第23話 弱者は弱者

「私は失敗できない! お前は邪魔だ!」


 出雲は邪魔だと叫ぶ少女の雄叫びを聞きながら、支給された長剣で攻撃を防ごうとしていた。


「あの攻撃はヤバイ! 直感で危険だと分かる!」


 出雲が見ていた少女の剣は、漆黒の剣全体に黒と見える魔力が纏わりついていた。

 少女と共に威圧感を出雲が剣に感じていると、少女が剣を出雲に向けて力強く振るった。


「消し飛びなさい!」

「俺はこんなところで負けない! 負けられない!」


 歯を喰いしばって少女の攻撃を防ごうとした出雲は、自身の光属性の魔法と長剣でどうにか攻撃を防ごうと考えていた。


「何をしようが無駄よ!」


 その言葉と共に少女が出雲に剣を振るうと、剣から黒い斬撃が放たれた。


「斬撃!? 目に見える程の斬撃が!?」


 出雲は剣を構えて光属性魔力を剣に纏わせることで、少女の斬撃を防いでいた。しかし斬撃の威力が凄まじいのか耳を劈く程の高音が斬撃と出雲の長剣から放たれていた。


「何だこの攻撃!? 押される!」


 出雲は長剣で斬撃を防いでいると、目の前にいるはずの少女の姿が見えなくなっていた。出雲がどこだと周囲を見渡すと、少女の声が自身の足元の方から聞こえたと感じた。


「やっぱり弱いじゃない。この動きすら見れないなんて」


 少女の声と共に出雲は腹部を蹴られてしまった。それによって踏ん張りや、剣に纏わせていた魔力が消えてしまい、出雲は斬撃を体に受けてしまった。


「ぐぅあああ!」


 出雲は自身の体が切り裂かれると思ったが、すぐにはそれは起こらなかった。なぜなら、出雲が着ている制服が淡く光り、斬撃の衝撃を防いでいたからであった。


「せ、制服が守ってくれている!? これってこんな機能があったのか!?」


 制服を下を向いて見ていると、少女が小癪な真似をと出雲を睨んでいた。出雲は少女を見ると、まだ負けていないと叫ぶ。


「俺はまだ負けていないぞ! 絶対に負けない!」

「うるさい……うるさい……うるさい! 弱者は強者に搾取されていればいいんだ!」


 少女はそう叫びながら再度斬撃を出雲に放った。出雲が着ている制服で斬撃を防いでいると、次第に腕や胸の胸の部分が破れ始めていた。


「制服が!? 耐えられないほどに威力が高いのか!?」


 どうしようと悩んでいると、何しているのよと聞き覚えのある声が出雲の耳に入った。


「そのままじゃ死ぬわよ!」


 その声は愛理であり、愛理は氷属性の魔法で出雲と斬撃の間に氷りの壁を作り出して、出雲の腹部に抱き着いて斬撃から遠ざけることに成功をした。


「制服の守りが無かったら死んでたわよ!? 何をしているの!」

「ごめん……制服に守りなんてあったんだね。知らなかったよ……」

「先生たちは言ってなかったけど、制服には何かしらの魔法がかけられているって有名よ? 知らなかったの?」


 出雲は知らなかったと素直に返答をした。

 出雲と愛理のやり取りを見ていた少女は、ふざけるなと二人に向かって叫んだ。


「生死をかけた戦闘中に、漫才をしているんじゃないわよ! すぐにお前たちを殺して生贄を育てるのよ!」


 生贄。

 そう少女が発した言葉を出雲と愛理は聞き逃さなかった。生贄とは何なのか、聖痕とは何なのか、聖痕としか言わないあの若い男性はと、頭の中で言葉が回り続けていた。


「生贄とは何だ! 答えろ!」

「お前には関係のないことだ。邪魔だから、もう消えてくれ!」


 少女は消えてくれと言いながら、出雲に向けて剣を振るう。愛理は出雲の前に出て氷の円形の盾を作り出し、少女の剣を防いだ。

 だが、愛理の氷の盾に亀裂が入り、少女の剣の重さと力の強さが見て取れる。


「攻撃が重すぎる! 本当に私と同じ女なの!?」


 愛理は少女の攻撃の重さに耐えられずに、盾を持ちながら片膝を地面についてしまった。少女は愛理のその隙を見過ごさず、剣を引いて愛理の持っている盾を右足で蹴る。


「さっさと倒れろ!」


 少女の蹴りで後方に吹き飛んでしまった愛理は、ビルの1階部分のガラスを突き破ってビル内に入ってしまった。

 出雲は後方に吹き飛んでしまった愛理の名前を叫ぶと、少女が消えろと言いながら出雲に剣を振るってくる。


「君は一体何なんだ! さっきから俺たちを攻撃して! 勝手にやりたいことをしていればいいだろう!」

「お前たちが儀式の場を見たから悪いんでしょう! 私の邪魔をするから悪いんだ!」


 出雲は少女の言葉を聞いていると、何か必死な感覚を感じた。目の前の少女は何を考えているのか、何にそれほど追われているのかと不思議に感じていた。


「君は何にそんなに追われているんだ? 何かされているのか!?」


 出雲は少女の剣を防ぎながら目の前にいる少女に問いかけた。しかし少女は黙れと言いながら出雲の腹部を蹴り、剣で連続で斬りかかる。

 出雲は少女の上段、下段、横切りなどの攻撃を薄皮を切られながらも対処をしていた。しかし右腕や頬を斬られてしまい、出雲はその痛みに顔を歪めていく。

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