第5話 試験開始
「集合時間5分前に着いた……危なかった……」
出雲は余裕を持って来たのにギリギリだったと溜息をつきながら、空いている一番後ろの席に座った。椅子に座る出雲を他の受験者たちが睨んでいた。
「なんか睨まれている気がする……」
人生がかかっている受験に、しかも国立中央魔法学校の受験なのに時間ギリギリに来たことで余裕があるなと思われているなと出雲は考えていた。
「余裕なんてないんだけどな……でも、俺だって合格したいんだ!」
睨まれている視線を気に留めずに、出雲は時間が来るのを待った。出雲が椅子に座ってからちょうど5分が経過をすると、プレハブに入る扉が開いた。
「試験の開始時間です。今から問題用紙と答案用紙を配るので、一番後ろの人は余った用紙を纏めておいてください。後ほど回収に伺います」
プレハブに入って来た、男女一組の国立中央魔法学校の教師が問題用紙と答案用紙を配り始めた。前列の人に配り、後ろに回る形で配られていた。
出雲は一番後ろの席なので自身に回ってきた問題用紙と答案用紙を纏めると、回収に来た女性試験官に手渡した。
「全員に行き渡りましたね? 試験は国語と数学を一括で行います。制限時間は2時間ですので、始めてください」
男性試験官が、部屋全体を見渡しながら試験を始めてと言った。部屋にいる出雲を含めた受験生達は、一斉に問題用紙を捲って問題を解き始めた。
「これは……難しいけど、解けないわけではないな……これはこの答えで……」
出雲は悩みながらも、一つずつ問題を解いていく。2時間という時間だが、問題に集中をしていると時間の経過が早い。出雲は時間配分に気を付けながら試験を続けていく。
「この計算式でここを解いて……この問題はこれをっと……」
出雲は時間を気にしつつ途中から解ける問題から進めることにする。
一つの問題に時間を取られすぎると呟きながら進めていると、周囲の雑音が気になり始めていた。
「シャーペンの音しか聞こえない……当然だけどみんな集中しているんだな……」
出雲は集中しないとと両頬を軽く叩くと、目の前の試験問題を再度見た。筆記試験の終了時間も迫ってきているので、飛ばしている解いていない問題を見ることにした。
「どうしてもこの問題が解けない……難しすぎる……」
それは出雲が見たことがない問題であり、入試で出てくるレベルの問題を超えていた。出雲はその問題を見ると、やはり配点が高そうだと思っていた。
「解けない……どうやって解くのかすら見えてこない……」
頭を抱えて考えている出雲。
既に解ける問題は解き終えており、残り5問が分からなかった。今現在悩んでいる問題がそのうちの一つである。
「時間です。筆記用具を机の上において、静かに待っていてください」
女性試験官が受験者たちに待っているように言った。その言葉に受験者たちは従って、問題用紙と答案用紙を試験官たちが回収をしていく。
試験官たちは人数分の問題用紙と答案用紙の数を確認すると、問題ありませんと確認を終えた。
「筆記試験が終わった……凄い疲れた……」
ちゃんとできたか不安になっている出雲であるが、周囲の受験者たちも不安な顔をしているので全員不安だよなと出雲は考えていた。
そして、試験官たちが次の試験を始めますと不意に喋り始めていた。
「それではご健闘をお祈りいたします」
女性試験官がそう言い、男性試験官と共にプレハブを出た。
出雲を含めた受験者たちはご健闘ってどういう意味だと顔を見合わせていた。
「どういうことだろう? ご健闘って、次の魔法実技に関連するのかな?」
出雲は腕を組んで考えていると、ズシンという音と共にプレハブに強い衝撃が走った。
「な、何が起きたの!?」
「これは何だ!?」
受験者たちが恐怖に慄いていると、強う衝撃の後にプレハブが吹き飛んでしまった。出雲はプレハブが吹き飛んだ衝撃で、床に倒れてしまっていた。
「ど、どうしたんだ!? これが魔法実技試験なのか!?」
プレハブが吹き飛んでしまったことで、外の風景が出雲の目に入る。周囲には誰もいなく、外で出会った景昌の姿も見えなかった。
「これからどうしろって言うんだ? 何か起きるのか?」
出雲は立ち上がって周囲を見ると、東側の建物から土色をしている泥を纏っている人型の人形が静かに出雲たちの場所に歩いて来ていた。
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