうちゃんへの気持ちはどんどん加速して行っていました。
でも、まだまだ汐ちゃんの元カレって言う高い壁がそびえてて、『汐ちゃんにゆうちゃんに対する気持を告白する事で学校生活が変わるかもしれない』って言う恐怖から、一歩踏み出す勇気が出ませんでした。
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