33、和洋折衷?





 昨日の今日でフレデリカ様のファンクラブが出来たらしい。さすが、乙女は仕事が早い。


 そして、私の目に狂いはなかった。やはりフレデリカ様はトップスターになれる逸材!


 周りの生徒達からも楽しい朗読会だったと褒めてもらって、私は機嫌よく「うふふー♪」と笑いながら廊下を歩いていた。


「ちょっと!」


 やだ。待ち伏せ?


「なんなのよ、あの朗読会はっ!?」


 んもー、せっかくいい気分だったのに。

 私は渋々ニチカに向き合った。


「ごきげんよう、ニチカさん。朗読会に、何かご意見がございまして?」


 うるせぇあっちいけ、という本音は包み隠して、にっこりと微笑む。ふっ、私も女優になったものね。


「なんで朗読会があんな劇になるのよ!? そのせいで私が途中参加できなかったじゃない!」


 するなよ。


「それになんであんな屈強なメンツに詩を読ませてるのよ!! あれじゃ完全な舞台とは言えないわ! いい? 次の機会があったら役者は全員女性とにするのよ! 宝塚のファンはごつい男の女神なんて求めていないのよ! ファンクラブの会報にも意見を載せておくからね!」


 お前も入ったんかい。

 フレデリカ様ってば罪な御方。


「次の公演までに改善しておきなさいよ!」


 ニチカは一方的に言い置いて去って行ってしまった。

 なんだかんだで彼女も楽しんだんじゃないの?

 すごいわ、フレデリカ様。


 次の公演の予定はないけれど、フレデリカ様の舞台ならまた観たいわね、確かに。

 いっそ、学園に歌劇団とか創ろうかしら?

 いいかもしれない。ちょっとワクワクしてきたわ。


 でも、フレデリカ様が役者になりたがっているわけじゃないんだから、先走っちゃいけないわよね。

 歌劇団については置いておいて、次のイベントはなんだったかなあ。


 あ、思い出した。立夏祭だ。


 立夏は旧暦の四月、太陽暦で五月初旬に当たる二十四節気だ。


 この学園は日本と同じ四月スタートだからね。

 このゲーム、中世ヨーロッパ風の世界でどうしてこうも和の要素を推してくるのかしら。


 まあ、とにかく。立夏祭はそれほど格式ばったものではなけれど一応は夜会となる。学園のダンスホールでパーティーだ。パーティーと言っても、ドレスは着用せずに制服で参加だ。ダンスの時間もなく、軽い食事を摘みながら談笑するだけなのだが、一つ重要な伝統がある。


 婚約者、もしくは恋仲の相手がいる者は、相手に花を贈るのだ。そして、貰った花を女子なら髪、男子なら胸元に飾る。


 つまり「相手がいますよ」アピールだ。

 相手がいる、いない、が一目でわかるので、相手のいない者は花の有無を目印に恋人探しが出来る。

 相手がいる者は周囲への牽制が出来るという訳だ。


 ゲーム内でレイシールの婚約者はアルベルトだったので、当然花を贈ったのよね。紫の花。

 ちなみに、恋人同士は普通花の色を揃えるのよ。

 花の色が違ったら意思の疎通が出来ていない=仲悪いんちゃう?ってなってしまうので。


 ええ。アルベルトの野郎はやらかしてくれましたわよ? ゲームのレイシールは金の髪に黄色い小さい花をつけて、全っ然目立っていなかった。


 くっそ、アルベルトの陰湿野郎め。


 思い出したら腹立ってきたー!



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