第8話
この日もいつも通り楽しく部活を終え帰る時間になりました。
この日はたーちゃんが風邪で学校を休んでて、高校に入ってから初めてのひとりで下校でした。
『やっぱたーちゃんがおらんとつまらんなぁ・・・さっさと帰ろ』
いつも通りチャリで裏門を出て、定番ルートで帰宅を始めました。
チャリ通学に変えてから1週間位は、ハマキが校門で待ち伏せていたってなおやさんちゃんが教えてくれてましたが、この1週間ほど、ハマキとは遭遇していなかったので、もうあきらめてくれただろうと安心していました。
でも、念のためにひとりで通学路を遠回りして帰っていた時の事です。
プップー プップップップップー
あのクラクションが聞こえてきました。
聞こえなかったフリをして、そのまま全力疾走でチャリを漕ぎました。
それに腹を立てたハマキが車を幅寄せして来ました。
あき「なんしてんねん!やめぇや!」
ハマキ「とりあえず止まってぇや」
あき「イヤや!なんも話すこと無いねん!」
ハマキ「あきちゃんに無くても俺にあんねんて!」
そう言いながらどんどん幅寄せしてきて、田んぼに落ちそうになって、止まらざるを得なくなりました。
ハマキ「お試しでもええから付き合お!な!」
あき「イヤやて!」
強引に自転車を出そうとした瞬間、チャリのハンドルを掴まれました。
あき「なんすんねん!放せや!」
ハマキ「とりあえずお試しで付き合ってから決めたらええやん?」
あき「イヤや言うてんねん!放せ!!」
そう叫んだ瞬間です。
ゆうちゃん「おい!おっさん!なんしてんねん!」
・・・ゆうちゃんでした。
あき「ゆうちゃん・・・」
ゆうちゃんを見た瞬間に泣きそうになった私の顔を見て速攻飛んできてくれました。
『今まで通学路で会った事無いのに・・・。同じルートで通ってたん?』
不思議に思いつつも『助かった』とちょっと安心しました。
ハマキ「ちょっとこの子と話があるだけやからほっといて先いけや!」
ゆうちゃん「はぁ?何言うてんねん!コイツ話したくなさそうやんけ!」
ハマキ「ええから先いけ言うてんねん!」
ゆうちゃん「お前コイツのなんやねん!?あき、お前、この男と話したいか?」
声が出ずに、必死で首を横に振り続けました。
御津くんとやすくんが遅れてたどりつきました。
御津くん「コイツ、うちの部活の奴やけど、おっさん何の用や?」
ハマキ「いや、ちょっと話があるだけやねん!な!あきちゃん!」
ゆうちゃん「あき、お前は話あんのか?」
もちろん無いので首を横に振りました。
ゆうちゃん「無い言うてるやん。さっさとどっかいけや!それに、お前があきの名前呼ぶな!」
ゆうちゃんが私を後ろにグイっと引っ張ってくれました。
自転車は倒れましたが、そんなのもうどうでも良かったです。
ハマキ「なんやねん!お前関係ないやろが!」
ゆうちゃん「コイツに話があんねやったらここで話したらええやろが!俺らも同席するからな!」
ハマキ「いや、それは・・・」
御津くん「せや!コイツ、どこにも連れて行かせへんぞ!」
御津くんとやすくんも加勢してくれ、3対1と分が悪いのを感じ取ったハマキは、仕方なく車でその場から走り去りました。
ゆうちゃん「大丈夫か?今日たーちゃん休みやから、心配になって追いかけてきて良かったわ。」
『え?わざわざ追いかけて来てくれたん?なんで?』
あき「ゆうちゃん達にはハマキの事言うてへんかったのに、なんで?」
ゆうちゃん「いや・・・。前に部室でなおと話してるん聞こえてたんや。変な奴に付きまとわれてるって言うてたから・・・。」
あき「そうなんや、ありがと・・・。」
涙が溢れてきました。
やすくん「アイツがいつも校門とか駅とかで待ち伏せてる奴やな?一応駅付近チェックしてくるから、あきはゆうとゆっくり来たらエエわ、もしアイツおったら引き返してくるから!」
やすくんと御津くんで先に駅方面を確認に行ってくれました。
御津くんとやすくんが走り去った後に、ゆうちゃんがチャリを起こしてくれました。
ゆうちゃん「チャリ、持てるか?」
頷いてチャリを受け取り、2人でゆっくり歩きだしてすぐ言われました。
ゆうちゃん「アホやな、怖かったんやったらなんで相談せぇへんかってん?」
片手はチャリのハンドル、もう片手で私の頭をポンポンと撫でながら優しく声をかけてくれました。
あき「・・・せやかて、ゆうちゃん・・・、部活で一緒言うだけやのに迷惑かけられへんやん。」
ゆうちゃん「あほー。部活で一緒やし、・・・ツレやろ?」
ツレって言葉にちょっと嬉しく、でもほんのちょっとだけ寂しく・・・。
でも、来てくれただけで本当にうれしくって。
ゆうちゃん「めちゃ震えてるやん。」
あき「あ、・・・大丈夫・・・。」
強がって大丈夫と言いましたが、本当は身体の奥底から震えていました。
ゆうちゃん「触っても大丈夫か?」
あき「え?・・・うん?」
チャリを停めて頭をポンポンしながら、そっと抱き締めてくれました。
ゆうちゃん「俺ら部活の仲間やろ?迷惑や思えへんよ、逆に何かあった時に後悔せなあかんほうが迷惑!・・・怖かったやろ、泣いたらええよ。」
あき「・・・うん、ありがと・・・」
ゆうちゃん「まぁ、でも、なんもされんかって良かったわ!・・・何もされてないんやろ?」
あき「・・・」
あき「・・・」
ゆうちゃん「・・・なんかされたんか?」
あき「えっと、今日は大丈夫。」
ゆうちゃん「今日はって・・・、前は?なんかされたんか?」
あき「不意打ちにキスされて股間触らせられそうになった・・・」
ゆうちゃん「アイツ!何考えてんねん!」
あき「でも平気!ありがとう。助けてくれて。ごめんな、迷惑かけて」
やっとちょっとだけ笑顔でゆうちゃんの顔をみれました。
ゆうちゃん「ムリして笑うな!それに迷惑ちゃうわ!アホ!もっと早よ相談してくれてたら、キスも避けられてたんちゃうんか!あんなんにファーストキスとられたん悔しいやろ!」
あき「・・・いや、ファーストキスではないから大丈夫・・・。」
ゆうちゃん「・・・・・・なんや!ファーストキスちゃうんかい!・・・まあ、あんなんとファーストキスにならへんで良かったなw」
苦笑いのゆうちゃん。
混乱してたからファーストキスじゃないっての、自爆で告白してしまいました・・・。
でも、この日から、あききちの中ではゆうちゃんがヒーローになり、どんどん気持ちが膨らんで行きました。
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