第38話 情けない景昌

「突然大声を出してごめんなさい。あの人とは幼馴染でして、いつものことなのでつい」

「そ、そうだったんですね……」


 景昌さんって普段はどんな感じなのだろうと出雲が考えていると、受付カウンターの女性がもうすぐ陸奥が来るそうですと出雲に教えてくれる。


「もうすぐ来るんですね!? ありがとうございます!」

「いえ、私からキツク言っておきますので」

「ははは……ありがとうございます!」


 出雲が頭を受付カウンターの女性に下げると、エレベーターから勢いよく景昌が出てくる姿が見えた。

 出雲が景昌さんと叫んで右手を振ると、景昌は小走りで出雲のもとにやってくる。


「ごめん! まだ時間じゃないから上で作業してた!」

「大丈夫です! 早く来すぎた俺たちが悪いんです!」


 出雲が大丈夫ですと言うと、受付カウンターの女性が景昌の頭部を強く叩いた。景昌は何するのと受付カウンターの女性に怒る。


「何するの! 生徒の前で叩かないでよ!」


 景昌が叩かれた頭部を痛いと言いながら撫でていると、生徒が来たって連絡した時に待たせといてって言ったからよと再度怒られてしまう。


「瑠璃さん? そんなに怒らないでください……」

「そりゃ怒るわよ! 生徒は大切にしないさい! せっかく教導班に入れたんでしょ? 無下にしないことよ!」

「はい……」


 瑠璃と景昌が呼んだ受付カウンターの女性は、黒髪で肩に近い長さである。肩にかかりそうな髪の箇所にはメッシュで茶色になっていた。

 また、大きな二重の目と小さな鼻をしており、多少丸顔に見えるものの可愛らしい顔と出雲は思っていた。


「ほら、早く生徒たちのところに行きなさいな」

「分かりました!」


 景昌は瑠璃に行ってくると言うと、出雲と共に愛理と竜司のいる場所に移動をした。愛理と竜司は景昌を見ると、待たせすぎと怒った。


「ごめんごめん。君たちをここに呼ぶことや、色々と調べ物を昨日からしててね」

「昨日からって、寝てないんですか?」


 愛理の寝てないのとの言葉に、景昌がそうだよと答えた。


「大丈夫ですか!? てか、どうして寝てないんですか!?」

「それはな……何て言ったらいいか……」


 景昌が口籠っていると、竜司が早く教えてくれよと言う。その言葉を聞いた景昌は君たちを呼ぶためと、これからのためにだよと言う。


「学校で授業をするより、ここで多くのことを学んでもらおうと思ってね。これから昨日のような敵が現れた際に、少しでも対抗が出来るようにするためだよ」

「そうなんですね……確かに俺たちは何も出来ていませんでしたからね……」


 出雲が何も出来ていないと言うと、景昌が戦うだけが全てではないと言う。竜司は戦って勝たないと意味がないだろうと言うが、愛理が少し黙ってと静止をした。


「とりあえず、先日の戦闘で君たちの戦力をより高めるために上層部にかけあって魔法騎士団本部の一室に教室を設けることが出来たんだ」

「ここにですか!? 本当ですか!?」


 出雲が驚いていると景昌がとりあえず教室に行こうと言う。


「そうですね! 教室が楽しみです!」


 出雲が喜んでいると、愛理が景昌の目元のクマに気が付いた。


「先生少し寝たらどう? 全然寝ないで交渉したり、調べ物をしていたんでしょ?」

「心配してくれてありがとう。でも、君たちに辛い思いはして欲しくないし、強くなって多くの人を救ってほしいから、今寝るわけにはいかないんだよね」


 空笑いをしながら3人を先導する景昌。

 出雲と愛理はありがとうございますと笑顔で言っていた。だが、竜司は鼻で笑って精々俺の糧になってくれと小さく呟いていた。


「さ、エレベーターに乗ってくれ。4階に行くよ」


 景昌は1階ロビーの右奥に設置されているエレベーターに乗った。出雲は緊張すると思いながら4階に移動をすると、そこには多数の部署が存在していた。


「ここは魔法犯罪の中でも軽犯罪を扱う部署や、未成年の魔法犯罪を専門に扱う部署がある階層だな。ここの一角に部屋を貰ったんだ」


 景昌はエレベーターから出ながら出雲たちに言う。

 出雲は周囲を見渡すと、忙しなく働く職員や部屋から飛び出て行く人たちで溢れていた。


「軽犯罪は報道されること以外にも沢山起きているから、毎日戦いでもあるな。ちなみに、先日いた第一部隊は5階にいるぞ」


 そう教えてくれた景昌は4階の道を進んでいく。

 両サイドにある部屋を見ながら景昌の後を付いていく出雲は、魔法騎士団本部の内部を堪能していた。

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