第5話 問い


  お前達が何を知っているって言うんだ。

 親父がモンスターと闘うために何百何千回も失敗を繰り返して、調合の知識を得る為にどれだけ時間を費やしてきたか。

 この世界の人間は筋力に恵まれている。

 調合の知識なんて対して必要ない。

 武器一つ有ればそれで討伐出来るのだから。

 つくつぐ羨ましいと思う。

 たしかに才能が無いなら、ハンターなんて辞めてしまえばいい。


 だが無謀って言われても、それでも諦めれない目的が俺にはある……。

 親父の諦めてしまった夢を俺が代わりに見してやるって決めたんだ。

 時折、親父の時折見せる表情がきっとまだ諦め切れてないんだと思うから。


 親父をこの世界に転生させたモンスター。

 こいつを見つけるまでは——

 

 俺は沸き上がる怒りを抑え、右手を掛けている把手を押し出した。


 「脳筋のお前らに教えてやる程、安い知識じゃねぇよ」


 そう言い残し、扉の向こうへ足を出した。


 その時、背後で誰かがハンター達に問い掛けた。その声の主を確認しようと振り向くと、エマが一人のハンターの肩を掴んでいた。


 「アンタら、あれが手榴弾に見えたの?」


 「だったらなんだよ」


 「支給品袋には、砥石、縄、投石、ライポイル草、剥ぎ取り用ナイフしか入っていなかったわ。恐らくあの爆弾はあの場で作ったのよ。ライポイル草の汁は可燃性のガスを発生させるし、投石を砕いてたのも、恐らく粉塵にする為だったんでしょうね。それで粉塵爆発を起こしたんでしょ。そんな事も知らないの貴方達」


 肩を掴まれたハンターは迷惑そうに振り解き、「しっ…知ってるさ、そんなの知ってても普段は手榴弾で充分だしなっ」と言い残し、そそくさと離れていく。


 「貴方達が良く使う手榴弾もこの人の親父さんが作った物だけど。まぁいいわ、私もこんな頭の悪い人達と組みたくないし、帰るわ」


 エマはそう吐き捨て、呆然としていた俺の横を通り過ぎ、店の外に出て行った。


 自分を助けてくれた訳では無いが、代弁してくれた様な気がして、少しなんだか嬉しかった。


 「おいっ!待ってくれっ!」


 急いで店から出て追いかける。

 店を出て直ぐ右の道をエマは歩いていた。


 「なぁ!さっきはありがとっ!」

 

 エマは自分に向けられた言葉だと分かり、立ち止まる。


 「別に、お礼を言われる事なんてしてないわ」


 「まぁ……そうなんだけど……」


 そういえば前に、親父がフォーリアル家に手榴弾の納品頼まれて沢山作らないといけないだとか言ってた気がする。エマは知っている事をただ述べただけなのかもしれない。


 「一つ聞きたい……」


 「ん?」


 「貴方は何のためにハンターになったの?」

 

 そう問い掛けてきたエマの顔が一瞬、寂寥さを感じさせる表情をした気がした。


 「なぁ!さっきはありがとっ!」

 

 エマは自分に向けられた言葉だと分かり、立ち止まる。


 「別に、お礼を言われる事なんてしてないわ」


 「まぁ……そうなんだけど……」


 「一つ聞きたい……」


 「ん?」


 「貴方は何のためにハンターになったの?」

 

 そう問い掛けてきたエマの顔が一瞬、寂寥さを感じさせる表情をした気がした。

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