第10話


木野くんの急な告白に持ってたコーラを落とした私。



そのコーラを拾いながら木野くんは続けました。



木野くん「俺と付き合って欲しい。俺は中卒やしけど、気持ちはだれにも負けん自信があるし、同級生より自由になる金もあるし、絶対あきに後悔させへんから!」



コーラを受け取りながら少しずつ頭の中身を整理しました。



『今、告白された?木野くんが私を好き?木野くんと私が付き合う?木野くんはゆうちゃんの友達・・・。』



『え?無理やろ?』



やっと整理できて、どう断るのが木野くんを傷つけないか考えましたが、思い浮かばなかったのでズバッと言いました。



あき「あの~、気持ちはすごい嬉しいねんけど、・・・うち好きな人おんねん。」



木野くん「ゆうやろ?」



あき「え?」



木野くん「俺、初めて会った時からずっとあきを見てた。だからわかってる。」



あき「せやったら・・・」



なんでわかってんのに言うてきたん?って言葉にしようとしましたがさえぎられました。



木野くん「でも、ゆうは汐の元カレやん?ムリやろ、友達の元カレとか、汐にも言われへんやろし、ゆうにもその気無さそうやん?」



『あ、傍から見ててもやっぱりそうなんや・・・。』

分かり切ってた事ではありましたが、第3者に言われると意外とズドンと来るものがありました。



『ゆうちゃんもうちの事ちょっとは気にしてくれてるかな?って思ってたけど、そりゃないわな~・・・。』

ゆうちゃんにとっては私は多分ただの元カノの友達で、部活の仲間で、ツレで・・・。『そりゃそうか』と納得しちゃいました。



木野くん「俺はあきを幸せにする!決めてんねん!せやから付き合ってくれ!」



困りました。

木野くんの事をそんな風に見たことないし、見るつもりもない。

てか、見れないと思いました。



こんな状況だし、今後も進展する可能性なんてないけど、私は好きなのはゆうちゃんだけだから・・・。



あき「ごめん、それでも、片想いなんわかっててもゆうちゃんが好きなん。ごめんなさい。」



木野くんは困ったような笑顔で



木野くん「すぐに返事せんといてや、とりあえず1週間でええから考えてほしい。」



そう懇願されました。



あき「考えても変わらん思うんやけど・・・。」



木野くん「とりあえず考えて!そんでもダメなら諦めるから!」



木野くん「毎日電話するから、ちょっとずつ考えて一週間後に結論出してや!」



気持ちはとても嬉しかったし、私自身もゆうちゃんとどうにかなれるなんて思ってなかったので迷いました。



『好きになれる可能性があるんなら付き合ってみるべき?』

『でも、前回ハマキはそれで失敗して痛い目にあいかけたやん・・・。』

『せやけど、ハマキと違ごて木野くんはいい人やと思うし・・・。』



迷いに迷っていましたが



木野くん「チャンスくれるだけでええから!な!?」



木野くんの押しに根負けして



あき「ほんまに気持ち変わらんと思うよ?それでもええの?」



聞いてしまいました。



木野くん「ええ!あき!ありがとう!」



凄い笑顔でこたえられて少しだけ罪悪感を抱いてしまいました。



宣言通り木野くんからは毎日電話がかかって来て、取りあえず出るものの何となく気まずくはありました。



木野くんは気にしていないようでしたが、それがより一層罪悪感を増しました。



携帯電話なんてない時代、頑張って家電に電話をくれる。



その頑張りに答えられない、スッキリ『やっぱもう無理』って言えない自分に本当に嫌気がさしてきてた頃です。



汐ちゃん「あき!木野に聞いたで!告白されたんやろ!?」



『うそ・・・。よりによって汐ちゃんに言うたん・・・。』



木野くんが周りから固めようとしたようで、汐ちゃんや目野くんから言われた言葉。



『木野、ええ奴やから、試しにでも付き合ってみたらええやん!』



良い人なのはわかってる・・・。

でも、どうしてもゆうちゃんの事を諦められませんでした。



ゆうちゃん「あき、木野に告白されたん?」



あき「え?」



ゆうちゃん「目野に聞いてん。」



『あ、目野君か・・・。さすがに木野くんもゆうちゃんには言わんでくれたんやな・・・。』



汐ちゃん「あき、木野の事どないすんの?」



汐ちゃんに聞かれても『好きな人がいる』とは言いづらく



あき「う~ん・・・。考えてはいるんやけどな、前のハマキの事があるから、ホンマに好きな人と付き合いたいなぁって思ってんねや・・・。」



好きな人がいるとは言えずとも、なんとか『くっつけよう』って雰囲気を払しょくするためにも『無理め』な雰囲気を醸してました。



そして、とうとう約束の1週間目、木野くんから電話がかかってきたのでお断りを伝えようと思いました。



あき「木野くん、今日で1週間目。頑張ってくれて、本当に気持ちは嬉しかってんけど・・・。ごめん。やっぱゆうちゃんが好きやから・・・。」



木野くんの為にもはっきり伝えるべきやと思いましたので、きっぱりゆうちゃんへの気持ちが揺るがなかったことを伝えました。



そして、そのまま終われると思っていたのです。



1週間前にしていた約束通りに・・・。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る