異世界脳
(二人コントか落語調で、お読み下さい。 *:田舎に住む博君の叔父さんです)
ある日、東京在住の兄から『息子を当分、預かってくれないか』との電話が、田舎に住む弟宅に入りました。
「『あ、はい、はい、分かりました。聞いてみます。』(ガチャ) ちょっと、あなた! 東京のお兄さんが息子の博君を当分こっちで預かってくれないか、だって」
*「何、こっちに『転移』させろだって?」
「何、言ってるの? 『転移』じゃないでしょ!あえて言えば、『転居』でしょ!」
*「そうなのか。それにしてもこんな田舎、博君にとっては全く『異世界』だろうしなー」
「まあ、ひどい!そこまでここの事悪く言わなくてもいいのに!」
*「いやいや、電車は通ってない、バスは1日数本しか通らない、タクシーは電話しなきゃ来てくれない、なんて、東京に比べれば『異世界』だぞ」
「そうかなー?」
*「そうだよ。そしてこっちに『転移』される博君の『ステータス』か、、、」
「何、それ?」
*「博君がこちらでどうすれば活躍できるかの大事な情報だぞ!」
「そうなの?」
*「うん。まず、あんな便利な東京からこんな田舎に『転移』してくるなんて、余程の『勇者』か、大変な『冒険者』だな、、」
「そこまで言わなくてもいいでしょ!」
*「そんな事、無いぞ。きっと博君は向こうで友達に言われてるはずだ。『おまえ、一人でそんな田舎に行くなんて【勇者】だなー』とか、『だれも友達の居ない所に行くなんて、博君って案外【冒険者】ね』とか」
「そうかもしれないけど、、、」
*「まあ、どっちにするかは自分の意思で『転移』するのか、親に言われて『転移』するか、の違いだなー。自分の意思なら『勇者』だけど、親に言われたからじゃ『冒険者』だな」
「そんなの、どっちでもいいでしょ!」
*「そんな事ないぞ!『勇者』ならこっちに着いたら仲間を集めて『パーティ』のリーダーになれるかもしれないけど、『冒険者』だったら単独行動になるかもしれないからなー」
「そうなんだ、大違いね。でも、今回はお兄さんの電話からすると『冒険者』のほうじゃないの」
*「そうかー、じゃあ急いで『冒険者ギルド』を探さないといけないなー」
「何、それ?」
*「『冒険者』達の組合、ってとこかな。博君にはそこに行ってもらって、いろいろこちらの情報を集めてもらわないと、、、」
「そんなの、私達が教えればいんじゃないの?」
*「いいや、『冒険者』には『冒険者』達に必要な情報、ってものが有るからなー。俺達みたいなただの住民じゃダメだろー」
「うーん、言い換えると、、、転居してきた子供達には彼らにしか分からないこちで暮らす為の情報があるから、それを仲間達から仕入れる、って事かな、、、」
*「そういう事!おまえもだんだん分かってきたな!」
「別に全然、分かりたくないんだけど、、」
*「それでだ。肝心の『レベルアップ』だけど、、」
「大事な事なの?」
*「そうだ! 山遊び、海遊び、知らない土地での冒険とかの『クエスト』をこなして『LV』を上げないと。LV:0からのスタートだからな、、海なら、フナムシ採りでレベルアップしてだ。」
「あの、ゴキブリみたいなやつ?」
*「そうそう。でもゴキブリの仲間じゃないよ。どっちっかっていうと、団子虫の仲間さ」
「そうなんだ。どっちでもいいけどね」
*「フナムシ 一匹で1ポイントかなー? 100匹掴まえたら100ポイントでLV1アップ、うーん、これくらいかなー、、」
「もう、何言ってんだかわかんない、、」
*「フナムシを捕まえられたら、次はそいつを使って海釣りだ。石鯛やらメジナなんかの大物が釣れたら、大幅にレベルアップだな」
「へえー」
*「山なら、山歩き、きのこ集め、山菜取り、猿やイノシシに会ったりして。まさかのマムシ、熊、登場とか。」
「危ないことは止めてよね!」
*「そうだな、相手は子供だ。程ほどにしておこう。いっぱい外で遊んで貰って、ここに帰って来て一晩休んだら『HP』回復かー。何だ、ここは『宿屋』だなー」
「なんか、失礼」
*「あと、『チート能力』は『都会を知ってる』かなー」
「何、それ?」
*「『隠し技』って所?例えば、ここの地域の子に話しかけられたら、都会の話題でも話せば盛り上がって友達になれるだろー」
「そうかもね」
*「『悪役令嬢』は向かいの優子ちゃんかな。悪そうだからなー。」
「まあ、ひどい!」
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その後、また電話が掛かってきました。
「あれ、また電話だ!『ああー、お兄さん! はい、はい、分かりました』」
(ガチャ)
*「何だって?」
「やっぱりね、博君が行きたくないって言ってるから、この話は無しだって」
*「そうか、怖気付いたな『冒険者』めー。次、来た時は覚悟しておけよー、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」
「何であなたが『魔王』になってるの?」
(お後が宜しいようで、、)
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