第8 心染なおし、しない、しない夏


夏の道路には、光る陽炎(かげろう)があった。

カーブのさきには、車がいない。

エレキギター音量全開で、夏の国道228号を車で走る。

江差から松前へと向かう道。

右手には海。

エメラルドグリーンが広がる。

草や木の眩しい緑も、真夏ならではの眩しさだ。

江差から寅ノ沢の美しい海岸を走る。


この風景が最高に美しい。

たまに、馬に乗ったひとも見かけた。


しょうこちゃんが、転職してから、日曜日は会えなくなった。


しずえちゃんと、遊んだ。



ミステリアスなお友達だった。

地味に見えて、違う。

しょうこちゃんといい、まわりは、ミステリアスが多い。


知らないところが多かった。


ハードロックな人だった。

バンド活動が似合いそうだった。

音楽関係に進むと、良い感じがした。

真面目さんの印象が、内面は違う感じがした。


しずえちゃんの影響で、浜田麻里を知る。

「Retun to myself」の歌は、最高だった。

伸びやかな歌声。

歌詞もよかった。

わたしたちに向けてのメッセージに聞こえた。



心染めなおし

しない、しない夏



そんなふたりは、どこまでも、車で走った。

夕日が沈む。


江良という街に入ると、内心、不安になった。

江差から松前までの距離は、64キロある。

日本海追分ソーランと呼ばれている国道。

国道から、細い町道に入る。

小さな町の商店があり、ひとが、ヒョイと出てきそうで怖かった。

細い漁村の街の中をぬけると、再び、大きな国道に出た。


日が暮れて、家々に明かりがついた。


日曜日の夕方でも、あしたのことを考えないで、自由を楽しんだ。


松前から函館までは、100キロ以上ある。

無謀と呼ばれるドライブは、大音量のエレキギターの音をのせて走る。



ふたりは、よく、見知らぬ、おじさんに声をかけられた。


施設の見学とか、そんなものだった。

ベイ函館で、おじさんに声をかけられた。

観光バスの運転手さんだった。


チケット2枚くれた。


いまだに、夢か、現実か、わからない。

チケットを出し、会場に入ると、黒いカーテンの中にお客さんがいた。

華やかなステージ。


目の前に、黒いサングラスのMr・マリックがいた。


「どなたか、鍵をかしていただけませんか?」と話した。


まわりは、キョロキョロ動揺した。

目の前に、ミスターマリックである。

それだけで、動揺しているのに、鍵をよこせとばかりに、私をみている。

一瞬、わたしは、ポケットの中をさぐった。



車のカギは、渡せない。



前の男性が、手渡した。

一瞬で、みごとに、鍵は曲がってしまった。

グンニャリと。

(アラララ・・・・)




あの出来事は、夢をみたような感覚が残る。


心染なおし、しない、しない、夏は、




ミスター・マリックで終わった。









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