第40話 食堂
「痴話喧嘩じゃないわよ! 変なこと言わないでね!」
瑠璃が竜司を指差して注意をすると、竜司が舌打ちをして早く進めてくれと景昌と瑠璃の二人に言った。
景昌はその竜司の言葉を聞いて、分かってるよと返答していた。
「気を取り直して、この人もこれから先生として君たちに授業を教えることとなる、雨宮瑠璃さんだ!」
景昌は改めて瑠璃のことを紹介した。
瑠璃は景昌の紹介を受けると、教卓の前に静かに立った。その着ている黒いスーツの皺を正し、軽い咳ばらいを一度した。
「改めまして、私の名前は雨宮瑠璃です。少し前まで魔法騎士団本部、受付係として働いていましたが、この右にいる屑のせいで教導チームに編入となってしまいました! これからあなたたちの先生として一緒に成長していきましょう! よろしくね!」
瑠璃はそう言うと、出雲たちに向けて頭を下げた。出雲と愛理は瑠璃の言葉に対してよろしくお願いしますと答えていた。
竜司はただ一人何も言わずに瑠璃をじっと見ていた。
「さて、瑠璃の自己紹介も終わったことだし授業を始めようか! まずは国語かな?」
「そうね。魔法の勉強だけはいけないし、魔法騎士団に入るのなら学力も必要だからね」
瑠璃が学力も必要と言うと、出雲が大変だとため息をついていた。
しかし夢を叶えるためだと自身を奮い立たせ、学科科目も頑張るぞと出雲は燃えていた。
深呼吸をして高鳴る心臓の鼓動を抑えた瑠璃は、早速授業を始めることにした。
授業時間は瑠璃自身の学生時代の授業時間を真似て一科目50分にし、10分の休憩をいれると決めていた。
「国語の授業を始めるわ。学科科目だからといっても手を抜かないようにね? 魔法騎士団に入るためには学科試験もあるから、気を抜かずに行きましょう!」
「分かりました!」
「ちゃんと勉強します! 高校レベルの勉強は難しそうだけど、乗り切らなきゃ!」
愛理が頑張ろうと言いながら教科書を捲る姿を見た出雲は、自身も教科書を捲り始めた。
ちなみに席順は左から竜司、愛理、出雲となっており、男子二人に挟まれる形で愛理が中央の席に座る形となっていた。
「さて、授業を始めます」
その言葉と共に国語の授業が始まった。与えられた教科書は、国立中央魔法学校グループが独自に発行している書籍である。
その内容は詳細に詳しく書かれており、他の会社が発行をしている教科書シリーズよりも深堀をして記載をしている。
「国立中央魔法高等学校の授業はかなり難しいわ。ただ覚えるだけではなく、考えて学んで下さい」
瑠璃はそう言いながら教科書のページを捲っていく。1ページ目の目次の次には、文章を読んで筆者の感じていることを読み解く問題や言葉の扱い方などである。
出雲たちは瑠璃の国語の授業や数学の授業を受けると、気が付けば昼食の時間となっていた。
各教科の休憩時間には50分の授業であるにも関わらずとてつもない疲労が襲っていたので、話して休むことなど出来てはいなかった。
「午前中の授業を終わります。昼食休憩の1時間を挟んだ午後13時から授業を再開します。お疲れさまでした!」
瑠璃がお疲れ様と出雲たちに言うと、出雲と愛理が消え入りそうな声でお疲れ様ですと返答をした。
二人は机に突っ伏しており、その二人を見た竜司は先に昼を食ってくると言って教室を出て行った。
「疲れた……学科授業辛すぎる……」
「そうね……ここまで内容が難しいなんて思わなかったわ……生きてる?」
「ギリギリ生きてるよ……昼食べに行こうよ……」
出雲の言葉を聞いた愛理は、行きましょうと小さな声で言う。出雲はゆっくりと体を起こすと愛理の右肩を軽く数回叩いた。
愛理は右肩を叩かれると起きるわと言いながら静かに体を起こす。ゆっくりと椅子から立ち上がった愛理は、机に引っかけている通学鞄から黒色の長財布を取り出した。
「行きましょう。もう10分も経っているわ」
「本当だ! 早く行かないと! 食堂に行こう!」
出雲も通学鞄から茶色の財布を取り出すと、愛理と共に教室を出て行く。出雲たちが向かおうとしている食堂はこの建物の地下1階にあり、そこは魔法騎士団の全職員が使用をする場所となっている。
食堂を使用する時間は様々だが、食堂が仕事を忘れて過ごすことが出来る唯一の場所として人気である。
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