第9話


少し安心はしたものの、震えは止まってなかったし、顔色も悪かったらしく、ゆうちゃんが聞いてくれました。



ゆうちゃん「どっかで少し休むか?」



あき「いや、御津くんとか待ってるやろうし大丈夫!」



ポテポテと自転車をおしながら歩き始めました。



『ゆうちゃん、やっぱ男の子やねんな・・・。』



抱きしめられた時の胸板の意外な厚さにドキドキしていました。



駅に着いたらそこには御津くんとやすくんが待ってくれてました。



あき「ゆうちゃん、御津くん、やすくん、今日は迷惑かけてごめんなさい!そんでホンマにありがとう!助かりました。」



御津くん「水くさい事言うなや!迷惑や思てへんし!」



やすくん「そうそう、逆になんかあった時に後悔した無いからな!」



ゆうちゃんと全く同じセリフ・・・。



思わずゆうちゃんの方を見てたら、ゆうちゃんが爆笑しだしました。



御津くん「なになに?」



あき「それ、さっきゆうちゃんに全く一緒の事言われた・・・。」



4人で顔を見合わせて大爆笑になりました。



この一件から、私たちの距離はぐんと近くなりました。



でも、立ちはだかるのは『汐ちゃんの元カレ』っていうとてつもなく高い壁・・・。



どんなにゆうちゃんの事を『大好き』だと思っても、やっぱりゆうちゃんは『友達の元カレ』でした。



『もし自分が汐ちゃんの立場だとしたら、やっぱり元カレが友達と付き合うのはちょっと微妙な感覚だろうし、きっとこのままの距離感でいた方が良いんだ』



その想いは払しょくされる事無く、時は過ぎていきました。



でも、ハマキが来たら危ないからと、たーちゃんがいる時にもゆうちゃん達と一緒に下校するようになり、朝、自主練もあるので登校も一緒になる事も多くなり、どんどん距離は縮まるのに進むことは出来ない状況が辛くもありました。



ハマキが2週間くらい現れなくなった時点で聞いてみました。



あき「ゆうちゃん、ハマキ、もう来んと思うし、ボディーガード無理せんでも大丈夫やで?」



ゆうちゃん「ん?え~んや、どうせ同じ方向やから少しルート変えただけやし気にせんと送られとけ!」



笑顔でそう言ってくれるのは嬉しかったんですが、期待をしてしまう自分が嫌でした。



ゆうちゃんの優しさが嬉しくて辛い・・・。

どんどん好きになっていっちゃう・・・。



自分でも加速する気持ちをどうする事も出来ずにいました。



この頃からゆうちゃんの絡みは増えていく一方で、部活はもちろん、クラスの友達たちと遊ぶときは隣のクラスも合同が多かったのでゆうちゃんも来てたし、うちのクラスだけ集まるって聞いてた時も気づいたらゆうちゃんが居ました。



ムードメーカーでみんなに好かれるゆうちゃん。



そんな時、同じクラスの目野くんの幼馴染の木野くんが遊び仲間に加わりました。



木野くん「初めましてぇ!木野です!」



木野くんは中学を卒業して家業を継ぐために修行をしていました。

ちょっとヤンチャなヤンキーくんで、周りをパッと明るくするような雰囲気を持った人で、クラスの子たちとも自然となじんでいきました。



そして、ゆうちゃんともすごく仲良くなって、たまに2人で遊びに行ったりしてるみたいでした。



一緒に遊び出して3回目位の時に電話番号を聞かれ、当時はまだ携帯なんてなく、家電だったので『どうせかけてこないよね?』と思って教えたのに、2日に一回くらい電話をくれる位頻繁に電話をくれるようになってました。



木野くんは汐ちゃんと同中だったので、汐ちゃんの話題も出たりと、話題に尽きることはなく、話も上手だったので苦も無く電話が出来てましたが、少し気になる事もありました。



それは、『もしかして私の事好きなんかな?』なんて思っちゃったんです。

でも、ちょいデブだし、顔も可愛くも無いのにそれはナイナイ!って自分でノリツッコミしてました。



この日も木野くんからは電話がかかってました。



木野くん「あき?今何してんの?」



あき「え~?部屋でテレビ見てんで?」



木野くん「さすがに今から外出て来るとか無理やんな?」



あき「え?ムリムリ、うち親厳しいねん。」



木野くん「ちょっとだけでも無理?」



あき「いきなりどしたん?」



木野くん「今、あきん家の外におんねん。」



はぁ?9時やで?と思いつつも、せっかく来てくれてるならちょっとだけ出て行こうと思い、親の所に行きました。

でも、正攻法でせめても無理なのはわかってるので



あき「おかん、どうしてもコーラ飲みたいねんけどある?」



炭酸系はビールしか置いてない家なの分かってて聞きました(笑)



おかん「ある訳ないやん、あんたこんな時間にコーラや飲んだらまた太るで?」



あき「どうしても一口だけでも飲みたなってもうてんもん!そこの自販機行ってきていい?」



おかん「もう、しゃーないな、気ぃ付けて行きや?」



私は言い出したら聞かん性格なので、こういう事が年に数回ありましたので、怪しまれずに抜け出すことが出来ました。



あき「木野くん、お待たせ。でも、自販機まで歩きながらでもええ?」



木野くん「ゴメンな、急に。」



あき「いや、大丈夫やで。」



世間話をしながら自販機まで歩きました。



『なんやろ?世間話しに来たん?何かあったんかな?』



もうすぐ家に着くって時になって、やっと木野くんから話がありました。



木野くん「あき!ホンマ急にゴメン!でもどうしても言いたかってん!」



あき「なにを?」



キョトンとした私に向かって木野くんは言いました。



木野くん「あき、俺あきの事好きや!俺と付き合ってくれ!」



もってたコーラを落とす程度にはビックリしました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る