第31話 恐怖
「心と共に強くなれ。出ないと魔法犯罪者と同じ趣向になってしまうぞ。心と共に強くならなけば、力に支配をされてしまう。肝に銘じるんだ」
「分かりました……」
「心の力がお前を強くする。さて、そろそろ俺も行かないとな」
その言葉と共に源十郎は宙に浮き、優雅たちのもとに飛んで行った。
出雲は優雅たちと戦い始めた源十郎を見ていると、これから強くなろうと決心をした。
「焦るけど、焦らないようにしないと……」
出雲が空で戦っている3人を見ていると、遠くから出雲のことを呼ぶ声が聞こえた。
「黒羽君! 無事!?」
「怪我をしていないか!?」
出雲のことを呼んだのは景昌と愛理であった。
二人は出雲の姿を見ると怪我がないか確認をし始める。出雲はくすぐったいよと言うが、危険地帯にいた出雲に対して心配をしていたのである。
「竜司がいないけど、どこに行ったんですか?」
出雲が景昌に聞くと、愛理が負傷者を庇って怪我をして手当てを受けているわと言う。
「竜司が庇って!?」
「そうよ。何か心境の変化があったかは分からないけど、人を庇ったの。不思議よね」
「色々考えたんだろうな。今はここを離れよう!」
景昌がそう言うと、二人は戦闘地域から離れようとする。
だが、源十郎たちの戦闘が激しく、魔法が跳ね返って出雲たちの周囲に衝突をしているので、すぐには動くことが出来ずにいた。
「魔法が!?」
「こっちに行くぞ!」
景昌がビルが崩れて道が形成された場所に行くぞと二人を先導する。出雲と愛理は爆風に気を付けながら景昌を追いかける。
景昌は戦闘地域から離れた場所にある救護施設に向かっていた。出雲は景昌が走りながら救護施設に行くと言っていたので、それは遠いんですかと走りながら聞く。
「ここから10分程度の場所にある! 被害を受ける前に移動を終えるぞ!」
「分かりました!」
出雲が元気に返事をすると、愛理が気を抜いたら死ぬわよと横を走る出雲に言う。
「ごめん! 気を付ける!」
出雲が謝った瞬間、3人の目の前に強烈な衝撃音と共に源十郎とハニエルが落下してきた。
「な、なんだ!? げ、源十郎さん!?」
出雲が源十郎を見ると、ハニエルの右腕が源十郎の腹部を貫通しているのが見えた。源十郎は口と腹部から大量の血を流して片膝を地面に付けていた。
「源十郎さん!」
「近寄るな! 危ないぞ!」
近寄ろうとした出雲を景昌が止めると、愛理が上から優雅さんたちが来てるわと空を指差していた。
「優雅さんたちが来ているわよ! ここにいたら邪魔になるわ!」
「行くよ黒羽君! ここにいたら邪魔だ!」
景昌が出雲の右腕を掴んで愛理と共にその場を離れようとする。
だが、ハニエルが源十郎を蹴り飛ばし、出雲に源十郎が衝突してしまう。
「ぐぁ!? ぐぅ……」
源十郎と共に地面に倒れてしまった出雲は、目の前に現れたハニエルを見て恐怖を感じていた。
「く、く……来るな! こっちに来るな!」
出雲が自身の体を上に乗って、気絶をしている源十郎をどかそうとしながら来るなとハニエルに言い続けている。
出雲と源十郎を見ていた空から降りてきた優雅がハニエルに持っている剣で攻撃をするが、その攻撃は楽々と防がれてしまう。
「くそ! 攻撃が当たらない! 防がれる! 出雲君! 源十郎さんを連れて逃げてくれ!」
「来るな! 来るな! 来るなー!」
出雲の耳には優雅の声が届いていなかった。
出雲は迫るハニエルに来るなと言い続けると、景昌が魔法を放ち、その攻撃によって発生をした煙がハニエルの周囲に充満をしている隙に源十郎の肩を持って出雲が移動を出来る隙間を作った。
「今のうちに早く! 篁!」
「はい!」
景昌の指示に従った愛理が、怯えている出雲の右腕を掴んで移動をさせようとする。だが、恐怖によって体が竦んでしまって動くことが出来なかった出雲の頬を、愛理は叩いて目を覚まそうとした。
「怯えていないで、今は走りなさい! 先生が時間を稼いでくれているんだから!」
「う、うん……」
「ほら! 早く!」
愛理が力強く出雲の腕を引くと、出雲はやっと立つことが出来た。
愛理に引かれる形で出雲がその場から逃げると、景昌がハニエルの攻撃を辛うじて防いでいる姿が出雲の目に入っていた。
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