第12話


あき「ゆ・・・うちゃん、どないしたん?こんなとこで。御津くんとかは?」



急いで愛想笑いを作りました。



ゆうちゃん「アイツらには先に帰ってもらった。俺はあきを待ってたんや。」



あき「え?なんかあった?」



空々しいとは思いつつも何もわからないフリをしました。



ゆうちゃん「ここではなんやからちょっと移動しよか?」



そう促されて公園まで移動しました。



いつもなら嬉しいゆうちゃんと歩ける道も、この時は長く感じました。



そして公園について、近くにあったベンチに腰をおろし、ゆうちゃんが口を開きました。




ゆうちゃん「何があったんや?」



あき「え?なにが?」



ゆうちゃん「『なにが?』や無いわ、なんでここの所、俺の事避けてんの?」



あき「・・・・・・」



あき「・・・避けて無いで?ゆうちゃん、なんか考えすぎやわ!」



『えへへ』と笑ってごまかしました。



ゆうちゃん「今週、火曜日からずっと避けてるやないか、俺、あきになんかした?」



あき「え?せやから気のせいやて。ゆうちゃん、考えすぎやわ~!」



『何とかごまかさないと』と必死でした。



ゆうちゃん「顔見ぃへん、話しかけても上の空、挙げ句の果てに何日も帰りも別にせないかん用事ってなんやねん?汐になんか言われたんか?」



あき「そんなんちゃうよ。汐ちゃんはなんも言うてへん!」



実際に汐ちゃんには何も言われてなかったし、一緒に帰ってるのすら知らないし、汐ちゃんのせいってする訳にはいきませんでした。



ゆうちゃん「汐じゃないって事は・・・。木野か?」



思わず身体がビクってなりました。



『なんでわかるの?』って心の底からビックリしました。



あき「木野君になんか聞いたん?」



ゆうちゃん「いや、なんも聞いてへんけど、他に心当たり無いから木野かな?と思たんや。」



あき「・・・」



ゆうちゃん「何言われてん?」



あき「言われへん、ゆうちゃんには関係ない事やから。」



ゆうちゃん「・・・・・・」



ゆうちゃん「原付か?」



あき「え?」



ゆうちゃん「木野と原付免許取りに行ってん、せやから木野が脅し文句として使うんやったらどうせ『原付の事学校にばらす』とか言われたんちゃうんか?」



エスパーですか?って真剣に思うくらいビックリしました。



ゆうちゃん「言いたいんやったら言わしたらええ、どうせお前に『ばらされた無かったら言うこと聞け』とか言うてきたんちゃうんか?」



あき「・・・」



ゆうちゃん「いつ会う予定やねん?」



あき「いつでもええやん。ゆうちゃんには関係あれへん!」



『ゆうちゃんだけは巻き込みたくない!』

その一心しか頭にありませんでした。



その時、ゆうちゃんが声を荒げました。



ゆうちゃん「会うなよ!危ないやろが!」



あき「でも、あきか出来ることしてゆうちゃんが助かるならそれでエエやん。元々あきのせいやねんから。」



ゆうちゃん「なにがあきのせいやねん?」



ゆうちゃん「あきがなにした?単にみんなで遊んでただけやろ?」



あき「それは・・・せやけど・・・。」



ゆうちゃん「それの何が悪かったんや?なんも悪ないやろ?勝手にあきに惚れたんは木野ちゃうんか?」



あき「・・・」



ゆうちゃん「絶対会うな・・・。」



あき「でも・・・。」



ゆうちゃん「わかってんか?木野は男やねんぞ?やられるぞ、ほんまにエエんか?」



あき「そんなん・・・わかってる、けど、それで学校に言われへんのやったらそれでええ。」



決意は固く、すでに覚悟は決めていました。




ゆうちゃん「アホ!俺はそんなんで助かったって嬉しないわ!」



いきなり強く抱きしめられました。



ビックリしていると、ゆうちゃんが続けました。



ゆうちゃん「お前に守られて、おまえが傷ついて、なんでそれで俺が幸せになれると思てんねや?頼むから・・・。」



あき「だって・・・」



ゆうちゃん「だってちゃう!会うな!」



あききち「だって・・・。」



それ以上言葉が出ませんでした。



こんなに誰かに強く抱きしめられたのは初めてでした。



ただ、ゆうちゃんが私に持っている感情は恋なのか、それとも友情なのか・・・。

それはわかりませんでした。



でも、どちらにしても、自分はゆうちゃんに大切に思われているのだけはわかりました。



でも、木野くんと会わなければ自分に出来る事は何もない。



その想いがあるのでなかなか決心はつきません。



でも、このままではゆうちゃんも納得しないと思い、取りあえずは承諾しました。



あき「わかった・・・。でも、ゆうちゃんがもし、退学になったらあききちも辞めるから。」



ゆうちゃん「アホ、そうならんようには俺も頑張るから。」



ゆうちゃん「もし退学になったとしたって、実際拘束破ってるのは俺や。お前は何も気にせんでええ。」



私の頭をポンポンとなでながらヤンチャな笑顔で笑ってくれ、律儀に『危ないから』って家まで送ってくれました。



ゆうちゃんにそう言われても葛藤は続きました。

待ち合わせ時間や場所を決めてないから、今晩、木野くんから電話があるはず・・・。



本当にゆうちゃんに甘えていいの?



やっぱり自分がどうにかできる範囲ですべき事があるんじゃないの・・・。



そんな事を考えつつ、時間は過ぎ、電話が鳴りました。



あき「もしもし、あきです。」



「・・・」



あき「もしもし?」



「あき?」



あき「・・・え?ゆうちゃん?」



木野くんだと思ってとった電話の相手はゆうちゃんでした。

そして、ゆうちゃんからの電話はこの時が初めてでした。



ゆうちゃん「今日の約束、ちゃんと覚えてるか?」



あき「お、覚えてるよ」



ゆうちゃん「ならええんや。間違うなよ、明日、絶対会うなよ。」



あき「・・・うん。」



ゆうちゃん「まだ迷ってんのか?」



あき「・・・・・・」



ゆうちゃん「わかった、こうしよ?ちゃんと断れ。そんで、明日は俺と会おう。10時に駅で待ってるから・・・。」



それだけ言って電話が切れました。



心が揺らいでるのを見透かすように、負けそうな気持ちを奮い立たせる為に電話をくれたのでした。



その直後、また電話がなりました。



「もしもし?」



今度こそ、相手は木野くんでした。


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