第41話 午後の授業

 出雲と愛理は地下1階へと移動をすると、ワンフロア全体が食堂となっているためにその広さに驚いていた。

 食券を購入して、その食券の料理を作っている受け取りカウンターにいる人に渡すことで、対応する料理がもらえることとなっている。


「凄い広い! ワンフロア全部が食堂だ! 職員の人が沢山いる!」

「魔法騎士団本部なんだから、当たり前でしょ」


 愛理は目を輝かせている出雲を尻目に、食券購入機で食べたい料理を探していた。

 愛理は自身の背丈ほどある細長い食券購入機を見て、口を開けて驚いてしまう。


「凄いわ! 色々な国の料理があるわ! これも!? これもあるの!? どうしてこれも作れるの!?」


 愛理も出雲と同様に目を輝かせて驚いていると、出雲が後ろが詰まり始めてるよと愛理に言った。


「ご、ごめんなさい……これを買うわ」


 そう言って愛理はジェノベーゼを選んだ。

 出雲は塩ラーメンを選ぶと、料金にも驚いた。


「塩ラーメンが200円!? 安すぎ!」

「安くて良いわね! 節約にもなりそうだわ!」


 愛理が喜んでいると、出雲は購入した食券を手に持って料理に該当をする受け取りカウンターに歩いて行く。

 愛理は出雲と別れて購入した食券の料理を提供している受け取りカウンターに行くと、そこには複数の人たちが料理を作っている姿が見えた。


「ジェノベーゼ下さい!」


 愛理が受け取りカウンターの中にいる人の一人に話しかけると、話しかけられた初老の女性が愛理の方を見た。


「何か御用ですか?」

「これ、お願いします」


 愛理が食券を手渡すと、初老の女性はジェノベーゼご注文と叫ぶと料理人の男性が初老の女性にジェノベーゼが乗ったお盆を手渡した。


「ほら、ご所望の品だよ」

「ありがとうございます!」


 食券を渡してすぐに料理が出たことに驚いている愛理を見ていた出雲が、早く行こうと声をかけた。

 出雲はお盆の上に塩ラーメンを乗せており、零さないように慎重に運んでいるようである。愛理はジェノベーゼから香る匂いで、美味しそうだわと嬉しそうにしていた。


「席はまだ空いているようだから、奥の方に座ろう」

「そうね。行きましょう」


 二人は食堂の奥にある空いている向かい合う席に座ると、料理を食べ始めた。既に昼食時間になって20分が経過をしているが、続々と食堂に職員が入ってきているようである。


「結構時間が経過しても食堂に来るんだね」

「魔法騎士団本部は忙しいから、12時になってもすぐ昼食に来れないんでしょう?」

「確かに、朝から忙しなく動いていたからな……」


 魔法騎士団本部は各地域にある支社に指示を送ったり、情報を提供されてそれを精査する役割もしているので、仕事量が多くの部署で多いのである。


「さ、食べよう」


 出雲はそう言い塩ラーメンを一口食べると、その美味しさに驚いた。

 美味しさが口の中に広がり、適度な硬さの麺によって噛み応えもある。


「凄い美味しい! 篁さんの方はどう?」

「このジェノベーゼ凄い美味しいわよ! 今まで食べたどのジェノベーゼより美味しいわ!」


 二人が楽しく談笑しながら料理の美味しさを感じていると、不意にアラートが食堂内に響き渡った。

 その音を聞いた出雲と愛理の二人は不安な気持ちになっていた。


「何この音!? 何かあったの!?」

「急に警戒音!? 事件!?」


 二人が驚いていると、食堂にいた半数の職員が食事を中断して慌てながら食堂から出て行った。

 食堂を出て行った人たちは机の上には多数の食べかけの料理が置かれており、食堂で働いている人たちが食べかけの料理や、一口も食べていない料理を片付け始めていた。


「今出て行った人たちは実働部隊の人なのかな? 事件があったから急いで行ったのかな?」

「多分そうじゃないかしら? あとで聞いてみましょう」


 二人は不意になったアラームのことを考えながら昼食を食べ終えた。

 出雲と愛理は何とも言えない気持ちになりながらも、エレベーターに乗って教室に戻っていく。 


 教室に戻った二人は既に席にいた竜司や、教卓の側に立っている景昌や瑠璃を見た。出雲と愛理は景昌と瑠璃に近寄ると、さっき鳴り響いた音は何ですかと聞く。


「あの音か? あれは緊急警戒警報だな。重大な魔法犯罪者の出現や、指名手配されている魔法犯罪者が確認された時になる音だ。何か情報が入ったんだろうな」

「あの音が鳴ると怖いから私は嫌いだわ。あの音が連続で鳴り響いた時はもう絶望よね。怖すぎたわ……」


 あれはもう嫌よと瑠璃が言うと、景昌が仕方ないと瑠璃をなだめていた。

 出雲は重大な魔法犯罪者かと呟くと、竜司が俺たちに関係ないんだし授業時間になってるぞと出雲たちに言った。


「そうだな。次は実技の授業だ! 場所は地下2階になるから行こう」

「景昌君に続いて行ってねー」


 瑠璃が君付けて景昌のことを言うと、君で呼ばないでよと頬を紅く染めながら瑠璃に言っていた。

 その言葉を聞いていた愛理は、景昌君とニヒルな顔をして景昌の名前を呼ぶ。


「もう! 調子に乗らない!」

「あいたッ!?」


 愛理の頭頂部を軽く叩いた景昌は、早く行くぞと3人を先導する。

 その景昌の姿を見た瑠璃は、ちゃんと先生っぽいじゃないのと小さく笑っていた。


「さて、ここが実技の授業をする演習場だ。ここは魔法騎士団の隊員たちが訓練をする場所でもあり、色々なシチュエーションを再現できるから重宝されている場所だ」


 出雲が見た地下2階には無数の部屋があった。

 各部屋に機械が設置されており、その機械を操作して数多のシチュエーションや訓練をする項目を選ぶ形に見える。

 また、上の階層よりも広い作りとなっており、地下2階だけ魔法騎士団本部の敷地面積以上の広さの作りとなっているようである。


「凄い! こんな場所が食堂の下にあったんですね!」

「そうだ。上の階には衝撃音などは聞こえない作りになっているから、本気で訓練に臨んで大丈夫だぞ」


 景昌がそう言った瞬間、一つの部屋から爆発音が聞こえてきた。

 その爆発音を聞いた愛理は驚いた声を上げてしまった。


「うひゃ!? な、なに!?」

「訓練をしている人が何かを失敗したんだろう。君たちには奥の方を割り振ってもらったから、そこで実技の授業を始めよう」


 出雲たちは景昌に案内をされながら、瑠璃と共に大訓練場に移動をした。そこは多数ある訓練部屋とは違い、複数人で訓練をする部屋となっているようである。

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