77、失格悪役令嬢





 ティアナとルイスも誘って、ルイスが連れてきたデイビッドも含めて六人で出店を出すことにした。


 公爵令嬢と侯爵令嬢と侯爵令息と伯爵令息に囲まれた新潟くんが「ひぃぃ」と青ざめていたけれど。


 そういえば、ルイス・ミヤッギが伯爵令息でデイビッド・モリアーオが侯爵令息なのよね。でも、普段はどっちかっていうとデイビッドがルイスの世話を焼いているように見えるけれど。


 ちなみに新潟くん家は男爵家らしい。


「では、何を売り物にするか考えましょう」

「普通に、焼き菓子でいいんじゃないのか」


 私が話し合いを始めると、ルイスがぼそっと言う。


「大抵は、クッキーやマフィンなどですわね」


 ティアナも言う通り、出店で出されるのは容易に作れて日持ちする焼き菓子ばかりだ。でも、それだと他の店と同じになってしまって目立たない。一位をとるためには、他とは違うものを作らないと。


「では、クッキーでいいんじゃないでしょうか」


 青ざめたままの新潟くんが言う。なんか早くこの場から去りたいみたいな顔をしている。


「何言ってんのよ! それじゃあ他のお店と一緒じゃない!」


 逃げ出したそうな新潟くんに、ニチカが食ってかかった。


「一位をとるためには他と一緒じゃダメなのよ! それに出店でクッキーって何よ!? 出店と言ったらたこ焼きに焼きそばに焼き鳥でしょ!! 憧れのお祭りの出店!!」


 今回ばかりは全面的にニチカに同意する。


「それに、せっかくの新潟なんだから、こういう機会に米をアピールしないでどうするのよ!? 屋台でばばーんと米をアピールすれば、みんな新潟の米を買ってくれてウハウハでしょ!」


 おお。ニチカがまともなことを言っている。ちょっと感動。


「アピールって言っても、出店で米料理なんか出したって、誰も食べてくれないよ……」


 ニチカの意見に、新潟くんことケイレブは顔を曇らせた。


 おおい! 貴様それでも新潟か! 米料理なんか、とは何事だ! 故郷のコシヒカリが泣いてるぞ!


「アンタ、新潟のくせに何言ってんのよ!」


 ニチカも怒っている。何かしら。今回はやたらとニチカと気が合うわ。ヒロインと気が合う悪役令嬢って、悪役令嬢失格よね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る