後日談 <閑話>
魔王を倒してから、一週間、新聞、ニュース、WEBにもアラキタ倉庫の事は、全く載っていない。俺達が告発したとしても、恐らく証拠は残っていないだろう。犠牲者の事を思うと心が沈む。
「権さん、これもや」
万華が、俺の暗い思考を晴らすかように明るい声で話しかけてきた。
今日は万華とナリーナのショッピングにつき合わされている。洋服屋で試着して、小物を覗いて、2人で喋って楽しそうだ。俺は荷物持ち件、専属ドライバーになっているところ。店を数件回り、既に4袋を持たされている。
そう言えば、和子にも、ショッピング、つきあったっけな。俺を引っ張って、何時も笑ってた。
「ところで、万華、お前、変幻自在なのに何で洋服を買うんだ?」
どんな人間にも、どんな服装にも
「権さん、乙女心が分かってへんな。こうやってナリーナちゃんと話ながら色々見て、買うのが楽しんやで」
と4000歳の乙女が宣わりました。
そして、ちょっと小声になって、
「ウチは、
ああ、なるほど。あの
「権さん、なにをニヤついとんねん。
ナリーナは笑って頷いていた。
「ほな、次の店、行くで」
と万華が先頭きって街を歩いて行った。
ブーーーーーン、ブルブルブルブルブルブル
「ギルマス、ギルマスではないか。こんな所でクエストか?」
知った声がしてきたかと思えば、原付バイクに乗った勇者だ。バイクの後ろを見ると『お手前館』。流行の配達パートナーだ。
「俺は、万華とナリーナさんの付き合い。お前は配達か?」
「そうだ。ギルマスのクエストがないときは、こうやって配達の仕事を請け負っておるのだ。勤労は良いことだとコンシェルジュに勧められてな」
異世界から来た勇者が配達パートナーか。元の世界なら、盛大な凱旋パレードがあって王侯貴族のような暮らしになったかも知れねぇな。こっちじゃ、新聞にも載らないってのは気の毒なことだ。
ところで、勇者と聖女は、いつ元の世界に帰るのだろうか。それを考えると、ちょっと寂しくもある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます