75、新たなイベント
レオナルドから話を聞いて以来、私は悩んでいた。
ニチカに、リリーナ・オッサカーに注意しろと告げるべきか否か。
こちらもまだ何もわかっていないのに、中途半端に警告して、妙な警戒心を抱かれるのも良くない。
それに、「転生者かもしれないから気をつけろ」と言うためには私自身も転生者であることを明かさなければならない。
別にニチカには言ってもいいような気はするのだが、出来れば、リリーナには知られたくない。
まあ、ゲームの設定がこれだけ変わっているのだから、向こうは既に私を疑っているだろうが。まだ、決定的な根拠はないはずだ。
そんな風に悩んだまま十月に突入した。北の領地ではそろそろ雪に備えはじめる時期だが、中央都ではまだまだ秋真っ盛りだ。
そんな秋真っ盛りに、新たなイベントが始まろうとしていた。
「では、収穫祭の準備を始める」
監督室に集まったメンバーを見渡して、アルベルトが告げる。
収穫祭。今年の実りに感謝し、来年の豊作を祈るイベントだ。毎年、十月の末に行われる。仮装はしないけれどハロウィンみたいなもんだ。
乙女ゲームのイベントなので、ちゃんと恋愛展開に至るような内容になっている。
えーと、収穫祭ではいくつかのグループに分かれて出店を出すのよね。んで、売り上げ一位のグループには賞品として一年間学食が無料になる。
平民のニチカは学食無料のために頑張って、攻略対象達はニチカのために頑張るってなわけよ。
出店と言っても、焼きそばとか焼き鳥ではなく焼き菓子がメインよ。貴族の子女だもんね。それも自分で作るのではなく料理人に作らせたものを売るんだけど、ニチカは自分でカボチャプリンを作るの。攻略対象達とイチャイチャしながら作ったそれが絶品で、見事一位に輝くってシナリオだったわ。そんで「貴方が励ましてくれたから頑張れたわー」「そんなの……お前だからだよ」「え……?(トキメキ)」的なシーンに繋がるのよね。キラキラ輝く黄金色の背景と紅葉をバックに見つめ合う二人。寒。
私が頭の中でゲームの内容を思い返していると、アルベルトが続けて言った。
「今回の収穫祭では三年と二年の監督生は出店に参加しないことにした。一年生の三人は自由にしてくれてかまわない」
おっと?
アルベルト達、参加しないの?
じゃあ、ニチカはどうすんだろ?
「薬の件があるから、二、三年は見回りに徹するんだろうな」
監督室から出た後で、ルイスがぼそっと言った。
そうか。口に入るものを出すイベントだから、万一のことがないように警戒するのか。
「私達はどうする?」
ティアナが尋ねてくる。
んー。せっかくのイベントだし、ティアナとルイスと一緒に出店をやるのも楽しいかもね。
んでも、ちょっとニチカのことが気になるな。攻略対象四人中三人が出店不参加だとすると、ニチカはどうするんだろう。
ぶっちゃけ、カボチャプリン作るのに攻略対象は四人も必要ないので、いなくても問題ない気はするけれど。
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