第5話-3 万華の領巾

「ただいま。万華やで」

「おかえり」


 ウチが居間に行くと御園婆さんが、テレビを食い入る様に見て、手を合わせとった。


「婆さん、何を拝んどるん?」

「ほら、このテレビ、天女の羽衣だって。最近変な事件ばかりでしょ。良い世の中になりますようにって」

と、また、手を合わせて拝んだ。


 テレビには、フワフワと飛んでキラキラ光っとる長い布が映り、急に小さくなって消える動画が繰り返し再生されとった。下には『弁天様の羽衣か? 』とテロップが入っとる。


 あいつや、間違いない。あいつ、何処をほっつき回っとるのや。


「婆さん、この領巾ひれの画像、何処で撮影されたんかな」

「あら、万華ちゃん、領巾ひれなんて、よく知っているわね」

「ネットで見たことあんねん」

「今は何でもパソコンね。ああ、場所ね。ええと場所は何処だったかしら」


 テレビでは、領巾ひれの画像が小さくなり、専門家と称するオヤジがキャスターに向かって喋り始めよった。


「あの羽衣のようにみえる物は、大気中のゴミや水蒸気に光りが当たり、反射して発光しているようにみえる物です。急に消えるのは風で流されたのでしょう。非常に珍しいですが気象現象です」

「そうですか。箱根や貴船神社付近でも同じような目撃情報があるようですね。季節性の物でしょうか。以上、江ノ島上空の画像でした」


 良かったな。オヤジよ。そこにあいつが居なくて。あいつ前でゴミだなんて言ったら、締め殺されるで。


 さて、箱根と江ノ島それに貴船神社か。ははーん、あいつ龍神さん巡りをしよるな。


 せやけど、あれを回収したら、この世界ともおさらばなんかなぁ。

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