第18話 音楽のような風-最終話


 雨上がりの緑地公園はひんやりとした空気が丘を包んでいた。こっちこっちとおさむが叫ぶ方に、萌は賀津美らと一緒に駆け寄った。おさむは、ほらと言いながら窪地を指さし、「あの辺はミミズが多いんだ」と言った。

おさむの指示にしたがって萌も土を掘った。嬌声を上げながらミミズをつまみ上げると、バケツに放り込んだ。三人ががりで頑張っても、おさむの半分も獲れなかった。

「すごいね、山口君」

「へへ、慣れてるから」

「でも、毎日大変ね」

「そう、ミミズの養殖の方法でも考えないと、おさむ君がダウンしたら、モグラもダウンしちゃう」

 おさむはニコニコしながら、泥だらけの手で汗を拭った。顔中泥だらけにして、おさむはまだ笑っている。それを見てみんなから笑い声が漏れた。

 風が一閃吹いた。振り返ると、それは、森の木々をざわめかせながら通り過ぎていった。その瞬間、萌は空を見上げた。森の上に広がる空には、雲ひとつ見当たらず、突き抜けるような青空が高くそびえていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

グリーンスクール - 音楽のような風 辻澤 あきら @AkiLaTsuJi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