第25話 異形の姿
「そ、そんな!? 主から貰った大切な鎧が!?」
少女は地面に散らばってしまっている砕けた鎧の欠片を慌てて拾い集めていた。少女は鎧の下に黒いTシャツと半ズボンを着ていたようで、恥ずかしがることもなく鎧の欠片を拾い続ける。
「何をしているの?」
鎧の欠片を集めている少女に話しかけた。
少女はミサの言葉を聞き、貰った大切な鎧を集めているのと叫ぶ。
「その鎧が大切? 少し魔法で改造を施しているみたいだけど、ただの鎧だよ? 安価なありふれている鎧が大切なの?」
「貰ったものは大切でしょ!」
欠片の1つを触りながら少女が叫ぶ。
大切だと叫びながら少女が涙目になりながらミサに向けて先程の閻獄の炎を発動させた。
「それは私には効かないわよ? どうするの?」
「こうするのよ! ここで時間を食いすぎたわ! 終わりにするわ!」
少女は閻獄の炎の剣に付与させると、剣から黒いオーラが放たれ始めた。ミサはその剣を見ると、そこから先は地獄よと言う。
「さっきから使ってる閻獄の炎はあなたの寿命を削ってるわよ? 誰からその魔法を教わったの? 主って誰のこと?」
「あんたに教える義理はないわ! この世界を救うために動いてくれている救世主よ!」
救世主という言葉を聞いたミサは、もしかしてと何かに勘づいたような顔をしていた。
「救世主ってもしかして――」
ミサが少女に聞こうとした瞬間、ミサの背後から氷の球体が少女に放たれた。その氷の球体を少女が剣で壊すと、勢いよく愛理が細剣で突き攻撃を連続で放つ。
「死ぬかと思ったじゃない! 覚悟しなさい!」
愛理が少女に突撃をすると、ミサは頭を抱えてしまう。
もう少しで聞き出せたと思ったのに、愛理に邪魔をされてしまったので深いため息をついていた。
「あの子は……篁愛理って言うのね。猪突猛進過ぎないかしら?」
ミサは出雲の記憶から愛理の情報を吸いだした。
「ちょっと! あまり先行をすると死んじゃうわよー?」
ミサが戦っている愛理に言うと、愛理は突然口調が変わった出雲に驚いていた。
「何で口調が変わっているの!? なにがあったの!?」
「ちょっと色々あって、今だけよー」
出雲は愛理にこっちに来てと手招きをすると、持っている剣に魔力を込めて軽く少女に向けて振るった。すると、剣から鋭い衝撃波が放たれた。
「避けなさい! そしてこっちに来なさい!」
ミサの言葉を聞いた愛理は、危ないじゃないのと叫びながらミサの攻撃を辛うじてよけられた。少女はミサの衝撃波を魔力の壁を作って防ぐも、勢いに押されて後方に吹き飛んでしまった。
「来なさい! あんた一人じゃ勝てないわよ!」
「さっきからその口調どうしたのよ!? 体が痒くなる!」
愛理が自身の体を抱いて痒いわと言い続けている。ミサはそろそろ終わらせないと商業施設の方が心配じゃないのと愛理に言う。
「それもそうね。あんたが心配で来たけど、なんか大丈夫そうだし、早く終わらせましょう!」
愛理が少女を見据えると商業施設から爆音が聞こえて、商業施設の入り口側が吹き飛んだ。
「な、なにが起きたの!? 先生は無事なの!?」
「なんとか大丈夫じゃない? あの先生の生命力強そうだし?」
ミサが欠伸をしていると、商業施設の入り口から体が5倍以上に大きくなった若い男性の姿があった。
しかし、ミサが出雲の記憶から見た若い男性の姿ではなく、頭部と両腕に両足が変化してしまっている異形の姿があった。
若い男性の姿は出雲たちが会った時とは違い、顔の左側が黒くなり左部分の額から一本の黒い角が生えていた。また両腕と両足は赤く筋骨隆々になり、胴体は腕や足とは違い、骨が見える程に細くなっていた。
「あれは、呪いね。あなたたち人を変えて何をしたいの?」
ミサが呪いと言うと、その言葉を聞いた少女が何を知っているのよと叫ぶ。
「あれは呪いじゃないわ! 祝福よ! 聖痕は人を幸せにしてくれるのよ! 何を言っているのよ!」
「あの姿が幸せなの? 自我も失って人ですらなくなって、私にはあれが幸せには見えないわ」
ミサが巨大化した若い男性の姿を見て、不幸よと見つめて言う。
ミサが見つめている巨大化した若い男性は、辛い助けて、殺してと頭を抱えながら言い続けている。
「見てみなさい。辛いや助けて言っているのに、どこが幸せなのよ」
「そ、それは……いい加減に目を覚ましなさい。あなたは騙されているのよ」
「騙されていない……それに……私がやらないとお母さんが!」
お母さんが。
そう言った少女が剣をミサに向けた瞬間、少女の背後の空間が割れた。
「時間か……私は失敗したのね……」
失敗したと言いながら少女は割れた空間に入ろうとする。その際に巨大化した若い男性を横目で見ると、聖痕は正しいのよと小さく呟いていた。
「どこに行くのよ! まだ話は終わっていないわ!」
ミサが少女に手を伸ばすと、少女は割れた空間の中に入ってしまい、その姿を消してしまった。
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