第16話 彼女と一日のプラン
どうにか彼女への感想を絞り出してから、僕らは連れ立って自室を出た。目指すのは、たまに姉さんと一緒に言っていた近所の喫茶店だ。
朝食用のセットがやっているはずなので、久々にそれを食べたくなった次第である。
「……」
特に会話があるわけではないが、隣にいる彼女はどことなく楽しそうだ。普段は比較的表情に乏しい彼女なのだが、あくまで何となくだけど、この数日間でその雰囲気を読み取ることができるようになっていた。
「あ、ここだよ」
「昔ながらの喫茶店という感じで、とても良いですね」
彼女は分かった風に頷く。もしかしたら喫茶店が好きなのかもしれない。お店に入ると、店内に自然光が入り込んでおり、コーヒーの良い香りとともにとても落ち着く。
「あ、こんにちはー」
すっかり顔見知りの店員さんから声を掛けられる。
「こんにちは。二人です」
「はーい、それじゃあ奥のテーブル席どうぞ!」
その方に案内されて、比較的空いている店内を進み、一番端の席に僕らは座る。
「注文決まったらお呼びくださーい」
そういえば、ここの店員さんの制服は紺色のブラウスに黒のロングスカート。どことなくソフィアさんのいつもの服装に似ている。ちらりと彼女の方を見てみるが、特に気にした様子もなくメニューをめくっていた。てっきり、メイド服が大好きな彼女なら、ここの店員さんの服装に興味を持つかと思ったが、あてが外れたようだ。
「あ、私はこのAセットにします」
Aセットはスクランブルエッグとチーズのサンドイッチにサラダと飲み物が一緒になったものだ。
「あー、僕もそれにしようかな。飲み物はホットのレギュラーでいい?」
「……はい。ホットコーヒーにします」
彼女はあまりコーヒーを飲んでいる印象はなかったが、いける口だったようだ。ちなみに普段、夕食後には紅茶や緑茶を良く淹れてくれる。
「ところで、今日、購入するものは決まっているの?」
ソフィアさんに話を振ると、彼女は小さな茶皮のショルダーバッグから折りたたんだ紙を取り出す。それを机に広げて見せてくれた。
「おお……結構あるね」
「はい。色々リストアップしていたら、こんな感じになってしまって」
几帳面な美しい字が、A4の紙にびっしりと並んでいる。例えばマグカップだったり、ボディソープだったり(そういえば家のやつは切れかかっていた)、細々したものから大きなものまで色々だ。
「一番の大物は布団かな」
「そうですね。これは初めに回って、もし可能なら当日配達してもらいたいと思っています」
それからそれから、と彼女はあまり表情を変えないまま今日一日のプランをつらつると述べてくれる。彼女の表情を見なかったとしても、楽しそうなのは明らかだった。
うん、日頃の感謝も込めて、彼女に今日一日付き合おう。
まずは、運ばれてきた朝食を彼女と楽しむことから始めよう。
なお、彼女はコーヒーを恐る恐る飲んで、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。……無理して飲む必要はないんじゃないだろうか。
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