99、作戦変更!
私が突き落とされた時、誰もリリーナを捕まえようとしなかった。
リリーナが、何をしても捕まらないように人を操る能力を持っているのだとしたら、あの時のことも説明できる。ーー書き換えられたことは別として。
「あ、でも……」
ふと思い出して、私はガウェインに尋ねた。
「夜会でガウェイン様はリリーナ様をエスコートしていましたよね? 近寄ったら忘れてしまうのに、エスコートは断れなかったんですか?」
私がそう尋ねると、ガウェインは嫌悪感をたっぷり含んだ表情で答えた。
「それもリリーナが持つ不気味な能力の一つだ。何故か、無意識にリリーナの都合のいいように動いちまう時がある。エスコートをするつもりはなかったのに、夜会が始まったら自然と傍にいた。自分でも薄気味悪い」
それって……リリーナは人の行動まで操れるってこと?
聞けば聞くほど、リリーナがチートっぽいんだけど。
「リリーナはサイタマーには近づいていなかったし、ヒョードルとは兄妹なのだから、レイシール嬢が狙われることはないと思っていた。油断していた。すまない」
ガウェインに頭を下げられて、私は面食らった。
いや、そんな……ていうか、リリーナはジェンスには興味なかったのか。こんなにいい男なのに……ぶつぶつ。
「リリーナが何かをしても本人を捕まえることは出来ないし、何かした証拠を掴むことも出来ていない。だから、野放しのままだ。そのせいであんな目に遭わせちまって……レイシール嬢が火傷一つでも負っていたら、ヒョードルにもサイタマーにも顔向け出来ないところだった」
ガウェインが深く息を吐き出した。
「レイシーに手を出した奴は、誰であろうと許さない」
それまで黙っていたジェンスが低い声で言った。
あれ? ジェンス、怒ってる?
「これまで刺激しないように気をつけていたらなんの進展もなかった。だったら、今度は刺激しまくってやろうじゃねぇか」
「はい?」
「そうだ。刺激しまくって暴走すれば、襤褸を出すかもしれないしな」
ジェンスの言葉にお兄様も同意する。
「という訳で、今日より作戦を変更し、四大公爵家の嫡男の恋愛を解禁する! 全員、思う存分、気になる娘を口説け!!」
「「「おおおおう!」」」
アルベルトの号令に、ジェンスを除く他三人が勝ち鬨のような声を上げた。
えー?
さてはお前ら、めっちゃストレス溜まってたな?
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