4Thワールドカンパニーの正体

第61話 探偵 敵の正体を推理

 鯛や鮃の踊りじゃあねえが、ここから見る海の中ってのも不思議なものだ。


 俺達は横浜大桟橋での乱闘のあと、乙姫の船に乗っている。妲己が再度現れ、蚩尤が敵に与した以上、加芽崎や俺の安全を考えてのことだ。乱闘のあと万華が乙姫に話し、上を通して話しをつけたらしい。


 そんな事を考えながら、外を眺めていると、等身大の紙の人型が近づいてきて、会議室に来るように言ってきた。顔に当たる部分に『蛸』と文字が書いてあるだけで口らしい部分はないが、ハッキリとした日本語だ。


 俺は、蛸の船員に案内されるまま、車椅子のような乗り物で艦内を移動しする。蛸の船員は、移動がてら途中の部屋を見せてくれた。


 大桟橋で見た時、かなり巨大な船と思ったが、船内はどう見ても、その大きさ以上に広い。日本庭園があるかと思うと、ヨーロッパの宮殿の一部を模した場所もある。浦島太郎が、何年も帰らなかった理由が分かる気がする。


 そして、大会議室と書かれたドアを開けると、そこは草原だった。花が咲き乱れ、海中のはずだが、太陽が明るく照らしている。その草原の真ん中あたりに小高い丘があり、そこに、何人か居るようだ。


   ◇ ◇ ◇


「権さん、どや、この船。結構広いやろ」


 何故か万華は腕を組んで自慢して見せた。


 すると乙姫は紅茶を啜った後、澄ました顔で、少し目を細くし、

「お姉様、この戦艦ドラゴンズパレスは常世の所属艦どす。お姉様の持ち物ような言い方は止めておくれやす」

「ほんな堅いこと言わんでもええやん。ウチら蓬莱かて、この船の建造に助力したやろ」

「船首の龍だけやないですか。偉そうに言わんといてください」

「その龍が重要なんやろが。もし『うなぎ』やったら型つかんやろ。竜宮の代わりにウナギの寝床城とするんか?」

「お姉様、お姉様のお話は、いっつも面白いどすけど、品があらしまへんなあ。それに、ここに集まって頂いたのは、お姉様の漫談を聞くためあらへんどす」

と言った後、優雅に紅茶を啜った。


 万華は、何故か乙姫には弱いらしい。相手が湘賢なら決闘が始まっているだろうに。


   ◇ ◇ ◇


「妲己の言葉を整理しよう」


 俺は、万華が来る前に妲己が言った言葉を皆に聞かせた。


『あのお方とは、旧知の仲』


 これがキーワードだろう。妲己がこの第三世界に来たのは、易姓革命のころ。万華と姜子牙に成敗された妲己は九尾の狐とは分離され、妲己だけが別の平行世界に送られた。つまり、易姓革命の妲己とその後に登場する九尾の狐とは違うものと言う事だ。


 すると、易姓革命後の第三世界の人物と言う可能性は極めて低い。


「易姓革命の頃で、妲己と知り合いと言うと、やはり紂王かな」

「紂王は、人間離れした能力の持ち主やったが普通の人やったで。そやから、妲己に籠絡されたんや」


 なるほど、妲己の日記に転生者の俺には籠絡が効かないと書いてあったと万華が教えてくれたっけな。


「妲己がこの第三世界に来る前に見知った奴と言う事はないか? 」

「そうやな、元々、妲己も転生者やったことは話したやろ。狐に転生する前の記憶はのうなったことは、当時、一灯仙人から聞いたで」


「つまり、九尾の狐の前の旧知仲はなさそうだな。なら、第三世界から追放後、異世界のガガットみたいな魔王と知り合ったと言うのはどうだ? 」

「全く無いとは言えへんけど、魔王もどきでは、蓬莱石を知らんやろ」

「蓬莱のルートの仕組み、蓬莱石を知っているのは、仙人だけなのか? 」

「せや、仙人、天女しか知らんはずや。と言うより、蓬莱石は、当時の闡教の流れをくむ蓬莱の仙人にしか、使かえへん」


「蓬莱の仙人で、誰か心当たりは居ないのか? その悪事を働きそうな奴ってことでだ。別に蓬莱そのものを非難しているわけではないぞ」


 一応、仲間意識もあるだろう。万華が所属している蓬莱の仙人を疑いたくはないが、可能性は探る必要がある。


「そんなの、仰山おって分からへん」


 えー、悪いことを考える仙人が多すぎるって、どういう組織なのだ。


「大体が、自信過剰になる奴が多いで。その際たる者が、湘賢や」


 ん? その路線か。湘賢に同じ質問をすると、『何でも暴力で訴える万華や』と答えるだろうな。


 まあ、それはさて置き、


 ・異世界の魔王の可能性は少ない

 ・易姓革命のころの人物

 ・妲己と旧知の仲

 ・蓬莱の関係者


「権さん、蚩尤を動かしたやんか。そやから、小物やってことは無いと思うで」


 なるほど。それなりの実力者か。しかし闡教と妲己は、当時敵味方だったはずだ。

 すると ・・・・

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