76、ヒロイン来襲
そんなふうにちょっと心配していたら、放課後にニチカの方から殴り込んできたわ。
一人ではなく、ちょっと地味な感じの男子を引きずって現れたニチカは、開口一番こう言った。
「アンタ、料理できるんでしょ? 悪役令嬢のくせに!」
はい。悪役令嬢ですけども、料理は出来ますよ。
「遠足の時のお弁当、アンタが作ったんでしょ? じゃあ、私達に協力しなさい!」
堂々と命じてくるなぁ。周囲のクラスメイトがハラハラとこっち見てるけど、気にならないのか。一応、お前は平民で私は公爵令嬢ですから、私が怒ればただじゃすまないんだぞ。
ほら、お前が連れてきた男子が真っ青になって震えてるじゃないか、かわいそうに。
ていうか、お前は料理できないのか? そういえば、遠足の時のお弁当もお店のご主人に作ってもらってたな。
「私とニチカさんで出店をやる、ということかしら?」
笑みを浮かべて尋ねると、ニチカは後ろで震えていた男子を捕まえてぐいっと前に突き出してきた。
「この子も一緒よ! 同じクラスなの!」
「あわわ……」
私を目の前にして、男子は泡吹いて倒れんばかりだ。
「はじめまして。レイシール・ホーカイドです」
初対面なので名乗ってみると、男子はガクガクと震えながら自らも名乗った。
「ぼ、ぼぼ僕は、その、ケイレブ・ニイガッタと申します……」
おお。新潟発見。よろしく新潟。
「ほ、ホーカイド様にご無礼をするつもりは……お、お許しくださいっ」
「かまいませんよ。ニチカさんは、ニイガッタ樣と一緒に出店をやるのですか?」
「だって、一位になったグループのメンバーが学食無料になるんだもん。私と新潟……ニイガッタ君は絶対に一位をとりたいの! そのためには悪役令嬢でも利用するわよ!」
その心意気は嫌いじゃない。あと、新潟って言いそうになるのわかるわ。
「も、申し訳ありません! その、恥ずかしながら我が家は経済状態が良くなくて……このままでは下の弟達が学園に入学できないかもしれなくて、それで、少しでも節約して弟達にお金を回したくて……」
新潟くんが震えながらもそう説明する。
経済的に余裕のない家では嫡男のみを学園に通わせて、その他の兄弟を働きに出すっていうのは珍しいことではない。
「でも、我が家では他の方々みたいに出店のために料理人を用意するようなことも出来ないので諦めていたら、ニチカが一緒にやろうと言ってくれて……あの、時々突拍子のないこと言い出しますが、普段は普通の子で……どうかご容赦ください」
なるほど。どうやら、ニチカはクラスではそれなりにうまくやっているようだ。
バイト先でも可愛がられているみたいだったし、たぶん、私や攻略対象のからまないところでは普通なんだろうなぁ。
「わかりました。私も協力させていただきますわ」
ヒロインには関わりたくないと思っていたけれど、攻略対象とイチャつくのよりも新潟くんの事情を優先させるあたり今のニチカは逆ハー目指しているヒロインのようには見えないし、一緒に出店をやるぐらいかまわないわ。
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