第22話 謎の敵

「理解しただろ? 俺の殺気にすら怯えているようじゃ、お前は雑魚のままだ。今は地道に強くなって、チームとして行動をしろ。いずれお前は本当の強さを理解する」

「本当の強さってなんだよ……」


 地面に竜司が座り込んでしまうと、愛理に向けて一本の短剣が飛んできていた。それに気が付いた景昌は持っている長剣で短剣を弾いた。


「攻撃!? みんな気を付けろ! 敵がすぐ側にまで来ているぞ!」

「どこにいるんだ!? 竜司! 落ち込んでいないで、今は全員で戦うぞ!」


 出雲が座り込んでいる竜司の右肩を掴んで立たせようとするも、竜司は座り込んでしまったままである。

 愛理は今は放っておきなさいと言うと、細剣を手にして商業施設の奥にいるであろう若い男性を探していた。


「どこにいるの!? 敵はどこ!?」


 周囲を警戒している愛理は、左右を見ながら細剣を構えている。しかしどこを見ても若い男性の姿が見えない。

 出雲たちがここにはいないのかと思った瞬間、天井を見た竜司が上だと叫んだ。


「上!?」


 愛理がそう叫び天井を見ると、天井に張り付いている若い男性の姿があった。若い男性は天井から離れると真下にいる愛理に攻撃をした。


 若い男性の持っている短剣を愛理は首筋ギリギリのところで細剣で防ぐと、そのまま愛理は腹部を蹴られてしまう。


「あぅ……この男!」


 愛理は腹部を抑えると、細剣で首筋を攻撃しようとした。だが、その攻撃は短剣で軽々と防がれてしまう。


「こんなに強いの!? さっきより動きが鋭いように思えるけど!?」

「落ち着け! 俺も攻撃をする!」


 景昌が愛理の右隣に入ると、持っている剣で連続で斬りかかる。その攻撃を数回若い男性は防ぐと、左肩を斬られていた。


「行けるぞ! このまま押し切れ!」

「私は支援に徹します!」

「分かった!」


 愛理は攻撃を景昌に任せ、自身は氷らせたりして動きを封じる方向で行こうとした。その二人を見ていた出雲はどう動こうか考えていると、若い男性が突然大声で言葉を発し始めた。


「導き! 聖痕が我々を導いてくれる! 聖痕の邪魔をするな!」


 突然意味の分からない言葉を発した若い男性を見た出雲たちは、何を言っているんだと不思議そうな顔をしていた。


「捕まえて吐かせるしかない! 行くぞ!」


 景昌が若い男性に剣を振るった瞬間、奥の方から勢いよく誰かが長剣を振るいながら出雲に突進をしてきた。


 出雲は突進してきた謎の人物の攻撃を持っている長剣で危なく防ぐと、入り口のドアを突き破りながら謎の人物と共に、出雲は外に出てしまった。


「黒羽君! くそ! 急に出てきたあいつは何なんだ!」


 景昌が壊れた入り口の方向を向こうとすると、愛理が来てますと声を上げた。

 景昌は愛理が指差す方向を見ると、そこには若い男性の左腕が鋭い刀に変化をさせながら迫っている姿があった。


「既に人の概念を超えているじゃない! お前は一体何者なんだ!?」


 左腕の刀の振り下ろしを難なく防いだ景昌は、愛理に出雲の支援に行ってくれと指示をした。


「分かりました!」


 愛理はその場から離れようとすると、未だに地面に座っている竜司を見た。愛理は竜司の前で立ち止まると、いつまでそうしているのと低い声で話しかけた。


「少し言われたくらいで落ち込むのなら、目指すのを止めるといいわ。これからいくらでも叩きのめされる時が来るわ。あなたはその度に死んだような顔をしているつもり?」

「俺は……俺は……」

「勝手にしてなさい。私は先に進むわ」


 言葉を繰り返しながら放心状態の竜司を尻目に、愛理は商業施設の外にいる出雲を追いかけた。

 

 出雲は商業施設の外にて謎の人物の攻撃を受けていた。その人物は商業施設の中では薄暗くて全身が見えなかったが、外に出たことによって日の光で全身が照らされたことによって、その姿が露わになった。


「な……なんだその姿は……一体誰なんだ!?」


 出雲を攻撃した謎の人物の姿は、黒と紫の配色の鎧を纏い両腕に漆黒の篭手を付け、右手に篭手と同じ色の長剣を握っている少女の姿があった。

 その少女は出雲と同い年に見え、身長は出雲の肩の高さをしていた。


 謎の少女は肩にかかる長さの銀髪をしており、空色の瞳とスッキリとしている鼻筋が印象的な愛らしい顔をしている。

 だが、その愛らしい顔からは想像がつかない程に威圧感を放っている少女の姿が出雲の目の前にあった。


「き、君は誰なんだ!? 突然襲って何がしたいんだ!」


 出雲は目の前の少女に話しかけると、少女は長剣を構えて邪魔をするなと低い声で言葉を発する。


「邪魔をするな! 私は主のためにこの作戦を成功させなければならない!」

「主や作戦って何だよ! ただ、君が敵側なのは理解が出来る!」


 出雲は長剣を握る手に力を入れて、目の前にいる少女と相対した。

 少女は漆黒の剣に黒い不思議な力を流し始める。


「な、何だその力!?」


 黒い魔力のような不思議な力を見た出雲は、黒い魔力が付加されたその剣を見て恐怖を感じていた。


「あの剣は危険すぎる気がする……」


 漆黒の剣を見ている出雲は、剣から異質な雰囲気を感じ取っていた。


「あの剣を一撃でも受けたら危ない気がする……怖い……」


 少女の剣を怖いと感じていると、少女が隙がありすぎると言いながら出雲に斬りかかる。出雲は襲ってくる少女の剣を持っている長剣で防ぐと、少女の力に押されそうになっていた。


「俺より小柄なのに! なんだその力は!?」

「鍛え方が違う! 私の邪魔をするな! ただの人間風情が!」


 少女の力に押されてしまい、後方にある建物に衝突してしまう。その建物は廃棄された建物ではなく、多くの人が働く企業が入っているビルであった。


 1階部分には警備員やビルに出入りをしている人が大勢いるようで、衝撃音やビルが揺れたことによって恐怖の渦となっていた。


「ぐぁ!? くそ! ビルに!?」


 出雲は背中に強烈な痛みを感じていると、ビルの外壁にヒビが入っていることに気が付いた。


「外壁にヒビが入ってる!? それぐらい勢いよく衝突したのか!?」


 背中の痛みに耐えていると、少女が剣を左に傾けて右足で出雲の左脇腹を蹴り抜いた。出雲はその蹴りを受けると肺から空気を出してしまう。重い鈍痛が出雲の左脇腹の響くと、顔を歪めて痛みに耐えた。


「ぐぅ……脇腹が……」


 左手で自身の左脇腹を押さえていると、少女が弱すぎるぞと出雲の目を見て言う。


「俺が弱いのは知ってるさ! でもな! 逃げるわけにはいかないんだよ!」

「弱いものが強がることなはい。弱いものは弱いんだ!」


 漆黒の剣に黒い魔力が再度集まると、少女右側に体を捻りながら剣を構え始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る