第4話 祝賀会

 「おめでとう。今日から君達は正式なハンターだ!今後の活躍に期待しているぞ」


 五人の試験者は試験に合格し、正式なハンターとしての証"ハンタープレート"を授与された。


 プレートには階級があり、順にアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミリオンが存在する。

 五人は駆け出しハンターの証、アイアンプレートに属する。


 「これにて、本日のハンター試験を終了。知っているとは思うがこの後、中心街で祝賀会の場を設けてある。皆、来るように」


 祝勝会には、誰でも参加できる。

 人手不足のパーティやギルドは気に入った子を勧誘する為に来る。

 もし勧誘されなくても、自分を先輩達にアピールできるよう、国が気を利かせて場を設けてくれているのだ。


 依頼を達成するのに、ソロよりもパーティを組んだ方が効率も安全性も段違いに良い。

 そもそもソロで凶悪なモンスターに挑むハンターなんてほぼ存在しない。それほど無謀な事であるのだから。


 勿論、それは分かっていた。


 しかし武器を持たない自分を仲間に入れてくれる人達なんて、いるのだろうか。


 でも……。

 もしかしたら、専属援護役として誰かギルドに入れてくれるかもしれない。


 そんな可能性を信じて、俺も祝賀会に足を運んだ。


—————————————————————


 ガンバルム国、中心街"バルム。

 武器屋、防具屋、アイテム売買屋、装飾屋、宿屋、飯屋などが立ち並び、沢山の人達やハンター達で賑わっている。


 その街の中心に一際目立つ巨大な建物こそガンバルム国ハンター連盟総支部。

 各地からモンスターの討伐や捕獲依頼。アイテムの収集依頼など様々なクエストの依頼を受注し、ハンター達に仕事を与えている場所。


 祝賀会は、そのハンター連盟総支部すぐ近くの飯屋[ハラペコハンター食堂]で行われていた。


 「チリンッチリンッ」

 店の扉にぶら下げてある鈴が、誰かが扉を開けた事を知らせ、店主が歓迎する。


 「いらっしゃい!!」


 店の中には既に席に座っているラルク、シリスの姿が見え、ハンター達に囲まれて食事を楽しんでいた。

 エマは違うグループのハンター達に囲まれているみたいだが迷惑そうな顔をしている。

 キースの姿は何処にも見えなかった。


 少し遅れて来てしまった俺は、会話が弾んでいるであろう中に堂々と入る事が出来ず、隅の空いている席に腰をかけた。

 いや本当ならば間に合っていた筈だった——

 

 『何で急に店の場所変わってんだよ……』


 試験官に渡された祝勝会の場所が書いてある紙には「ペコペコハンター食堂」って書いてあったのに…行ったら「うちにはそんな予約入ってませんよ」と言われた。

そんな訳ないともう一度紙を確認したがやはり間違っていなかった。

そんな動揺している俺を見て店主が「ハラペコハンター食堂じゃないですか?」って教えてくれたから何とか場所分かったが……。


 何となく誰の仕業か予想が付いていた俺は周りを見渡す。

 奴はカウンターの影から、此方をニヤニヤしながら見ている試験官が居た。

 目が合った途端、目を逸らし咳払いをしている。


 『やっぱり……あの野郎…もしかしてわざと違う店を俺の紙に書きやがったな!?』


 今にも問い詰めようと思ったが、血が逆流するのを抑えた。

 ここで試験官と喧嘩なんて事になれば、どのハンターからも声を掛けて貰えなり、問題児のハンターなんて噂が広まる可能性もある。今は、耐えるんだ……。

 

 周りのハンター達は話しに夢中になっていて、俺が入って来た事に気付いていない。


 まぁその内、誰か声掛けてくれるだろう。   

 試験で俺も戦えるって事を証明出来たんだ。 

 援護役がパーティーに欲しいって思う奴もいるかもしれない。


 ……


 ……


 ……


 それから時計の長針はガルダが席に着いてから、30分ほど進んでいるのに一向に誰も話しかけてくる様子などなかった。

 さらには後ろでボソボソとハンター達が話している声は俺に向けられているものだとすぐに分かった。


 「おいっ… アイツまだいるぞ…誰か声掛けてやれよ」


 「誰も要らないだろ。武器を持てない仲間なんて…」


 「バカッ お前ら聞こえてたら、どうすんだよ」

 

 期待した俺が甘かったと気付く。

 まぁそりゃそうだ。

 武器持てない奴なんてパーティに邪魔でしかないんだ。

 


 「ドンッ」


 その時、酔っ払ったハンターがフラフラしていたのか、ガルダの肩に当たる。


 「いってぇ…」


 「あれぇ?おーまえはー、武器持てないってぇ いってたぁ奴だぁ」

 

 もう、絡むのも面倒くさくなった俺は、静かに席を立ち、扉の方に歩いた。


 「帰れぇ帰れぇ!!反則野郎なんてぇ、誰もいらねぇぞー。あの爆弾も、支給品以外の品を使ったんだろぉ?」


 「え、そうなの?」


 「確かに、あの支給品には爆発する物なんて入って無い筈」


 「えー…ずるじゃん」


 「そもそも武器持てないなら、ハンターに成るなよな」


 好き勝手に物をいうハンター達の言葉に、扉の把手を握っている右手に自分でも見た事ない程、血管が浮き出していた。

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