第6話-2 万華の家宅捜査
上坂京子の家はここやな。
ピーンポーン
「上坂さん、いますか? 渋谷警察署のものです」
聞き耳を立てたが、人がいる気配はない。この鍵なら、難しくないな。
ガチャ
部屋の中は、荒らされている形跡無し。と言うより、生活感が全く無いやん。
ん? 床に光る物。これは黄金色の毛。
幻術やな。
ウチは、両手人差し指と親指を胸の前で合わせ、幻術を解いた。
「うぇ、やっぱりな」
そこは、床から壁、天井まで血がべったりとついとる。奥の部屋には、パソコンが一台。どれ、ちょっと拝借。
——— 電源ONの音 ———
パスワード、パスワード。幻術を解いたとき出てきた血で壁に書いた文字。これやな。
ピンポン。
この文書は何だ? …… なになに?
——————
2021年7月14日 こちらに戻って来て、殺生石近くで行き倒れた女の体を手に入れてから6日が経った。この女の記憶の断片から、この家にたどり着く。PCなる物を発見。使い方も女の記憶からすぐに分かった。餌が必要だ。金も必要だ。この世界には紂王のような権力者がいない。
2021年10月5日 妾の体験談を少し変えてWEB投降したら、テレビなる物の取材を受ける。大衆に合わせて、ちょっと気の利いたことを言えば『良いね』が増えた。この時代の人間は紂王より簡単だ。
2021年12月21日 サイン会なる物をやってみた。握手を求められるので、めぼしい若い男に籠絡の術をかけておく。これで食料の確保はできた。
2024年4月10日 街で偶然、転生者を見つけた。職業は探偵。だいぶん歳を取っていたが、この際仕方ない。こいつの事を調べよう。
2024年10月8日 こいつの出生日が分かった。20250223には、ふふふ、涎がでる。
2025年2月10日 転生者に近づくために偽の仕事を依頼。こいつには籠絡が効かない。
2025年2月13日 馬鹿が転生者を殺してしまった。頭にきたので殺してやった。獄中で殺すことなど妾には児戯に等しい。
2025年2月14日 転生者が生きていた。涎がでる。
——————
「ほー、それに権さんの写真か」
転移・転生の仕組みを知っとるから普通の魔物やないと思っとたんやけど、やっぱりあいつか。しかしどうやって、ここ第三平行世界に戻ってこれたんや?
それから、20250223。誕生日やろな。やばいやん。
権さん、難儀な奴に目を付けられたぜ。
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