第39話 痴話喧嘩
景昌の後ろを付いていくと、道の突き当りを左に曲がるとドアが見えた。そのドアを開けると小さな一室が現れる。
その部屋は国立中央魔法高等学校の部屋程大きくはないが、出雲たち4人だと広すぎる大きさである。
教室内は扉から見て前方の奥に黒板があり、扉の前に椅子と机が並べられている。
3人分の椅子と机に黒板の前に教卓と椅子が置かれ、教室の左側には3人分のロッカーが設置してある。
「ここが君たちの新たな教室だ! 中央魔法高等学校の方の教室は全く使わなかったが、まぁいずれあっちも使うことがあるだろう。だけど、今はこの教室で強くなろう!」
「強くなります! 俺は絶対に強くなります!」
出雲が初めに強くなりますと言うと、愛理と竜司もそれぞれの言葉で強くなると言っていた。
3人が言葉を言い終えると、景昌が部屋の奥にあるロッカーから教科書類を取り出していた。
「学科科目の教科書だ。一人ずつ取りに来てくれ」
出雲は景昌専用のロッカーの前に移動をすると、多数の教科書類を手渡された。国語や数学に政治経済など高等学校で習う科目の教科書が手渡される。
「重い!? 沢山ありますね……」
「覚えることが多いぞ! 実技も学科も強くなるんだ!」
ガッツポーズを出雲に向ける景昌。
その景昌に対して出雲は、空笑いをして頑張りますと景昌に返答をした。出雲たち3人が教科書類を受け取ると、景昌が授業を始めようと言い始める。出雲は他の先生がいるんですかと言うと、景昌が俺一人だよと即座に答えた。
「先生が全教科教えるんですか!?」
「そうだ! 俺は伊達に教導部隊にいるわけじゃないぞ!」
景昌はそう言いながら数学の教科書を捲っていく。すると次第に景昌の動きが止まってしまう。
「先生? どうしたんですか?」
「動き止まってますよ?」
出雲と愛理が景昌の目の動きや体の動きが止まったことを言うと、景昌はスマートフォンでどこかに電話をかけた。
「助けてくれ! 俺一人じゃ無理だ! 分からない!」
分からないと景昌が言うと、出雲たちが嘘でしょと驚いていた。
「先生が全部教えるんじゃないんですか!? さっき言ってませんでしたか!?」
「やっぱ無理だ! 応援を頼んでるから! 待ってて!」
景昌が出雲たちに待っててと言うと、景昌のスマートフォンから先ほど聞いた声が聞こえてきた。
「もしかして、受付カウンターにいた瑠璃さん?」
出雲が瑠璃さんの声が聞こえると言うと、景昌があいつは凄いからなと自慢げに言う。
「あいつは高校時代に全国模試で一位を取ってるし、俺に全教科を教えてくれていたから大丈夫だろう!」
景昌がそう言っていると、スマートフォンから怒号が飛び始めていた。その声を聞いた景昌は謝りながら瑠璃に頼んでいるようであった。
「頼む! 生徒のために瑠璃の力を貸してくれ! 俺じゃ全教科を教えられない!」
頭を下げながら瑠璃に頼んでいるようで、通話を始めてから5分が経過をすると景昌は頼みますと口調が敬語になっていた。
「本当か!? 俺も掛け合うからよろしく頼むよ!」
そう言って景昌は通話を終えたようである。そして景昌はスマートフォンをズボンのポケットにしまうと、ちょっと行ってくると教室を出て行った。
出雲たち3人は景昌が教室を出てしまったので放置状態となってしまっていた。
「先生出て行っちゃったわね……待ってるしかないのかしら?」
「どうだろう? 多分1階の瑠璃さんのところに行ったのかな?」
出雲と愛理が話していると、竜司が鞄の中に教科書類を入れて席を立っていた。出雲は竜司に待ってないとと言うが、竜司はトイレに行くと言って部屋を出た。
「トイレか……また勝手に行動をするのかと思ったよ」
「さすがにそこまで馬鹿ではないでしょ。それにすぐに先生も戻ってくるだろうし」
愛理がすぐにと言った瞬間、教室の扉が静かに開いた。そこには景昌と共に瑠璃の姿があり、景昌が今度奢るからと何度も言っていた。
「奢るだけじゃないわよ! 勝手に人事課にも言ってさ! 私はあそこの部署で悠々自適に過ごしたかったのに!」
「だから何度も謝ったじゃんか!」
「何であんたの意見はいつも通るのよ! おかしいでしょうに!」
景昌と瑠璃が言い合いながら教卓の前に移動をすると、竜司も教室に戻っていた。
竜司はまだ喧嘩をしているのかと呟くと、痴話喧嘩はそこまでにしてくれと二人に言う。
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