第8話 アナウンス

「君たち3人はそちらの対処をしてくれ! 僕はみんなをまとめてこちら側の対処をする!」


 出雲と愛理、竜司がる地点から東側からも変化した泥人形が来ていた。

 東側にいる一人の男子受験生が、逃げていた受験生たちをまとめあげて戦おうとしていたが、やはり何人かの受験生は戦うことが怖いようで、出雲が横目で見ただけでも10人は武器を持ちながら震えているようであった。


「やっぱり戦うことが怖いんだな。俺も内心は怖いけど、立ち向かう時はは立ち向かわないと! 夢のために!」


 出雲も刀を持つ敵と戦うことは怖いと感じている。先ほど刀の攻撃を防いだ時でさえ、逃げたいとも考えていた。

 だが、逃げたら背後にいた女子受験生が怪我を負ったかもしれなかった。


「俺はもう逃げないと決めたんだ!」


 出雲が逃げないと言うと、その声を聞いた竜司が早く来いと出雲に叫んでいた。その声を聞いた出雲は、すぐに行くよと叫び返す。


「こっちは人数が足りないんだ! 早く来いや!」

「そう脅す言い方をするなって! 今行くよ!」


 ムカツク言い方をするなと思いつつ、出雲は竜司の横に移動をした。その際に篁さんはと姿を探すと、竜司が前方を指差した。


「あそこで一人で戦ってるよ。お前が遅いから来るまで数を減らすって言ってたぞ」

「そんなこと言ってたの!? 早く行かなきゃ!」


 出雲が早く行かないとと言った瞬間、バキッという音が聞こえると共に愛理が出雲たちのもとに吹き飛んできた。


「きゃあ!」


 可愛い声と共に、愛理が宙を舞っていた。

 出雲はその愛理を見ると、両腕に力を入れて抱き留めることに成功をした。


「ぐぅ!? なんとか抱き留められた!」

「あ、ありがとう……てか、いつまで抱きしめてるのよ!」


 愛理は頬を紅く染めながら、右手で出雲の左頬を強く押した。「ご、ごめんって! すぐに離れるから!」


 出雲はごめんと言いながら、愛理を地面におろした。愛理は地面に立つと、出雲と竜司に行くわよと前方にいる変化した泥人形を見据えながら言う。

 出雲と竜司は武器を構えながら愛理の言葉に行こうと返し出雲は剣を構える。出雲の横に立っている竜司は初めは武器を持っていなかったが、大剣を持っているようでその大剣を構えた。


「数は減ってきてはいるけど、まだ油断はできないぞ!」

「分かっているわ! この魔法を使えば!」

「私に合わせて!」


 愛理に走りながら言われた竜司は何をするのか分かっていなかった。竜司は何をするんだと愛理に言うと、愛理があの大きな火球を作ってと前を向きながら言う。


「そういうことか。ならさっさとそっちも作りな!」

「分かってるわよ!」


 愛理が氷の球体を作り、竜司が火球を作った。二人は走りながら動きを合わせて共に変化した泥人形に投げつけた。


「いい感じよ! そして、あの人形の集団の中央の今よ!」

「言われなくても分かってらぁ!」


 愛理と竜司はお互いに息を合わせて、氷球と火球衝突させた。

 愛理はその際に氷球を壊して、その欠片を渦のように回した。そして竜司の放った火球の火を渦の中に入れて氷と火の合わさった竜巻を作った。



「凄い! これならすぐに倒せるかも!」

「そう簡単にはいかないわよ! 見て! まだ倒せていないわ!」


 出雲の言葉に愛理が前方を指差した。

 すると、そこにはあれだけいた無数の変化した泥人形が10体にまで減っていた。


「あれだけやってもまだいるのか! これ本当に試験なのか!?」


 竜司が声を上げるのも無理がなかった。出雲も試験にしては難易度が高すぎるし、怪我を負う危険性がありすぎると考えていたからである。


「見て! 残り10体の人形が集まってくっつき始めてる!?」


 愛理が出雲と竜司に困惑な顔をしながら言うと、変化した泥人形の姿が崩れて混ざり始めていた。


「何か様子がおかしいぞ!」


 竜司が混ざり合って、再度変化を始めた元泥人形を指差して目を見開いて出雲と愛理に言う。出雲は顔を強張らせながら混ざり合っている元泥人形を見ていると、次第にその姿が形成されていった。


「あ、あの姿はなんだ!?」

「両腕が刀のとは違って、銀色の鎧を着てる。それに左腕に盾、右腕に剣を持ってる!」


 愛理と竜司が驚いている姿を出雲が見ていた。出雲もあれはなんだと驚いていると、演習場にアナウンスが突然鳴り響いた。


「受験生諸君。突然のことで驚いていると思うが、これが国立中央魔法学校の正式な試験である。今更なアナウンスだが、現在諸君の目の前には鎧兜を着ている敵がいるはずだ」


 その言葉を出雲を含めた受験生全員が静かに聞いていた。出雲は今更過ぎるアナウンスだよと息を整えながら言っている。

 その出雲の言葉を聞いていた愛理が、それもそうねと空笑いをしていると、アナウンスの続きが流れ始める。


「今諸君らの前にいる、2体の騎士を倒せば試験は終わりだ。倒したらそのまま帰宅してもらって構わない。ちなみに試験の詳細を外部に漏らすことは禁止とさせていただく」


 禁止とさせていただく。

 その言葉を聞いた出雲は、やはり演習場の場所や多くの情報が漏れるのを危惧しているんだなと考えていた。


「さて、アナウンスもこれで終わりです。それでは試験を再開してください」


 アナウンスが終わると同時に、2体の騎士が動き始めた。

 騎士は鎧を着ているとは思えないほどに素早く動き、出雲たちの目の前にいる騎士は愛理に向かって右手に持つ剣を振るおうとしていた。

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