第4話




大好きな友達と、私の好きな男の子ゆうちゃんが付き合う・・・。



複雑な気持ちもありましたが、何より2人に幸せになってほしいと思ってました。



ゆうちゃんの笑った顔が見たかったから・・・。



他の部活に入っていた汐ちゃんは、私たちが部活終わるまで待ってて、ゆうちゃんと駅まで一緒に帰っていました。



私も電車通学だったので、一緒の部活に入った幼馴染のたーちゃんと少し離れて歩いてました。



たーちゃん「なぁ、あき、気のせいやったらええねんけど・・・」



あき「え?」



たーちゃん「あき、ゆうちゃん好きなんちゃうの・・・?」



あき「・・・やっぱたーちゃんにはバレてたか・・・でもええねん、2人が幸せ層やから。ま、諦めるのにちょっと時間かかりそうやけどな。」



そう答えると、たーちゃんはギュッと抱きしめてくれました。



たーちゃん「あほやなぁ・・・。まだお互いの事知り切ってない時に付き合い出してんから、早い者勝ちやったかもしれんのに・・・。」



あき「でも、おんなじ部活やからさ、フラれて気まずくなるんも嫌やから・・・。」



たーちゃん「せやな・・・。そう言われたらせやわなぁ・・・。」



2人でずっと前を歩くゆうちゃんと汐ちゃんの背中を見ながら歩きました。




『大丈夫、大丈夫。2人の幸せを笑って見守れる!』そう自分に言い聞かせて毎日を過ごしていたのに・・・。



その1週間後くらいに、汐ちゃんから語られた言葉は・・・。



汐ちゃん「あき!うちゆうちゃんと別れたよ!」



・・・・・・・・え?

一瞬で目の前が真っ白になりました。



あき「え?どういう事?」



汐ちゃん「だから~、ゆうちゃんと別れたんやって。」



平然とした顔で話す汐ちゃん・・・。



『なんでそんな平然と話せるん?うちがどんな気持ちで2人を応援しようとしてたかわかってよ!』



汐ちゃんは私の気持なんか知らないんだから仕方がないのに、理不尽な怒りがこみ上げてきました。



あき「別れたって・・・、1週間位しかたってなくない?喧嘩でもしたん?」



汐ちゃん「いや、でもな、毎日一緒に帰るだけやねんもん。」



あき「そりゃ先週は試合あったからデートも出来へんかったかもしれんけど、今週とかは時間取れたかもしれんやん?」



汐ちゃん「そうやけど・・・。ゆうちゃん何もしてこんのやもん。」



え?

聞き間違い?

『何もしてこん』って何?

付き合って1週間やんな?



あき「まだ1週間くらいじゃそりゃ手はだせへんやろ?」



汐ちゃん「え~?でも、1週間もあったら普通キスくらいはするやん?」



え?

そうなん?



私、初カレとのキス、1カ月位してからやったと思うねんけど・・・。



あき「汐ちゃんの事大事に思ってるからこそ手出しに慎重になるんやないの?」



汐ちゃん「う~ん・・・。そういうもんかなぁ?」



『汐ちゃん、ゆうちゃんが初カレやったはずなのに、積極的やな・・・。』と、ちょっとビックリしました。



あき「ペースはそれぞれやと思うけど、うちハツカレとのキス1カ月位してからやったし、大体そんなもんやと思うよ?」



何とかゆうちゃんと戻ってほしい、ゆうちゃんが傷つかんようにしたい・・・。

そう思ったのに・・・。



汐ちゃん「う~ん・・・。でもなぁ、もう好きな人出来てん!」



え・・・?

別れてすぐに?

確か昨日もゆうちゃんと一緒に帰ってたよな?

という事は、別れたの遅くても昨日のはず?



なんでそんなことになったの?



・・・でも、まだ付き合いが浅い汐ちゃんには攻め口調では言いづらくて・・・。



あき「好きな人?」



汐ちゃん「うん!同じ部活のセンパイ!」



汐ちゃんは卓球部でした。



汐ちゃん「多分、センパイも何となくうちの事気にしてくれてるみたいやから、これから押せ押せで行くんや」




あき「そっか・・・」



もうそれしか言葉が出ませんでした。



気になってゆうちゃんの方を見ると、ゆうちゃんもそんなに気にしてる風ではなく、男友達とわちゃわちゃ遊んでたのだけが救いでした。



『何のために諦めたんやろう・・・』



自分の気持ちをおし殺してまで2人の応援をしようとしてたのに・・・。



でも、ゆうちゃんは友達の元カレ・・・。



以前みたいに教室で軽く絡める存在では無くなってしまいました。



部室ではもちろん今まで通り、仲間として接する事は出来るけど、それでもなんかモヤモヤしてしまう。



おし込めたはずの『好き』って気持ちがまた顔を出してしまっていました。





そしてさらに数日後




汐ちゃん「あ~き!」



いきなり汐ちゃんが珍しく私のクラスに遊びに来ました。



あき「どしたん?珍しいな。」



いきなり汐ちゃんに抱きつかれました。



汐ちゃん「センパイとお付き合いする事になってん!昨日な告白したらOKしてくれて、そのまま最後まで行っちゃった!」



え?

最後までって・・・そういう事よな・・・?



汐ちゃんが求めてたスピード感のあるお付き合いが始まったようで、ふとベランダに目をやると、こちらを見てたゆうちゃん・・・。



『聞かれた?傷ついた?』



多分聞こえていたと思います。



笑ってた顔が少しだけ曇って、自分の教室の方に歩いて行きました。




・・・あの時、『ゆうちゃんを傷つけるな』って汐ちゃんに言えていたら、ゆうちゃんのあんな顔見なくて済んだのかな?



友情を大切にするあまり、大切なヒトを守れなかった・・・。


大好きな人のあんな顔、見たくはなかった・・・。



でも、その顔をさせてしまったのは私です。



ゆうちゃんゴメン。



心の中でどんなに謝っても、ゆうちゃんには届かない・・・。

『誰も傷つかない恋愛は無い』と分かっていても、彼だけは傷つけないで・・・。



そう願ってしまう自分がいました・・・。



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