第11話


木野くん「ホンマにそれでええの?」



あき「え?」



木野くん「ゆう、退学になってもええんかなぁ?」



あき「なに言うてるん?」



木野くん「一昨日な、ゆう学校休んでたやろ?」



あき「うん・・・。それが何?」



木野くん「俺、ゆうと一緒に原付の免許取りに行っててん。」



あき「せやからそれがどうしたん?」



平気なフリして言いましたが、心臓が異常な位ドキドキしてました。



『校則違反』

うちの学校は原付免許を取る事は校則違反でした。



そして、学校をさぼって免許を取得しに行ってる、それは間違いなく追加で厳罰がある行為でした。



木野くん「昨日、汐に電話して確認してん、お前らの学校、原付免許とかあかんねやろ?」



あき「・・・でも、取ってる人もいっぱいいてるし、それで退学にはならへんよ」



強がりましたが、本当は『どうしよう』と、不安で仕方ありませんでした。



木野くん「せやな、学校さぼって免許取りに行っただけでは長期停学位で済むかもな」



停学も嫌でしたが、ここから説得できれば何とかなるか・・・と思った時でした。



木野くん「でも、原付買う為にアイツバイトしてるよな。」



ビクってなりました。



そう、うちの学校はバイトも禁止でした。



木野くん「それもバレたらさすがに退学ちゃうの?」



そう・・・。

トリプルになるとほぼ間違いなく退学です・・・。



あき「・・・・・・。」



あき「・・・お願いします。言わんといて・・・。」



木野くん「どうしようかなぁ?」



あき「お願いします・・・。」



木野くん「あ、あと、お前の気持ち、汐にばらしたろうかな?」



あき「それは別にええ、うちはどうなってもええ。でも、ゆうちゃんは関係ないやん・・・。」



木野くん「関係なくないやろ?」



あき「ただの片思いや・・・。ゆうちゃんに非はないやろ?」



木野くん「まぁ、ゆうにとってはただの巻き込まれ事故やわな。」



あき「やめて・・・。何でもするから・・・。」



木野くん「なんでもって何してくれるん?」



あき「付き合ったらええの?木野くんの彼女になったらええんやったらなるから」



木野くん「う~ん・・・。今更それもなぁ・・・。」



あき「ホンマに何でも言うこと聞くから・・・。」



木野くん「せやったら今週末、取りあえず会おか?」



あき「・・・・・・。」



木野くん「そん時のあきの態度でどうするか決めるわ」



あき「どうするかってのは・・・?」



木野くん「ゆうの事もそう、あきと付き合うかもそう。そん時に決めるわ。」



そう言われて電話が切られました。



『どうしよう。ゆうちゃんに迷惑かけたらどうしよう。』

『とにかく、何言われても逆らわんとこう。』

『ゆうちゃんにだけは迷惑かけへんように、どうにかして食い止めよう・・・。』



忘れもしない、この日は月曜日でした。

週末までの5日間、地獄のような心地でした。



翌日から、ゆうちゃんの顔をまともに見れない日が続きました。



『ゆうちゃんに迷惑かけるかもしれへんのに合わせる顔なんてないわ・・・』



そんな風に思ってました。



ゆうちゃん「あき!今日みんなでゲーセン寄って帰ろうって言ってんねんけど、この前のエアホッケーのリベンジするぞ!」



あき「あ、ゴメン、今日あかんねん・・・。ちょっと早よ家帰ってこいって言われてて」



ゆうちゃん「そうなんか?じゃあ明日にする?」



あき「いや・・・。ちょっとしばらくあかんかなぁ・・・。」



少し不思議そうなゆうちゃんの視線は感じていましたが、『今、ゆうちゃんと行動して、それが木野くんの耳に入ったら・・・』



その恐怖が日に日に大きくなり、ゆうちゃんを避け続けてしまいました。



ゆうちゃんが先生に呼び出されたって聞いたらそれだけで恐怖で真っ青になっていました。



なお「あき、なんかあったん?顔色悪いし、ここの所なんか変やで?」



あき「いや、なんもないない!大丈夫や!」



元気なふりしてましたが、毎日不安に押しつぶされそうでした。



そしてやっと金曜日になりました。



『明日は木野くんに会う日・・・。何とか今日まで学校にはばらされへんかった・・・。良かった。あとは明日や・・・。』



『何としてもゆうちゃんの学校生活を守る』

『たとえ自分がどんな目にあっても・・・。』



無事に部活を終え、たーちゃんと一緒に下校しました。



この頃はもうハマキは現れなくなってましたので、男女別で帰ってました。



たーちゃん「あき、なおも言ってたけど、ホンマになんもないん?最近ゆうちゃん避けてるみたいに思ってんけど・・・。」



あき「え?そんなこと無いで?大丈夫!大丈夫!」



心配かけないように笑顔で答えながらも、多分笑顔は引きつっていました。



『友達に心配かけたくない』



その一心で何とか普段通りに振舞おうとはしていましたが、そこまで器用な人間にはなれませんでした。



あき「たーちゃんありがと、ホンマに大丈夫やから、週明けにちゃんと報告するから、待ってて。」



それだけを伝えるのが精いっぱいでした。



たーちゃん「わかった、でも、何かあってすぐ話したいって時はいつでも来たらええからな」



あき「わかった、ありがとう。」



お礼を伝えてたーちゃんと別れました。



そして良くハマキに待ち伏せされてた駅に差し掛かった時、見覚えのある人影が・・・。



ゆうちゃん「待ってたで。」



ゆうちゃんでした・・・。

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