悪問

 選択に戸惑うことがよくある。

 というより、迷うことしかない。

 目の前のランチメニューに頭を抱え、進路選択に右往左往し、挙句今日何をするかさえ決められずに時間を無為にする。優柔不断が目に余るのが自分であると、よく自覚している。

 自覚しているが、そう易々と変えられたものではない。現にこんな本質に気付いた十もそこそこの頃から、努力はしたものの何も変わらずにいる。神頼みで選んでみても、結局は選んでもらった選択肢を疑って自滅する。

 選択に対する後悔の数も、きっと邪魔をしている。

 人生万事塞翁が馬、そんな言葉を聞く度に「私にそんな先見の明なんてない」と思ってしまう。目先の利益を追って大負けするのが定番のオチで、この人生の基本。小さなところで勝ったって、大きなところで大ゴケするから世話がない。


 そう考えると、人生における選択は片っ端から悪問だよなあ、と思う。

 経験の浅い人間に無理な選択を迫って、おまけに答え合わせも碌に有りやしない。出来るのはせいぜい自己採点ぐらいのものかしら。なかなかにタチの悪い、というより意地の悪いシステムである。あのときどうすれば最善だったのか、教えてほしいタイミングなんて無数にあるし、やり直したい瞬間だって無限に湧いて出てくるのに、正しい答えなんか一つも分からないままに、次回の傾向と対策に着手しなければならない。頼りになるのは自分のハナだけで、なのに自分のハナは頼りにならないとは、まったくもって世話がない。

 ……まあ、文句を言っても明日は来るし、明日もいずれ選ぶのだから、この愚痴も無駄なのだろうけれど。全く、面倒な試験である。きっとこんな人生だ、評価も相応に低いのだろう。勝手に考えて、気が滅入ってしまった。

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