第9話 複雑な心

それから数か月が過ぎ、私の頭はグチャグチャだ。



鮎夢が ayumu ?


私は鮎夢に対しての疑問が重なり色々な一面を見るようになり、自分の気持ちも複雑になっていた。


好きなのかファンなのか……正直、分からなくなっていた。


鮎夢として見ているのか ayumu として見ているのか……





数日後。




「魅羽、どうかした?」

「えっ?ううん」

「そう?何か悩んでますみたいな感じだよ」

「大丈夫だよ」

「それなら良いけどさ」


「悩みお前にもあったんやな?」


「鮎夢っ!?誰のせいだと思ってんの?あんたのせいだから」


「何で俺やねん!」


「第一、同居さえ……っ…」



口を手で塞がれた。



「えっ?今、同居って……」

「ちゃうちゃう」

「いや、絶対言ったよね?」

「二人って、そういう関係なの?」

「親同士が仲ええから同居したら楽しいんかな?って事……」


「怪しい……」



その結果、言い逃れ出来ないと思い私達は話をする事にした。





その日の夜。



「あら?もうバレちゃったの?じゃあ仕方がないわね」


「仕方がないって…今後色々と問題が出てくるじゃんか!」


「それはそうだけどそのうちバレる事だから」


「…………」





ある日の事だった。


朝のH.R.後。



「椿 魅羽と優城 鮎夢。今日の放課後、残っていなさい。いいね」




そう言うと教室を出ていく担任の教師。




「お前、何やらかしたんや?」



鮎夢が自分の席から言ってくる。



「あんたこそ何やらかしたのさ!」




「また夫婦喧嘩が始まったー」



クラスメイトが茶化す。




「夫婦ちゃう!」

「夫婦じゃないから!」



ほぼ同時に言う私達に対し




「おおーーっ!息もピッタリ!」

「本当だ!」




その日の放課後 ――――



帰りのH.R. の時、先生から職員室に来るように言われた。




「おいっ!アホ魅羽、行くで」

「アホは余計だから!」


「ちゅうか呼び出しくらうっちゅーことはバレたんやろな」


「えっ?」


「学校側に。噂は恐いからなぁ~。時間の問題かもしれへんな」


「えっ?時間の問題?」

「ああ。色々とな……問題は出てくるやろ?」

「……鮎夢……学校を辞めるとか家を出るとか辞めてよね!」


「えっ?」


「だって、鮎夢は何も悪くないじゃん!」


「魅羽、その気持ちは分からんくもないけど現実は厳しいねんて。第一、校則違反してるんやし」



「………………」




職員室に行くと校長室に行くように案内された。




「ほら、だから言うたやろ?同居してる話をされ、処罰くらうんやで?」


「…何もないのにね…」


「せやけど今後ないとは限らへんやろ?それに全然ないとは言われへんやろ?」



「………………」


「お前は何も言わんでええから」



頭をポンとされた。


ドキン…



「ええな」



私達は校長室に入る。



「失礼します」



「君達、同居しているというのは本当かね?」



校長が尋ねた。



「そういう噂を小耳に挟んだんだが?」


と、教頭。



「…隠す気ありませんので、正直に話しますが、同居しているのは事実です。せやけど、彼女の両親もいます」


「両親がいるからと言っても常にいるという保証もないだろう?違うかね?」


と、教頭。



「彼女の両親がいない時、俺は友人の家に行くようにしています」



≪鮎夢……≫



「第一、俺は理由があって彼女の家にお世話になっているので、何かあったら大変な事と思いますが?」



「しかしだね、同居しているのは校則違反だろう?違うかね?」


と、教頭。



「じゃあ、出て行けとおっしゃるんですか?野宿しろ!と?別にかまへんけど、そうなると学校側も立場悪くなるんちゃいますか?家出したとかって警察沙汰になるの目に見えてますよね?」



