29、悪役令嬢のお時間
私が資料室に戻ってきた直後に、狩りに出ていたルイスとデイビッド、お手伝いしてくれたらしいテッドが戻ってきた。
「おい!なんのつもりだテメェら!」
「この縄をほどけ!」
「ふざけんな!俺をどうするつもりだ!」
「なんであのことを知っている……っ」
「……殺す!」
「レイシール嬢、「活きが良さそうな不良の弱みを握って連れてこい」ということだったからとりあえず連れてきたが、こんな柄の悪い連中を何に使うんだい?」
デイビッドが引きずってきた獲物を私の前に出して楽しそうに尋ねた。
「そうね。とりあえず、皆様のお名前が知りたいわ」
「では、一年から順に。
イバラッキ男爵家のジェイソン・イバラッキ。一年Bクラスだ。入学早々、寮の門限を破って真夜中まで街をうろついている不良だ。
こっちはCクラスのアーヴィン・ヤーマガッタ子爵令息。寮に酒を持ち込んで仲間と飲み交わしている」
「こっちの二人は二年生。
Aクラスのダニエル・トチギン子爵令息とDクラスのヴェリオ・グンマー伯爵令息。トチギン様はカツアゲの常習犯で、グンマー様は学園の図書室の本をこっそり街の質屋に売っている」
「あら、悪い子ね」
「三年Dクラスのグレアム・トクマシー男爵令息。成績優秀だが過去の試験問題を売ったりカンニングの手助けをしてたりする」
よりどりみどりの不良が揃った。
「よく調べたわね」
「いや、ホーカイド次期公爵様からの情報のおかげだ」
さすがお兄様。
「レイシール様、この方達を連れてきてどうするおつもりなのですか?」
「そうよ。こんな不良達に何をさせるの?」
マリヤとティアナが不良達に怯えながら尋ねてくる。
「さて、皆様」
私は五人の前に立った。
「悪事をばらされたくなければ、朗読会に協力していただきましょう」
私はにっこりと笑って彼らを見下ろした。
「なんだと?」
「朗読会だあ?」
「ふざけんなっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ不良達。活きが良くてよろしい。
「ふふふ……いい声ですわね。皆様」
「な、なんだテメェ……」
「うふふ……これからその声をたっぷり響かせていただきますわ……安心して、私に身を任せてくださいな……ふふふふふ」
「ひいっ!く、来るなっ!」
「なんなんだ、テメェ!」
「さあ、楽しい時間の始まりよ!ほーほっほっほ!」
私は悪役令嬢らしい高笑いを響かせたのだった。
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