おねショタ担当大臣

「シェルフィッシュクラブキングダム、おね幼生ショタ担当大臣、オウギガニくん」

「はい」

議長のタスマニアキングクラブが俺を呼ぶ。

呼びかけに応じた俺は、長い手足を起用に折り曲げ、珊瑚でできた演台に登る途中にブラックタイガーが野次を飛ばす。

幼生ショタを拡大するべきだろ!」

俺はオウギガニ。

磯出身のカニとしては10年ぶりに大臣として任命されたカニだ。

正直、海出身が大臣になるのが既定路線のザザミ党で、ここまでこれたのは自分でも誇りに思っている。

このまま頑張り続ければ磯初の首相も夢じゃないかもしれない。


しかし、その出世の道も危うくなりそうだ。


というのも野党の超党派のエビやカニからなる連合会『幼生クラブ』が提出した法案「ソフトシェルクラブは幼生ショタとして扱う法律」が議会で白熱した議論を巻き起こしたからである。

どうやら、幼生の解釈を拡大することで需要を増やしたいねらいがあるようだ。

発言には繊細さが求められる。

もしここで危ない発言をすれば出世の道が完全に閉ざされてしまう。

もしかしたらこれを見越して、捨て石に磯出身の俺を登用したのではないかという考えが頭によぎる。

いやそんな事はない。

俺は実力でこのおね幼生ショタ担当大臣という地位までたどり着いたんだ。

俺は囚われた考えを拭うように頭を振った。

気合を入れろ……、今は議会中なんだ。


ふと、首相のタラバさんをみると、こっちをじっと睨みつけている。

期待していると言わんばかりの視線だ。


そうだ、期待に答えるんだ。

与党「ザザミ党」としては認めるわけにはいかない。

もしそんな一度でも認めてしまえば、ソフトシェルが搾取の対象になってしまうかもしれないんだから。


「ソフトシェルクラブとは、脱皮したてのカニを指す言葉でありまして、身体機能もまだ十分に機能するとは言えません。が、ハサミもありますし立派に成長したカニを幼生ショタとして扱うというのは……」

俺がそう言いかけると、またも野次が飛ぶ

「十分に機能してないなら幼生として扱ってもいいだろ!」

「幼生の敏感さみたいなものがあるじゃないか」


そうは言うが、繁殖経験のあるカニを幼生と呼んでしまうのは、あまりに乱暴。


「そもそも~、おね幼生ショタというのは無知な幼生が、知識豊富なカニと繁殖するのが良さという事でありまして。その筋で話をすすめるなら、ソフトシェルクラブは繁殖した知識がありますのでカテゴリーからは外れます」



官僚のサワガニから演台に上がるまでに、聞いていた発言ではあるものの自信を持って言えたはずだ。

しかし俺の発言に対して誰かがハサミを上げ発言を求めた。

「大西洋維新の会 ロブスターくん」


演台の向かいにある質問席に向かったメスロブスター。

議員歴も長く、もし俺の体が鋏に挟まれたら真っ二つにされそうだ。


俺も思わず息を飲む。

「議長ありがとうございます。大臣、では、ソフトシェルクラブの中にも繁殖を行った経験がないカニもおります。それでは一部のカニを見捨てる事になるのでは?」


この発言を皮切りに、幼生クラブに所属するカニたちが一斉に野次を飛ばした。


しかし困ったことに、官僚のサワガニからはこれ以降どういう事を言えば良いのか聞いていない。


ふと議会席をみると、サワガニは顔をこちらに向け顔を振っている。

想定された質問外の質問ということなんだろう。

しかし政治家というのは辛い所で、こういう時にも発言をしなければいけない。

逆に言えば、こういう事がうまいと政治家として適正があるということだ。

「えぇですから……、政府としましても……」

俺は演台に立ち、なんとか言葉を紡ごうとするがまるで出てこない。


与党のお偉方も俺の発言を固唾を呑んで見守っている。


自分の意思がリフレインし、何度も何度も反響する。

(なんとかするんだ、なんとかしなきゃ)

思えば思うほど、呼吸も荒くなり、目が霞む。


「はぁ……はぁ……政府としましても……」


俺はその場で泡を吹いて倒れた。



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今日のお題: カニ おねショタ





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