「………………」



「自分の親はあいにく、こっちにいてへん。そうなると彼女の両親に連絡いくし、学校側も彼女の親に連絡せざるをえないですよね?」



「………………」



「第一、隠せんくもないやろ?同居している事位。確かに学校側は多少の立場は悪くなるかもしれへんけど、協力出来ない訳やないと思いますが?」



「………………」



「彼女を妊娠させたとかなら大問題かもしれへんけど、そんな事も一切ない!」




≪に、妊娠っ!?≫

≪そんなストレートに言うかな?≫



「確かに学校規則は校則違反してるかもしれませんけど、俺は彼女の家で下宿人みたいなもんやし、居候や。同居と変わらへんかもしれへんけど……それでも、家を出ろっちゅーならこっちかは学校辞めたる!一層の事、退学にしますか?」



「えっ!?ちょっと!鮎夢、何言って……そんな事親が許さないに決まって……」


「しゃーないやん!」


「駄目だよ!私の両親が鮎夢の両親に家庭の事情で面倒見ているんだし何かあったりしたら頭が上がらないから!信頼してくれてる両親に申し訳つかなくなるから!」



「…………」



「それで、どうされるんですか?要件、チャッチャッと済ませて貰えますか?俺も忙しいねんけど。停学か?退学か?家を出て行く条件か?」



先生達は顔を見合わせる。



「今回は、良しとする。しかし今度、問題起こしたら停学。場合によっては……退学になりかねん。良いな」



ど、教頭。



「様子を見ることにする」と、校長。



「戻って良い」と、教頭。



私達は校長室を後に出て行く。



「すまんかったな」


「えっ?どうして謝るの?別に鮎夢は悪くないじゃん!」


「……せやけど……ここの学校去るのは時間の問題やろな……」


「えっ?駄、駄目だよ!」

「そうやな。まあ、何とかなれば卒業まで一緒やけどな」

「……鮎夢……」

「そんな顔すんなや!まだ、おらんくなるって決まった訳やないし」




私は鮎夢が遠くに行くような気がした




離れ離れになった時




私の心は




本当の想いに




気付く瞬間だと………







私達は荷物を取りに教室に戻る。


鮎夢は一足先に荷物を持つ。



「帰るで」


「うん。ごめんすぐに追い付くから先に帰ってて良いよ」


「そうか?じゃあ先に帰るで」


「うん」



そして、荷物を纏め廊下に出る。



「うわっ!ビックリした!鮎夢先に行った……」




グイッと腕を掴み再び教室に再び入ると逃げ場を失うように引き戸と壁の間に押し付けられ眼鏡を外す鮎夢。




ドキッ

今迄にない位、胸が大きく跳ねた。



「鮎……」



キスで唇を塞いだ。



かなりの至近距離に視線がぶつかり、私は鮎夢を見れず、目をそらそうとすると、顎を掴まれ、クイッとされ深いキスをされた。



かああああっ!と、身体全身が熱くなったのが分かった。




≪ヤバイ!絶対、顔が真っ赤だ≫



その事に気付いたのか鮎夢は壁際と引き戸の間で挟むように抱きしめた。



「魅羽…。お前に真実を話す時、もしかすると離れ離れになる事になるかもしれへんけど」



抱きしめた体を離すと見つめ合う私達。



「必ずお前の所に戻って来るから待っててくれへん?」


「えっ?鮎夢……」


「さっきも話したように時間の問題かもしれへん……お前が疑問に思うてる事……それが分かった時……」



「………………」



「……さっ!帰ろ!」


「えっ!?ちょっと!何?話し続けろっつーの!」


「言わんでも分かるやろ!そのアホの脳みそで考えてみぃ」


「酷っ!」





何となく分かる気がした。


私が疑問に思っている事。


鮎夢が ayumu だという事……





近いうちに



この疑問がハッキリと



分かると………





鮎夢は……



似てるんじゃなくて



きっと



ayumu 本人なのかもしれないと……











































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