第7話 ayumu と 鮎夢の関係

ある日の学校帰り ――――



「向こうでドラマの撮影があってるんだって!」

「嘘!マジ!?行こう、行こう」

「ayumu らしいよ」



私は彼女達の会話に、反応し現地に向かう。


既に、目的地には人だかりだった。


割って入り何度も挑戦するも、もみくちゃにされ押し出されてしまい、私は諦め帰るしかなかった




「生ayumu 見たかった……」




その日の夜 ――――




「おーーい、魅羽ーー、どうしたーん?」



私は夕方のショックが隠しきれず、どんよりしていた。




「学校から帰って、あの状態なのよ」と、ママ


「そうなんですか?」

「何か ayumuが見れなかったとか?」

「あー、そういや撮影あってたなぁ~」


「……見たの?」

「えっ?」

「……ayumu を?」

「えっ!?み、見てへんで」

「へぇー……」



グイッと鮎夢の胸倉を両手で掴むと、ユサユサと前後に揺らす。



「な…や…辞め…辞めろや…な…内…臓が…出て…まう……」


「何度も何度も挑戦するも押し出されて泣く泣く帰宅して…私が一体何したって言うのさ!滅多に見る事の出来ない生 ayumu を…近くまで行けたのに見られ…」




グイッと私の両手を掴む鮎夢。



「お母さん、ちょっと見て見ぬふりしといて下さい」


「えっ?ええ」



ドサッとソファーに押し倒すと私を押えつける鮎夢。



「まあ、大胆♪」と、母親。


「そんなん知るかっ!アホっ!目ぇ覚ましいやっ!」



ドキッ


「俺に言われても知らへんし、俺に当たるの辞めろや!俺も見てへん言うてるやろっ!」



「…………」



「ayumu は ayumu や、もっと現実見ろやっ!」



「…………」



私から降り離れる鮎夢。


私は2階に逃げるようにリビングを後に走り去った。




「全く!」


「ごめんなさいねー。あの子ったら本当の事を知らないから、いつも一緒にいる鮎夢君が、大好きな芸能人の ayumu 君だという事に」


「そうですね…本当の事話したら…いられんくなるからな…」


「バレた時、学校にも家にもいられなくなるからね」


「時間の問題かもしれませんね」

「そうね…」





ある日の事。



「あっ!魅羽、2階に行くなら、これ頼める?」

「えっ?わわっ!鮎夢の洗濯物…?」

「お願いね♪」


「鮎夢ーー、入るよーー」



カチャ


返事がないものの部屋のドアを開ける。



「あゆ……」



ドキン


「寝て…」



私はホッとした。



「起きてたら絶対に色々と言ってくる…だ…ろう…し…」



「……………」



私は寝落ちしたと思われる鮎夢の近くにある物に目が止まる。



「…えっ…?…これ……今度始まる…ayumu 主演のドラマ…じゃん……」



「……………」



「何で…鮎夢が…?どうして…持ってるの…?」



私が目についたのは、ドラマの台本と思われるものだった。



“最後のサヨナラは永遠に”



そう書かれた表紙のタイトル。


間違いなく鮎夢が主演のドラマだ。


キャストも書かれてあるもの。



次の瞬間 ――――


バッと顔を上げる鮎夢の姿。


ビクッ




「アカン!寝てもうたっ!」



私は台本を慌てて後ろに隠した。



「うわあっ!びっくりしたっ!魅羽っ!人の部屋で何してんねん!」


「…いや…鮎夢の洗濯物を母親に持って行くように頼まれて…」すす



「………………」



「お前…何か隠してへんか?」



ギクッ


≪えっ…?今…口調が代わった?≫



「嘘つくなや!」

「えっ?ううん本当に何も…」



グイッと手をつかまれ、そのままベットに押し倒され両手を押えつけ私の上に股がった。



ドキッ


「じゃあ、これは何なん?」


「これは…」


「………………」


「大事なもんや!返してもらおか?」



≪いつもの鮎夢が鮎夢じゃないみたい…≫



「…ど、どうして?」


「…………」


「どうして鮎夢がこれ…。これ…台本って言うんだよね?どうしてあんたが持ってんのさ!だって…これ…今度、ayumu が主演する…」




バッと取り上げた。



「事情あんねん!今は、言われへん!用が済んだら部屋出て行ってくれへん!?」


「……………」


「それとも…そのまま襲ってやってもええで?」

「ふざけんなっ!」

「だったら早く出て行けや!」

「意味……分かんない……何で?……説明してもらわなきゃ……」



グイッと引っ張り起こすと押し出すようにすると壁の方向に寄せる鮎夢。



ドンと両手を壁についた。



胸が大きく跳ねると同時に、ちょっと恐怖感になる。



「今は言われへん!言うたやろ?」


「…鮎夢って……まさか…。芸能人の ayumu?そっくりさんじゃなくて本当は本も…の…」



言い終える前にキスで唇が塞がれた。


ドキン



「本物か偽者かそのうち分かるわ!だから、今は、そっとしといて欲しいねん」


「鮎夢……」


「頼むから分かってくれや。魅羽」



鮎夢は、私の手を掴み、部屋から出した。



「ねえっ!ちょっと鮎夢っ!」



ハッキリとしないまま、私は渋々、自分の部屋に戻る事にした。


























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