第111話 武術

スパァァァン…


ボフン…


ミナルとハジメの足と足が当たった瞬間、とてつもない衝撃が生徒達を襲った。


「うわっ⁉︎」

「な、なにこれ?」

「知らないって…」


どうやらハジメがこんなに強くなるとは思ってなかったらしい。


「とまぁ…こんな感じですね。これをいまからやります」


すると生徒達は揃って言ってきた。


「「「「「無理です」」」」」


当然の反応だった。さっきの蹴りは足がかなり上の方まで上がっていた。無理もない。


「大丈夫です。これからの事ですから…まずは足のキレなどを大きくするために柔らかくなってもらいます」


そう言うとどんよりとした空気になった。


「どうかしましたか?」

「あの…私たち体硬いんですよね。運動している人とかは柔らかいけど足を上の方まで上げれないし…」

「大丈夫です。ハジメさん柔らかくなりましたよね?」

「えっ?あぁ…」


突然の質問にハジメは戸惑ったがハジメはこう答えた。


「柔らかいと思います。少なくともこの姿になる前までは」


そう言って地面に座り、足を開いて上半身を地面にベターっとつけ始めた。


「こんな感じですね」

「ありがとうございます。というわけで毎日コツコツとやればこうなるので頑張りましょう」

「「「「「「はい…」」」」」」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ハジメさん、あなたも成長しましたね」

「えっそうですか?」


生徒達が2人1組で柔軟体操をしている間、ミナルとハジメは雑談していた。


「いや自分なんて…ただキロルさんやミナルさんについて行ったらこうなった訳で…」

「でも気持ちなどは前向きになりましたよね?」

「…たしかにそうですね」

「さっきの蹴りも良かったですよ」


そう言った瞬間、ハジメはパーッと笑顔になった。どうやら相当嬉しかったらしい。


「キロルと戦って…おそらく10回やって1回は勝てそうな気がします」

「そうですかね。あっそういえばキロルさんの事ですけど…」

「何かありましたか?」

「キロルさんも自分なりに鍛えていますよ」



キロルが…何か感じたのかな?



「そうですか、ならハジメは負けるかもしれませんね」

「ハハハ…頑張ります」

「大丈夫です。自信を持ってください。少なくともあなたはAランク以上の強さは持っていますから」

「ミナルさんに言われると信じるしかなさそうですね」


ミナルはSランク冒険者。それにこれまでの事をハジメは見てきたのだからミナルが言った事を信じるしかなかった。


「卒業したらどうするのですか?」

「そうですね…冒険者稼業ですかね」

「なら私と同業となるわけですか」

「そうですね。早くミナルさんと同じランクになれるように頑張ります」

「卒業したらギルドに紹介状でも書いておきます」

「そんな…別にそこまでしなくても」

「いや、先生とならば卒業する最後まで最大限サポートしますから」


ハジメはこの時、この世界にきて良かったと改めて思うのであった。

_________________________________________

えのき



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